2020年07月25日 11:31 公開

ボリス・ジョンソン英首相は24日、BBCの単独取材で、新型コロナウイルスの感染拡大初期に政府はウイルスを十分に理解していなかったと認めた。その上で首相は、3月23日夜に始まった全国ロックダウン(都市封鎖)が遅すぎたかどうか、「疑問は解消されていない」と述べた。

ジョンソン首相は就任1年を機にBBCのローラ・クンスバーグ政治編集長のインタビューに応じ、新型コロナウイルスの感染が拡大していた「最初の数週間や数カ月間、(ウイルスを)十分に理解していなかった」と認めた。

首相はさらに、「当初おそらく何より気づいていなかったのは、いかに無症状の人から人へと感染が広がっていたか」だと話した。

首相はロックダウンの開始が遅すぎたかどうか、科学的にまだ結論は出ていないとした上で、政府として「違うやり方もあったかもしれない」と認めた。

首相はこれまで、自分は科学者の助言を受けながら「適切な時期に適切な判断をしていた」と主張していた。

しかしこの日のBBCインタビューでジョンソン氏は、「自分たちの初期の対応について、学ばなくてはならないことがあると言っていいと思う(中略)当時のことから教訓を学ぶ機会は今後、たくさんあるはずだ」と述べた。

「違うやり方ができたこともあったかもしれないし、実際には何をどうすべきだったか、あるいはどういう別の方法があったのか、正確に理解するための時がいずれくる」

「命を落とした方ひとりひとりを追悼しているし、遺族の皆さんのことをとても気にかけている。そして政府が行ったすべてのことに、私が全面的に責任を負う」と首相は述べた。

イギリスでは24日現在、4万5677人が新型ウイルスによる感染症「COVID-19」関連で死亡したことが確認されている。検査機関で確認された感染者の人数は、累計約29万8000人に近い。

最大野党・労働党は、政府がコロナ禍の対応を誤ったと非難している。

ジョンソン首相は先週、コロナ禍対応について「独立」調査を約束したが、その規模や時期など詳細は示していない。

「次の段階への備え」

イギリス政府は24日、今年後半にイングランドの3000万人にインフルエンザ・ワクチンを提供する方針を発表した。これは、秋から冬にかけて新型コロナウイルス感染が再び急増する事態に備え、国民医療保険制度の「国民保健サービス(NHS)」の負担軽減を意図している。

ジョンソン首相はBBCの取材でこの対策について、検査・追跡体制の拡充や個人用防護具の調達拡大といった取り組みに加えてのものだと説明。「次の段階に備えて政府が何をしているのか。そのことに注目するのが大事だ」と述べた。

首相はさらに、COVID-19患者の重症化リスクを高める要因のひとつとして肥満に注目し、国民の肥満対策を強化すると表明。詳細を「間もなく」発表すると述べた。

ジョンソン氏は自分自身が3月末にCOVID-19にかかり4月には集中治療を必要とした

政府目標は変わらず

ジョンソン首相率いる与党・保守党は、昨年12月の総選挙で圧勝した。イギリスのあらゆる部分を「レベルアップする」というのが公約だった。

コロナ禍でイギリス経済は大打撃を受けたものの、この日のBBCインタビューで首相は政府にとっての優先事項は「以前とまったく同じで、むしろその重要性はますます高まった。ますますこだわって努力していく」と述べた。

「1年前にダウニング街(首相官邸)の玄関先に立った当時と、政府の政策目標は同じだ。それを今ではもっと先へ、もっと素早く進めたい」

ジョンソン氏は昨年7月24日に初めて総理大臣として首相官邸に入った時のことを振り返り、「とても興奮したし、誰もが嬉しそうだった」と話した。「幸せで元気」だった当時と比べ、新型コロナウイルスによって「大変なことが」たくさん起きてしまったと述べた。

「この国にとって心理的に、とんでもない日々だった」

「けれどもこの国の人たちには生来、不屈のたくましさと想像力が備わっている。そのことも承知している。なので前よりもずっと力強くなって、立ち直るはずだ」

首相のこのインタビューの内容を受けて、野党・労働党のジョナサン・アシュワース影の保健相は「ボリス・ジョンソンがついに、政府の新型ウイルス対策に失策があったと認めた」とコメントした。

「ウイルスの脅威を認めるのが遅すぎたし、ロックダウン開始が遅すぎた。この危機を深刻に受け止めるのが遅すぎた」

感染の第2波の脅威は本物だとアシュワース氏は釘を刺し、「人命を救うため私たちが協力できるようにするには、政府が過去の間違いから学ぶことが不可欠だ」と強調した。

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首代行は、首相は自分自身の「壊滅的なミス」について「後悔の念」を示していないと批判し、政府のコロナ禍対策を検証する独立調査が「ただちに」必要だと述べた。


<解説> ローラ・クンスバーグBBC政治編集長

ジョンソン氏はパンデミック中の政府の経験を利用して、自分の政権の政治目標実現を加速させたい考えだ。「レベルアップにこだわり続ける」という、独特の政治的表現を使いながら。

別の言い方をすればつまり、有権者の暮らしを実際に良くするための変化実現へ向けて、官僚主義による遅れを取り除き、断固として突き進むという方針だ。有権者の暮らしというのはこの場合とりわけ、昨年の総選挙で初めて保守党に投票した有権者を念頭に置いている。

いずれ襲ってくるかもしれない感染の第2波に備えてNHSを強化しつつ、首相は明らかに過去よりも未来に意識を集中させようとしている。

しかし、いったい何が起きたのか、政府が本当に認められるようになるまでは、ウイルス対策への疑問や批判は続く。そして、感染の第2波でこの閣僚たちを信じていいのか、世間の不安も続くかもしれない。

366日前と同じように、楽観主義が今もボリス・ジョンソンのトレードマークだ。

しかし、予想もしない不測の事態こそ、権力者にとって最大のチャレンジとなる。この数カ月で、それはよく分かった。


(英語記事 Coronavirus: We could have done things differently, says PM