赤木雅子
相澤冬樹

(文藝春秋『私は真実が知りたい』第14章より一部抜粋)

発端は昭恵夫人

 雅子さんはずっと考え続けている。私の“趣味”、何より大切だった夫、トッちゃんは、なぜ亡くなったのだろう? それは、公務員にあるまじき、公文書の改ざんをさせられたからだ。そのことを苦に命を絶った。はっきり手記に書いてある。

 では、改ざんをさせられたのはなぜ? それも手記に書いてある。〈すべては佐川理財局長(当時)の指示です〉

 それはそうだろう。でも、佐川さんが改ざんを指示したのはなぜ? 財務省で改ざんの調査報告書を取りまとめた伊藤豊秘書課長(当時)は雅子さんに語った。「安倍さんの発言が関係あった」と。国有地の巨額値引き売却が発覚した直後、二〇一七年二月十七日の国会での安倍首相の答弁のことだ。

 「私や妻がこの認可、あるいは国有地払い下げに、もし関わっていれば、総理大臣はもちろん、国会議員も辞める」

 安倍首相が国会でこう言い切ったことが炎上し、財務省理財局主導の公文書改ざんを招いたと、省内の調査報告の責任者がはっきり認めた。

 では、なぜ安倍首相はあんな答弁をしたのだろう? それは国有地を値引きした相手、森友学園が、あの土地に建てようとしていた小学校の名誉校長が、安倍首相の妻、昭恵さんだったからだ。それがなければ単に「国有地の不審な値引き」であったことが、あれがあったことで「首相の妻が関与しているのでは?」という当然の疑念を招いた。そこを追及されて安倍首相は“逆ギレ”したかのように強気の答弁をした。

 では、安倍昭恵さんはなぜ森友学園の小学校の名誉校長に就任していたのか? 昭恵さん自身が繰り返し発言している。森友学園の教育方針、教育勅語を幼稚園児に暗唱させ、愛国心を養う、その教育方針に賛同したからだ。

 安倍首相は、当時の森友学園の籠池泰典理事長から昭恵さんが無理矢理名誉校長にさせられたと発言しているが、籠池氏は「昭恵夫人は喜んで引き受けてくれた」と証言しているし、昭恵さん自身、フェイスブックに「森友学園の教育は素晴らしい」と書いている。

 では、昭恵さんが名誉校長だったことと、国有地を八億円も値引きして森友学園に売却したことは、関係があるのだろうか? 実際に値引きを決めて売った担当者は、池田靖氏。俊夫さんの直属の上司だが、俊夫さんがこの職場に異動したのは売却後だったので、俊夫さんは値引きの経緯を知らない。

 値引きは、あの国有地に埋まっているとされた“ごみ”の撤去費用だと財務省は説明している。ところがその額について、当の池田さんは第10章で紹介したように、雅子さんにこんな話をしている。
森友学園の小学校用地で建設が進められていた「瑞穂の国記念小学院」=2017年3月、大阪府豊中市(産経新聞ヘリから)
森友学園の小学校用地で建設が進められていた「瑞穂の国記念小学院」=2017年3月、大阪府豊中市(産経新聞ヘリから)
 「この八億の算出に問題があるわけなんです。確実に撤去する費用が八億になるという確信というか、確証が取れてないんです」

 確証がないのになぜ値引きしたのか? 結局あのスリーショット写真に行きつく。池田氏の前任者、前西勇人氏に会いに行くと、彼は写真を見たことを認め、それを上司に見せたことも否定しなかった。籠池氏は、写真を見せた後、財務局の態度が変わり「神風が吹いた」と表現している。