杉山崇(神奈川大人間科学部教授)
麻生マリ子(家族心理ジャーナリスト)

司会・対談構成:梅田勝司(フリーライター、編集者、「PressRoom.jp」記者)

 5月の緊急事態宣言の解除前後には、マスコミでも盛んに言われていた「ステップ3」という言葉は、新型コロナウイルス感染拡大の再加速の前に、すっかりかき消されてしまった。東京都の「ステップ3」は、休業要請を3段階で緩和していく「ロードマップ」(行程表)の1ステップだ。カラオケ、バー・スナック、ネットカフェなどの遊興施設やライブハウス、接待を伴う飲食店、さらにマージャン店やパチンコ、遊園地やゲームセンターなど遊戯施設が6月12日から緩和され、19日に全面解除された。

 国の「ステップ3」は、イベントや展示会開催などの制限を4段階で緩和する過程の1段階だ。7月10日からプロスポーツやコンサートの参加者数を上限5千人まで、会場の収容人数の50%までに拡大した。しかし、東京など都市部を中心に新規感染者数が拡大したことで8月1日に予定されていた制限解除は撤回された。

 制限が緩和されるにつれて、都内の繁華街や昼のオフィス街に人が戻リ始めた。しかし、新宿の劇場でクラスター(感染者集団)が発生するなど、夜の街を中心に陽性者が続出、感染経路不明者も増加している。果たして「ステップ3」の緩和判断は正しかったのだろうか。

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 梅田 東京都では、新型コロナの陽性が判明した人が連日のように200人を超えていますが、この数字は驚きを持って迎えられましたね。

 杉山 いろんな意味で驚きですね。まず、この数字で騒ぐことに少し驚いています。本当に大事なデータは重症者数と死亡者数のはずですが、実は、重症者も死亡者も大きくは増えていない。減っている傾向もありました。その中で、検査の実施件数を5月に比べて2倍から3倍に増やしているんですよね。注目すべきところが違うのではないかと思ってしまいます。

 それと、新型コロナでリスクが高いのは高齢者です。死亡者の70%は80代以上ですから。なので、若者を閉じ込める施策ではなく、高齢者を守る施策を進める必要があるのですが、あまり取られていないですよね。高齢者のみなさんは、自分が守られる施策を嫌がるのかなあ…。
マスクを着用し、東京都庁で記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年4月
マスクを着用し、東京都庁で記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年4月
 麻生 杉山先生のおっしゃる数字のお話は、検査実施数という分母の異なる陽性者の数を単純比較することはナンセンスではないか、という疑問ですよね。それに、私は「感染者数」ではなく、より正確に「陽性判明者数」とした方がよいのではと考えます。それに、人口10万人あたりの陽性判明者数と検査実施数、受診者数や重症者数、死亡者数の推移を、その地域の風土、移動手段や人口密度、産業比などと照らし合わせて考察しないと、単に陽性者数だけに着目して扇情的に論じても…とも感じます。

 また、高齢者を守るという点では、高齢者には「大切にされたいけれど、労られたくはない」というアンビバレンスが見られることがままあります。「年寄り扱いをされた」と感じる接し方に抵抗があったり、自尊心を傷付けられたりする人が決して少なくないのです。

 これは高齢の親や親族との家族問題、介護問題の相談や、介護現場の方からよく聞かれることですね。もし高齢者を守る施策に当事者が抵抗を感じるとすれば、似たような心理が働いている面もあるのでしょうか。