小倉正男(経済ジャーナリスト)

 「GoToトラベル」、なんとも悩み深いキャンペーンだ。政府が急いだのは、4~5月にどん底をなめている全国の観光関連産業を救済して、経済活動全体の再稼働を盛り上げたいという目論見からである。

 しかし、「GoTo」は急遽「東京外し」で行われることになった。それが東京都の小池百合子知事への「小池憎し」といった感情が混入した東京除外ということなら、なんと表現すべきか。政府と東京都との確執だが「GoTo」スタート直前に表面化した。

 「GoTo」について、小池知事は臨時の記者会見で「現在の感染状況を踏まえると、実施の時期であるとか、その方法などについては、改めてよ~くお考えをいただきたいとお伝えしたい」と発言した。

 小池知事は、都民に対して不要不急の外出を控える要請、都外への旅行などについては自粛を要請している。「(こうした事態では)キャンペーンはフルスペックにはならないのではないだろうか」。小池知事は、「GoTo」実施に疑問を呈し見直しを求めていた。

 政府与党は、「東京外し」について「GoToキャンペーンを止めてほしいといったのは小池氏だ」と突き放したとされている。「(小池氏こそ)よ~く考えていただきたい」、と。これではケンカである。

 この「東京外し」の直前には、菅義偉(よしひで)官房長官の「(コロナ感染問題は)圧倒的に東京問題」発言に対して、小池知事からは「むしろ国の問題だ」という反論があった。しかも小池知事は「GoTo」については、「暖房と冷房を同時にかけるようなこと」として、政策に「整合性」があるのか、と鋭い切り返しを行っている。

 政策も人間がやっているのだから、感情が入るのは否定できない。ただ、「GoTo」から東京を外すのは結果としてやむを得なかったとしても、除外基準も何も明らかにせず、いきなり「東京外し」を行ったのは感情が少し入りすぎである。双方ともルサンチマン(恨み)が複雑に入りすぎている。確執レベルでほとんどケンカに近い。「GoTo」は実施前から波乱に満ちていたことになる。

 「東京外し」についてだが、観光経済、あるいは経済効果に限定していえば暴挙にほかならない。東京都の国内総生産(GDP)は、日本のGDPの20%前後を占めている。東京のいわば金持ち層の上客を「GoTo」から除外したのだから、東京から全国に出て行くトラベルだけで30%内外の経済損失(機会損失・逸失利益)を見ておく必要がある。
「GoToトラベルキャンペーン」開始日、JR東京駅で新幹線に乗り込む利用者ら=2020年7月22日
「GoToトラベルキャンペーン」開始日、JR東京駅で新幹線に乗り込む利用者ら=2020年7月22日
 東京の観光経済は、江戸期の「入鉄砲出女」(江戸に鉄砲が入ってくる、人質である大名子女が江戸を出る)ではないが、東京から全国に出て行く旅行だけではない。顧みられない視点だが、地方から東京へのトラベルは日本の国内観光マーケットでは断トツのコンテンツである。