東京にエアライン、新幹線などの鉄道、長距離バス網が集中している。地方大都市などから東京に来てアパレル衣料、化粧品などショッピングをして、観劇をして食事をして、という経済効果がばかにならない。経済効果から見て、この地方から東京に観光に訪れるという機会損失・逸失利益も大きい。「東京外し」は経済、あるいは経済効果だけから見たら暴挙に近いというのはそのためだ。

 政府は新型コロナウイルス感染防止と経済の両立を図るとしている。その両立の極地ともいえる政策が「GoTo」にほかならない。「東京外し」は行われたが、神奈川、千葉、埼玉の首都圏3県は「GoTo」に組み込まれて残存した。政府も「GoTo」から首都圏3県を除外することも検討したが、さすがにそこまで外せば経済効果は半減になりかねない。それでは「GoTo」をやる意味そのものがなくなる。

 新型コロナ感染急増~感染爆発の傾向を抱えながら、「GoTo」を前倒しで実施するという政策は、政府にとってリスキーな政策という側面を抱えている。「GoTo」を進めれば新型コロナ感染を全国に極大化するリスクを持つことになる。かといって引っ込めれば信認が低下し政策の推進力を弱体化させるリスク(レームダック化)を顕在化させかねない。

 進むも退くもリスクがあり「悪手」というか、引っ込みがつかない。本来的には、「GoTo」を拙速で行うのは慎重でなければならなかった。だが、地方観光地の疲弊を救済することから前のめりで実施を表明した。

 そのため「GoTo」実施直前に連日300人に迫る感染者が出ていた東京(7月23日には感染者366人と過去最高更新)だけを外して、いわば足して2で割るような形で格好をつけたといえそうだ。

 新型コロナの全国への感染拡大の防止にもほどほど配慮し、疲弊している地方観光地の経済振興にもほどほど気を使うという両立路線である。逆にいえば、新型コロナ感染防止と経済の両方をそれぞれ少しずつ諦める、「両諦」路線にも見える。

 見通しが甘いというか、間が悪いというか、「GoTo」のスタートと同時に首都圏3県、大阪、愛知、福岡など大都市を抱える府県で感染が過去最高を更新、感染爆発といった動きが表面化した。新型コロナ封じ込めと経済の両立、これを同時に追求するという「二正面作戦」は簡単ではない。二兎を追って二兎とも得ることができるというのは極めて困難とそのリスクをこれまでの寄稿で指摘してきた(『コロナ戦争新フェーズ、政府と企業が陥る「二正面作戦」の罠』など参照)。
「GoToトラベル」をアピールする旅行業者の店頭=2020年7月、大阪市
「GoToトラベル」をアピールする旅行業者の店頭=2020年7月、大阪市
 そうした懸念を持ったのは4~5月の緊急事態宣言時にある。政府は緊急事態宣言を発令して、東京都など自治体が休業要請などを行った。強制力や罰則は伴わないが、国民の大半がそれにほとんど忠実に従った。西村康稔経済再生担当大臣が「日本人はすごい」と感嘆し、安倍晋三首相が緊急事態宣言解除時に発言した「日本モデル」である。