2020年08月03日 17:00 公開

イランの新型コロナウイルスによる死者数が、実際は政府発表の3倍近くに上ることが、BBCペルシャ語の調査でわかった。

ペルシャの保健省は、新型ウイルスの感染症COVID-19の死者について、7月20日時点で1万4405人としていた。しかし、政府のいくつかの記録からは、実際には約4万2000人に上っていた状況が見て取れる。

同国で確認された感染者も、公式発表では27万8827人とされたが、現実には2倍近い45万1024人に達していた。

イランは中国を除き、新型ウイルスの影響が世界で非常に深刻な国の1つ。

ここ数週間、2回目となる感染者数の急増が起きている。

初期には5倍の差

BBCが入手した記録によると、イランで最初のCOVID-19の死者が出たのは1月22日だった。これは、同国が最初に新型ウイルス感染を確認した2月19日の1カ月近く前になる。

同日までの28日間に、新型ウイルスによる死者は52人に上っていたとされる。

流行初期の死者数の増加は、保健省の発表よりずっと急激だった様子がうかがえる。3月中旬には、死者数は公式発表より5倍も多かったとみられる。

イランの新型ウイルス死者数の推移。オレンジが公式発表、赤茶色は今回入手したデータ(1月22日~7月20日、出典:BBC)


イランの公式発表については、多くの人が疑問視してきた。

国レベルと地方レベルで数字が一致せず、地方の当局者がその点を指摘したこともある。統計の専門家は、公式発表に代わる推計を出してきた。

検査能力の不足などで、発表が実態を下回る状況は世界各地でみられる。ただ、BBCが入手した情報では、イランはすべての死者を記録しているにもかかわらず、発表された1日あたりの死者数は大幅に少ない。このことから、意図的に抑えられていたことがうかがえる。

「真実を明るみに」

BBCは匿名の人物からデータの提供を受けた。

データにはイラン全域の病院における日々の入院状況を示すものもあり、名前や年齢、性別、症状、入院の日付と期間、基礎疾患などが記されている。

提供者は、「真実を明るみに出し」、感染流行に絡む「政治的ゲーム」を終わらせるために、BBCにデータを渡したとしている。

BBCは、データ提供者が政府関係者なのかや、今回のデータにアクセスした方法について、確認できていない。

しかし、患者リストの詳細は、BBCが別に確認した患者の状況と一致する。

また、公式発表と「提供されたデータの死者数」の差は、公式発表と「6月中旬までの超過死亡を算入した死者数」の差とも合致する。

超過死亡は、死者数が「通常の」状況下での想定をどれだけ超えたかを示す。

なぜ隠された?

イランの新型ウイルス流行の始まりは、イラン革命(1979年)の記念行事と議会選挙とタイミングが重なった。

政権にとってはともに、国民の支持を誇示する機会だ。それが新型ウイルスによって損なわれることは避けたかったとみられる。


最高指導者アリ・ハメネイ師は、新型ウイルスを利用して選挙に影響を及ぼそうとする勢力があると非難していた。

結果的に、選挙の投票率は非常に低かった。

新型ウイルスの流行前から、イランは数々の危機に直面していた。

2018年11月には、ガソリン価格の高騰に抗議するデモを暴力的に抑え込み、数百人の死者を出した。今年1月には、テヘラン国際空港を離陸したウクライナ航空機を誤ってミサイルで撃墜。乗客乗員176人全員が死亡したが、イラン当局は当初、これを隠ぺいしようとした。


こうした経緯から、新型ウイルスがイランを襲ったとき、政府は「真実を心配し恐れた」のだろうと、元国会議員で保健省での勤務経験もあるヌロルディン・ピルモアゼン医師はBBCに語った。

「政府は貧しい人々と失業者が通りで抗議デモをするのを心配した」

また、イラン政府がイスファハン州で、国際医療団体・国境なき医師団(MSF)による新型ウイルス患者の治療を止めたことも、同国政府が新型ウイルスの流行に神経をとがらせている証拠だとした。

イランの保健省は、世界保健機関(WHO)に報告している感染者数と死者数について、「透明性が保たれた」ものであり、「偏りはまったくない」としている。

(英語記事 Iran cover-up of Covid-19 deaths revealed by data leak