
2020年08月04日 11:41 公開
リオ・ケリオン、ジェイムズ・クレイトン、テクノロジー担当記者
中国企業の動画共有アプリTikTokがロンドンに国際本社を置く計画をめぐり、イギリス議会の若手有力議員が政府に対し、セキュリティー面での検証を実施するよう求めた。
TikTokについては、アメリカ政府が安全保障上のリスクがあるとして、同国での利用を禁止する動きをみせている。
イギリス政府に検証を求めたのは、与党・保守党の「中国リサーチグループ」を共同設立したニール・オブライエン下院議員。
イギリスへの中国の影響を懸念する議員約50人でつくる同グループは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の第5世代移動通信システム(5G)の導入を考え直すよう英政府に圧力をかけるなどしてきた。
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「多くの疑問」
オブライエン氏は、TikTok本社のロンドン移転に基本的には反対ではないとした上で、まず同社に関して「深く掘り下げた調査」を実施すべきだと訴えた。
「TikTokによるイギリスへの投資は歓迎すべきだ。しかし、一部で報じられているような問題があるなら、それがアルゴリズムやコンテンツに関する政治的介入だろうと、データの行き先やセキュリティーの欠陥に関するものだろうと、多くの疑問が生じる」
そして、情報機関のサイバーセキュリティー専門家らによる報告書が作成されるべきだと主張した。
一方、TikTokは、現地の法律を厳格に順守していると述べている。
現在、中国以外のユーザーのデータは、アメリカとシンガポールに置いたサーバーに保存されている。
トランプ氏が買収期限を設定
TikTokをめぐっては、ドナルド・トランプ米大統領がアメリカ国内での利用を禁止する意向を明らかにしている。
トランプ氏のこの発言により、TikTokは米カリフォルニアか、すでにオフィスを構えるニューヨークに本社を移す計画を断念した。同社は5月、元ディズニー幹部のケヴィン・メイヤー氏を最高経営責任者(CEO)に指名していた。
トランプ氏は3日、「期限を9月15日ごろに設定した。その日には(TikTokに)アメリカから撤退してもらう。(中略)マイクロソフトなどが買収できれば別だが」と述べた。
また、「我々が買収を可能にしているのだから」、「買収価格の相当部分」は米財務省に納められるべきだと主張した。
マイクロソフトは協議認める
マイクロソフトは、TikTokとアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドにおける同社事業の買収協議をしていることを認めた。これらの国々は機密情報ネットワーク「ファイブ・アイズ」の構成国で、残りの構成国イギリスだけが協議の対象になっていない。
TikTokの親会社ByteDanceは、こうした状況によって再考を迫られたと認めている。
同社は声明で、「現状を鑑み、世界のユーザーによりよいサービスを提供するため、ByteDanceはTikTok本社を米国外に置く可能性を検討している」と明らかにした。
最終決定をした?
英紙サンは先週末、イギリス政府がTikTokのロンドン本社設置をすでに承認したと報道。今週中に発表されると伝えた。
しかし関係者はBBCに、ロンドンに設置される可能性は高いが、ByteDanceはまだ最終決定をしていないと話した。
他の候補地として、アイルランドのダブリンとシンガポールが挙がっているとされる。
英首相官邸の報道官は、いかなる決定もバイトダンスによる「商業上のもの」だと説明。また、ボリス・ジョンソン首相はこの問題についてトランプ大統領と協議したことはないとした。
2つの懸念
英政府通信本部(GCHQ)は今後、TikTokに関して2つの懸念を特に注視するとみられる。
1つは、中国のスパイが位置情報データやインターネットアドレスなどの情報にアクセスできるかだ。
もう1つは、政治的なコンテンツの発信にどの程度利用され得るかだ。
TikTokは、中国外のユーザーのデータを中国に送ることはないとしている。しかし、中国政府が国家情報法に基づいて求めた場合、TikTokは従わざるを得ないのではないかと心配されている。