2020年08月04日 15:30 公開

汚職疑惑がもたれているスペインのフアン・カルロス前国王(82)が同国を離れた。王室は3日、2014年に生前退位したフアン・カルロス氏が同国を去ると発表していた。行き先は明らかにされていない。

フアン・カルロス氏は3日、6年前に譲位した息子のフェリペ6世宛ての手紙で、スペインを離れることを明らかにした。検察当局の聴取には応じるとしている。

スペインの最高裁判所は6月、サウジアラビアの高速鉄道をめぐる契約にフアン・カルロス氏が不正に関わった疑いがあるとして、捜査を開始した。

フアン・カルロス氏の現在の居場所は明らかにされていないが、スペインメディアは、ドミニカ共和国にいると報じている。

国王への手紙の内容は?

フェリペ6世への手紙でフアン・カルロス氏は、「過去に私の私生活で起きた出来事によって公からの圧力が高まっている」こと、フェリペ6世に王としての公務を「静かに」行ってほしいことなどから、スペインを離れると決意したと説明した。

「スペインという国家と国民、そして国王であるあなたに仕えるという強い信念に基づいて、スペインを離れることをお伝えします」

スペイン王室は、フェリペ6世が父親への「心からの敬意と感謝」を持ってその決定を受け入れたと発表した。

フェリペ6世は3月、フアン・カルロス氏からの相続財産を放棄すると発表。スペイン王室も、フアン・カルロス氏に対する19万4000ユーロ(2300万円)の年金を中止しており、フアン・カルロス氏のスキャンダルから距離を置こうとしているとみられていた。

汚職をめぐる捜査とは?

最高裁は今回の捜査で、フアン・カルロス氏が2014年の退位後にサウジの鉄道プロジェクトに関わっていたことを突き止めるとしている。この時すでに、フアン・カルロス氏は不逮捕特権を持っていなかった。

サウジのメッカとメディナをつなぐ高速鉄道の建設計画は、スペイン企業が67億ユーロ(約8400億円)で受注している。

フアン・カルロス氏にはこのほか、スイスの銀行に申告していない資産を隠し持っている疑惑がかかっており、スイスの金融当局の捜査を受けている。

スペイン政府は、「司法は全ての人に平等だ」とした上で、捜査に「介入はしない」と表明している。

「屈辱的な退場」

フアン・カルロス氏は、独裁体制を強いてきたフランシスコ・フランコ将軍の死後、その後継者として国王に就任。しかし即位後は立憲君主制への移行をはかったことで評価を受けてきた。

退位の数年前までその人気は高かったものの、2012年にボツワナで行ったゾウの狩猟に対する批判や、娘のクリスティーナ王女と夫による汚職疑惑などを受け、2014年に生前退位した。

BBCのニック・ビーク欧州担当編集委員は、スペインを民主主義へと導いた国王の退場劇として、今回の国外への離脱は屈辱的なものだと分析している。

(英語記事 Spain's ex-King Juan Carlos leaves country