2020年08月05日 11:42 公開

汚職疑惑を受けてスペインを離れたフアン・カルロス前国王(82)の滞在先に注目が集まっている。2014年に生前退位したフアン・カルロス氏は3日に書簡で同国を去ると発表したが、行き先は明らかにしていない。

フアン・カルロス氏はカリブ海のドミニカ共和国に行ったのではないかと報じられているが、当局はそういった情報は持っていないと話している。

報道では、フアン・カルロス氏は4日に同国に入国したとされているが、ドミニカ共和国の入国管理局の報道官は、そうした事実はないと説明。ただ、同氏が2月末から3月初めにかけて同国を訪れていたことを明らかにした。

スペインのペドロ・サンチェス首相は、前国王の居場所は知らないと話している。

<関連記事>

スペインの最高裁判所は6月、サウジアラビアの高速鉄道をめぐる契約にフアン・カルロス氏が不正に関わった疑いがあるとして、捜査を開始した。

同氏は3日に公表した書簡の中で、検察当局の聴取には応じるとしている。

スペインでの報道は?

スペインの新聞各紙は、前国王の居場所についてさまざまな証言を掲載している。

ラ・ヴァンガルディアは、フアン・カルロス氏が3日にポルトガルに行き、そこからドミニカ共和国へ渡航する計画だったと伝えた。

別の日刊紙ABCは、同氏はすでにドミニカ共和国に到着していると報道。一方エル・コンフィデンシアルは、滞在先候補としてポルトガルやフランス、イタリアを挙げている。

主要紙エル・パイスは今のところ、こうした憶測について触れていない。

ポルトガルのメディアは、フアン・カルロス氏がエストリルやカスカイスなどのリゾート地に滞在していると伝えている。

ドミニカ共和国では、フアン・カルロス氏が入国したとの報道はでていない。

政権にも影響か

フェリペ6世への手紙でフアン・カルロス氏は、「過去に私の私生活で起きた出来事によって公からの圧力が高まっている」こと、フェリペ6世に王としての公務を「静かに」行ってほしいことなどから、スペインを離れると決意したと説明した。

スペイン王室は、フェリペ6世が父親への「心からの敬意と感謝」を持ってその決定を受け入れたと発表した。

フェリペ6世は3月、フアン・カルロス氏からの相続財産を放棄すると発表。スペイン王室も、フアン・カルロス氏に対する19万4000ユーロ(2300万円)の年金を中止しており、フアン・カルロス氏のスキャンダルから距離を置こうとしているとみられていた。

サンチェス首相は閣議のあとの記者会見で、フアン・カルロス氏の国外滞在という決定を「絶対的に尊重する」と強調した。

しかし、連立政権を組む左翼党「ポデモス」のイレーネ・モンテロ平等担当相は、ポデモスは政府と王室の間の交渉について何も聞いていなかったと発言。

フアン・カルロス氏が国外に出たことでスペイン王室は「非常に矛盾した微妙な立場」に置かれているとし、スペイン国民は「さらなる汚職や免責は認めないだろう」と話した。

汚職をめぐる捜査とは?

最高裁は今回の捜査で、フアン・カルロス氏が2014年の退位後にサウジの鉄道プロジェクトに関わっていたことを突き止めるとしている。この時すでに、フアン・カルロス氏は不逮捕特権を持っていなかった。

サウジのメッカとメディナをつなぐ高速鉄道の建設計画は、スペイン企業が67億ユーロ(約8400億円)で受注している。

フアン・カルロス氏にはこのほか、スイスの銀行に申告していない資産を隠し持っている疑惑がかかっており、スイスの金融当局の捜査を受けている。

スペイン政府は、「司法は全ての人に平等だ」とした上で、捜査に「介入はしない」と表明している。

「屈辱的な退場」

フアン・カルロス氏は、独裁体制を強いてきたフランシスコ・フランコ将軍の死後、その後継者として国王に就任。しかし即位後は立憲君主制への移行をはかったことで評価を受けてきた。

退位の数年前までその人気は高かったものの、2012年にボツワナで行ったゾウの狩猟に対する批判や、娘のクリスティーナ王女と夫による汚職疑惑などを受け、2014年に生前退位した。

BBCのニック・ビーク欧州担当編集委員は、スペインを民主主義へと導いた国王の退場劇として、今回の国外への離脱は屈辱的なものだと分析している。

(英語記事 Spain puzzles over former king's whereabouts