2020年08月10日 12:23 公開

東欧ベラルーシで9日に大統領選の投開票が行われ、国営テレビの出口調査によると、現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)が80%近い得票率を獲得し、再選を確実にした。この結果を受け、長期政権に反発する市民と警察が、首都ミンスクで衝突した。

警察は閃光弾を使って抗議者を追い払った。負傷者が出たとの情報もある。

ルカシェンコ大統領の対立候補として出馬したスベトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)は、自身の得票率を7%だとする国営テレビの出口調査は信頼できないとした。

「私は自分の目を信じている。大多数が私たちを支持しているのをこの目で見ている」と、チハノフスカヤ氏は9日夜の記者会見で述べた。

野党勢力は不正選挙になるのは想定内だとして、独自の集計を行う方針。

政治経験のないチハノフスカヤ氏は、今年5月に政権に批判的だったブロガーの夫が出馬を禁じられ、収監された後に出馬を決めた。

先月30日には野党への弾圧が強まる中、首都ミンスクで大規模な選挙集会を開いた

1994年の就任以来、実権を握ってきたルカシェンコ大統領は、国内の状況は今後も「制御下」にあり続けると誓った。

ここ数年で最大の野党集会が開かれる中、9日の大統領選までに複数の活動家やジャーナリストに対する取り締まりが行われた。

ベラルーシでいま何が起きているのか

9日夜には、ミンスク中心部にある英雄都市記念碑近くで、抗議者が警察と衝突したとの報告があった。

目撃者や特派員によると、機動隊はデモ隊を追い払うためにゴム弾や放水銃を使った。

救急車数台が現場に急行する様子が目撃されている。

ミンスクで機動隊と争うデモ隊の動画も、浮上している。複数報道によると多数の逮捕者が出たという。

群衆は市内の路上で、ルカシェンコ大統領に対して「いなくなれ!」と声を上げている。

同様の抗議デモはブレストやジョジノでも夜通し行われている。

インターネット監視グループNetBlocksは先に、ベラルーシ全土でインターネット接続が「著しく途絶」し、状況は1日を通して悪化しており「情報の空白」が生じているとしていた。

長年にわたる独裁政権

欧州最後の独裁者とも呼ばれるルカシェンコ大統領は、1994年に初当選した。

前回の2015年大統領選では、83.5%の得票率で勝利宣言した。

この時、ルカシェンコ氏の5期目当選を脅かす対抗馬はいなかった。選挙監視員からは、票の集計に問題があったとの報告があった。

今回の選挙は、ルカシェンコ氏の指導力への不満が高まる中で行われた。

元教師で、政治的注目を浴びるまでは専業主婦をしていたチハノフスカヤ氏が、ルカシェンコ氏の対立候補として浮上した。

政権に批判的だった夫セルゲイ・チハノフスキ氏が逮捕され、出馬を禁じられたことを受け、代わりに出馬することを決めた。

選挙に先立ち、チハノフスカヤ氏はベラルーシの人々は選挙が公平に行われるとは思っていないと、BBCに述べていた。

「ですが、我々の大統領が、自分の時代は終わったと理解してくれると、私は今も信じている。国民はもう彼を必要としていない」

一方でルカシェンコ氏は、チハノフスカヤ氏は外国の「人形遣い」に操られた「哀れな少女」だとはねつけている。

2000人超が拘束、インターネットが「途絶」

先月には数万人が野党への弾圧を無視し、過去10年で最大規模の野党集会に参加した。

人権団体ヴィアスナによると、5月の選挙キャンペーン開始以降、2000人以上が拘束されたという。

投票前夜、チハノフスカヤ陣営は選対委員長が逮捕され、10日まで釈放されないだろうと明かした。

そして9日に投票が進められる中、インターネットサービスが「著しく途絶」したとNetBlocksは指摘した。野党勢力によると、これによって選挙違反行為の証拠を集めて共有する作業が難しくなる。

オブザーバーは選挙監視に呼ばれず、票の4割以上が期日前に投票されていたことから、投票の公平性について懸念が出ていた。

ほかの候補者は

選挙にはルカシェンコ氏、チハノフスカヤ氏のほか、3人が立候補していた。

  • アンナ・カノパツカヤ前下院議員。2016年の議会選挙で野党議員として唯一議席を獲得した人物。
  • セルゲイ・チェレチェン社会民主党党首
  • アンドレイ・ドミトリエフ「Tell the Truth(真実を伝える)運動」共同代表。同団体は当局の家宅捜索を受けている

野党の主要人物2人は出馬を禁じられ、チハノフスカヤ氏の支援に回った。

そのうちの1人、ヴァレリー・ツェプカロ氏は逮捕を恐れ、選挙前にベラルーシから逃れた。ツェプカロ氏の妻ヴェロニカ氏は国内に留まり、チハノフスカヤ氏にとって主要な運動員となった。

そのヴェロニカ氏もまた、ベラルーシを離れたことが9日に明らかになった。同氏は「安全上」の理由からロシア・モスクワへ向かったという。

新型ウイルスに「ウォッカとサウナ」

ルカシェンコ政権への国民の怒りを増幅させている要因の1つは、新型コロナウイルス対応にある。

ルカシェンコ大統領は新型ウイルスのアウトブレク(大流行)を軽視し、感染症対策としてウォッカを飲んでサウナに行くよう市民に助言してきた。ウイルスは見えないから存在しないとも発言していた。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、人口約950万人のベラルーシでは、これまでに6万8000人以上が感染し、587人が死亡している(日本時間10日午前時点)。

(英語記事 Clashes erupt after disputed Belarus election