2020年08月10日 13:24 公開

香港メディア界大物で民主化活動家の実業家、黎智英(ジミー・ライ)氏(71)が10日、香港警察に逮捕された。黎氏の会社幹部が明らかにした。

黎氏が会長を務めるネクスト・デジタルの幹部、マーク・サイモン氏は、黎氏は香港国家安全維持法(国安法)の下、「今回は外国勢力と結託した疑いで逮捕された」と述べた。国安法は6月30日深夜に施行された

地元メディアによると、香港警察は黎氏が創刊した蘋果日報(アップルデイリー)紙の社内に入り、家宅捜索も行った。黎氏が後ろ手に手錠をされて連行される様子の映像も、伝えられている。

https://twitter.com/ezracheungtoto/status/1292639860696571904


中国紙「環球時報」の英語版「グローバル・タイムズ」によると、黎氏の息子2人とネクスト・デジタルの幹部2人も逮捕された。

香港警察は10日、23歳から72歳の男性9人と女性1人の計10人を国安法違反の疑いで逮捕したと認めた。

さらに現地報道によると、黎氏の逮捕から数時間後に警察は、民主化を求める活動家の1人、周庭(アグネス・チョウ)氏の自宅前に集まった。

すでに香港を離れているという民主化活動家の羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は英語や日本語で、「アグネスは一緒に闘ってきた友人の一人です。独裁政権である中国共産党(CCP)は国安法違反「国家分裂」の容疑で23歳の女性を逮捕。彼女は無罪だが、無期刑を受ける可能性がある」とツイートした

https://twitter.com/nathanlawkc/status/1292840892756307973?s=20


これに加えて英ITVニュースは、ITVで働くフリーランス記者のウィルソン・リ氏が、外国勢力との共謀の疑いで逮捕されたと明らかにした。別の活動家、アンディ・リ氏も逮捕されたという。

想定された最悪の事態

この日の一斉逮捕で、中国政府が新しい国安法を使って、香港の民主化活動家やマスコミ関係者を次々と取り締まるのではないかと懸念が高まっている。

羅氏はツイッターで、「自分が最も恐れていたこと」が現実になっていると書き、一連の逮捕は「香港の報道の自由の終わり」を意味すると憂慮した。

蘋果日報の関係者によると、同社は「弁護団を用意」して、「あからさまないやがらせ」に対抗するつもりだという。

国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」のアジア担当、スティーヴ・バトラー氏は、一連の逮捕は「香港の国安法が中国政府に批判的な民主化支持世論を抑圧し、報道の自由を制限するために使われるという、最悪の懸念を現実のものにした」と批判。「ただちにジミー・ライを釈放し、一切の容疑を取り消すべきだ」と主張した。

1989年の天安門事件で民主化運動の学生リーダーだった王丹(ワン・ダン)氏は、逮捕は「想定内」だが、「きわめてとんでもない」ものだと亡命先からソーシャルメディアで非難した。「2人の息子も逮捕したのは、当局が明らかに家族の絆を利用して、ライ氏の覚悟を砕こうとしているからだ」と指摘し、「ただちに行動をとるよう国際社会に呼びかける」と続けた。

黎智英氏とは

黎氏は昨年夏から香港で本格化した民主派デモを全面的に支援していた。

イギリス市民権も持つ黎氏は今年2月、違法集会と脅迫の罪で逮捕・起訴された後、保釈されていた。

黎氏の資産総額は10億ドル(約1060億円)以上とされる。

最初に服飾産業で成功した後、メディア業界に参入し、蘋果日報を創刊。香港自治政府や中国政府に批判的な報道を展開した。

自らも香港の民主化運動に積極的に参加した黎氏を、中国国営メディアは「反乱の首謀者」と呼び、「中国本土への憎悪や否定的情報を、昼夜を分かたずひっきりなしに広め続けた」と非難した。

国安法が6月30日に施行された時点で黎氏はBBCに、「これは香港にとって死刑宣告だ」と話していた。黎氏は、香港が今後は中国大陸と同じくらい腐敗した場所になると述べ、「法治主義がなければ、ここで事業をする人間は何の保護も得られなくなってしまう」と話していた。

AFP通信によるインタビューでは、「刑務所に入る覚悟は出来ている。その時が来れば、読んでいなかった本が読める。前向きな気持ちでいるしか、ほかにどうしようもない」と心境を明かしていた。

(英語記事 Hong Kong pro-democracy tycoon Jimmy Lai arrested