2020年08月11日 11:12 公開

レバノンのハサン・ディアブ首相は10日夕、国民向けのテレビ演説で内閣の総辞職を発表した。首都ベイルートの港で4日に発生した大規模爆発をめぐり国民の政府への怒りが膨らむ中、自らの改革が妨害されていたと主張した。

ミシェル・アウン大統領は、新たな内閣が組まれるまで職務にとどまるよう現閣僚に求めた。

爆発ではこれまでに死者220人が確認され、さらに110人が行方不明となっている。ベイルートのマルワン・アブド県知事が、アルマルサド・オンラインニュースに語った。

アブド氏はまた、行方不明者には多数の外国人労働者やトラック運転手が含まれていると、テレビ局アルジャディードに語った。

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爆発の被害は現場から半径数キロの範囲に及んだ。市民20万人以上が住宅を失うか、窓やドアがない家に住むなどしている。

多くの市民らは、政府の怠慢と腐敗が爆発の原因として、同国指導層を非難。10日まで3日連続でデモが起こり、警官隊との衝突も発生している。


映像には、国会への道路に設置された障害物の付近にデモ参加者らが集まり、治安部隊が催涙ガスを放っている様子が映し出されている。

爆発は、ベイルートの港湾地区の倉庫に長年にわたって危険な状況で保管されていた硝酸アンモニウムが直接の原因となった。

首相の演説

今年1月に首相に就任したディアブ首相は、この日のテレビ演説で自らを改革者として描き、政府は「この国を救うためのロードマップ作成に多大な努力をした」と主張。根強い抵抗で妨害されたと訴えた。

ディアブ氏は、レバノンにおける腐敗の広がりは「国そのものより大きい」と説明。「非常に分厚く、とげだらけの壁が変革を妨げている。既得権益を守り、改革に抵抗するため、汚い手法を使う連中が、その壁を強化している」と主張した。

「この連中は私たちが脅威だと承知している。この政府が成功すれば、長年レバノンを窒息させてきた支配層に本当の変化をもたらすと、分かっているのだ」

「私たちは今日、今回の大惨事を招いた責任者の追及と、真の変革を求める国民の意思に従う」


これからどうなる

内閣総辞職を受け、国会は新しい首相を決める。ただ、現在の反政府デモの理由にもなっている複雑な派閥政治のため、新首相は簡単には決まらないだろうと、BBCのトム・ベイトマン中東特派員は言う。

同国では、異なる宗教グループの指導者らが権力を分け合っている。さらに、1975~1990年の内戦の終結後、多数の軍閥が政界に進出。現在も政治、経済、社会の広範囲で影響力をもっている。

今回のデモ参加者らは、こうした仕組みがレバノンの腐敗の原因だと訴えている。


経済危機がさらに悪化

レバノン当局は、今回の爆発による損失は30億ドル(約3200億円)以上と推定。同国経済への打撃は約150億ドルになるだろうとしている。

同国では爆発前から、経済危機による貧困や飢えが問題となっていた。

政府への不満も以前から高まっていた。

昨年後半には、メッセージアプリ・ワッツアップの利用に課税しようとしたことをきっかけに、経済的混乱や腐敗に抗議する大規模なデモが発生。当時の内閣は総辞職した。


新型コロナウイルスの流行でデモは下火となったが、経済危機は悪化し続けた。

今回の爆発を受け、すでに何人もの閣僚が辞任を表明している。

国民の政治不信は根深く、ディアブ政権の退陣で国民の怒りが鎮まるとは限らない。昨年の反政府デモは内閣を総辞職に追い込んだが、その際も今回と同様の腐敗批判が繰り広げられていた。

(英語記事 Lebanon cabinet resigns as anger over blast mounts