2020年08月11日 11:42 公開

東欧ベラルーシで9日に投開票された大統領選で、現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)が6期目当選を決めたことに抗議する市民と警察が2夜連続で衝突した。10日には市民1人が死亡した。

首都ミンスクでは10日、機動隊が数千人のデモ隊を鎮圧するためにゴム弾や催涙ガス、閃光弾を使った。

複数報道によると、一部のデモ参加者は火炎瓶を投げたり、バリケードをつくるなどして反撃に出たという。

「爆発物が手元で爆発」

この日、衝突が始まってから初の死者が出た。

内務省は声明で、デモ参加者1人が「正体不明の爆発物を法執行機関の一員に投げ付けようとした」際、「爆発物が手元で爆発」し、死亡したと発表した。

この衝突では、多数の逮捕者が出た。また、女性ジャーナリスト1人が負傷したと、同僚や目撃者が証言した。

ベラルーシ向けに発信しているポーランドのBelsat TVは、警察が群衆に突入する映像を放送した。

市内では複数の地下鉄駅が閉鎖された。インターネットは衝突2日目も、ほとんどつながらなかった。

国内のほかの都市でも抗議デモが行われた。

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「不正選挙」と反発

国営テレビの出口調査によると、独裁体制のルカシェンコ大統領は9日の大統領選で、80%近い得票率を獲得し、再選を果たした。

ルカシェンコ大統領の対立候補として出馬したスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)は、自分が真の勝者だとして、選挙結果を拒否した。

中立の選挙監視団が呼ばれなかったことから、不正があったのではないかとの声が上がっている。

今回の選挙は、ルカシェンコ氏の指導力への不満が高まる中、そして野党集会に数万人が詰め掛ける中で行われた。選挙前には複数の活動家やジャーナリストに対する取り締まりが行われた。

1994年の就任以来、実権を握ってきたルカシェンコ氏は、チハノフスカヤ氏の支持者らは外国に操られている「臆病者」だとし、国をばらばらに分断させたりはしないと誓った。

選挙当局によると、ルカシェンコ氏の得票率は80.23%、チハノフスカヤ氏の得票率は9.9%だった。

政治経験のないチハノフスカヤ氏は、今年5月に政権に批判的だったブロガーの夫が出馬を禁じられ、収監された後に出馬を決めた。

チハノフスカヤ氏の主張

チハノフスカヤ氏は、10日朝に発表された選挙結果は「常識と完全に相反している」とし、当局は平和的に権力を引き渡す方法を検討すべきだと述べた。

「当局は力ずくで自分たちの地位にしがみつこうとしている」

「国民を攻撃しないよう、我々がどれだけ当局に求めても聞き入れられなかった」

チハノフスカヤ氏の選挙陣営は、選挙における「多数の改ざん行為」に挑戦していくつもりだとしている。

「中央選挙管理委員会が発表した選挙結果は現実とは一致せず、常識と完全に相反している」と、チハノフスカヤ氏の報道官アンナ・クラスリナ氏は述べた。

しかし、ルカシェンコ大統領はチハノフスカヤ氏の発言をあざけった。

「権力構造のトップにいて、国家元首でもあるルカシェンコが、票の80%を得たのに、自発的に権力を引き渡さなければならないと? こんな命令は向こう(国外)から仕向けられたものだ」

「我々は強固に対応することになる」とルカシェンコ氏は付け加えた。「この国がばらばらに引き裂かれるなど、認めない」。

国際社会の反応は

今回の選挙では、ロシア民兵組織の介入が取りざたされていた。大統領は、ロシアとつながっているのはチハノフスカヤ氏側だと責めるなど、通常は友好関係にある両国の間に、異例のあつれきも生じていた。

しかし選挙結果を受けて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はルカシェンコ氏の勝利を祝福した。

中国、カザフスタン、ウズベキスタン、モルドヴァ、アゼルバイジャンの各首脳も、ルカシェンコ氏を支持するメッセージを送った。

一方でドイツ政府は、選挙結果に「強い疑念」があるとし、最低限の基準が満たされていなかったと批判した。

アメリカも今回の選挙に「深い懸念がある」と述べ、「平和的に集会を行う権利を尊重し、実力行使は控える」よう求めた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、選挙結果の公表を求めた。

「平和的な抗議者に対する嫌がらせや暴力的な抑圧など、欧州であってはならない」

長年にわたる独裁政権

欧州最後の独裁者とも呼ばれるルカシェンコ大統領は、1994年に初当選した。

前回の2015年大統領選では、83.5%の得票率で勝利宣言した。

この時、ルカシェンコ氏の5期目当選を脅かす対抗馬はいなかった。選挙監視員からは、票の集計に問題があったとの報告があった

元教師で、政治的注目を浴びるまでは専業主婦をしていたチハノフスカヤ氏が、ルカシェンコ氏の対立候補として浮上した。

政権に批判的だった夫セルゲイ・チハノフスキ氏が逮捕され、出馬を禁じられたことを受け、代わりに出馬することを決めた。

ルカシェンコ氏は、チハノフスカヤ氏は外国の「人形遣い」に操られた「哀れな少女」だとはねつけている。

インターネットが「途絶」

9日に投票が進められる中、インターネットサービスが「著しく途絶」したと、インターネット監視グループNetBlocksは指摘した。野党勢力によると、これによって選挙違反行為の証拠を集めて共有する作業が難しくなる。

オブザーバーは選挙監視に呼ばれず、票の4割以上が期日前に投票されていたことから、投票の公平性について懸念が出ていた。

先月には数万人が野党への弾圧を無視し、過去10年で最大規模の野党集会に参加した。

新型ウイルスに「ウォッカとサウナ」

ルカシェンコ政権への国民の怒りを増幅させている要因の1つは、新型コロナウイルス対応にある。

ルカシェンコ大統領は新型ウイルスのアウトブレク(大流行)を軽視し、感染症対策としてウォッカを飲んでサウナに行くよう市民に助言してきた。ウイルスは見えないから存在しないとも発言していた。

米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、人口約950万人のベラルーシでは、これまでに6万8000人以上が感染し、589人が死亡している(日本時間11日午前時点)。

(英語記事 Second night of clashes over disputed Belarus poll