2020年08月14日 12:39 公開

大統領選挙の結果をめぐり抗議行動者と警官隊の衝突が起きている東欧ベラルーシで、拘束された市民に対する暴力の証拠が次々と上がっていると、人権擁護団体などが警告している。

投開票が行われた9日以降、これまでに約6700人が当局に拘束された。一部の人はすでに釈放されたものの、殴打を含む不当な扱いを受けた疑いが持ち上がっている。

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、証言からは「拷問がまん延している」ことがうかがえると指摘した。

抗議運動は13日、5日目を迎えた。1994年から政権を握る現職アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)の勝利宣言を受けて始まったもので、参加者は選挙に不正があったと訴えている。

欧州連合(EU)加盟国の外相会談では、ベラルーシに対する制裁が検討されている。

「拷問部屋」

解放された抗議者がメッセージアプリ「Nextra」で共有した写真には、背中やでん部が腫れあがったりあざができている様子が写されている。警察当局の暴行によるものだとみられている。

アムネスティ・インターナショナルによると、拘束された人々は裸にされ、殴られたり、強姦すると脅されたりしたと証言しているという。

同団体の東欧・中央アジアディレクターを務めるマリー・ストラザーズ氏は、「拘束されていた人からは、収容センターが拷問部屋になっていたと聞かされた。抗議参加者は土の上に横たわるよう強制され、警官に蹴られたり警棒で殴られたりしたという」と話した。

BBCの取材班は、首都ミンスクにあるオクレスティナ収容センターから叫び声が上がっているのを録音している。

またAFP通信は国連の人権専門家5人からなる監視団の話として、機動隊は平和的抗議を強硬に取り締まり、過剰で不要かつ無差別な暴力を頻繁に使っていたと伝えている。

国連の人権専門家らは共同声明で、「ベラルーシ当局は抗議活動を速やかに解散させ、できるだけ多くの人を逮捕することにしか興味がないように思える」と述べている。

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こうした中、ベラルーシ上院のナタリャ・コチャノヴァ議長は国営テレビでの演説で、ルカシェンコ大統領が抗議者拘束についての捜査を命令したと発表。これまでに1000人以上が釈放されていると述べた。

またユーリ・カライエフ内相は、抗議活動中に大勢が負傷したのは自分の責任だと述べ、暴力に巻き込まれた人には謝罪したいと語った。

こうした声明や抗議者の釈放を受けて、警察に対する市民の怒りや国際的な批判を受け、政府が懐柔的なアプローチに切り替えつつあるようだという見方が広がっている。

政府はこれまでに、一連の衝突に絡んで2人が亡くなったと発表している。

1人は10日、ミンスクで爆発物を手に持っていた男性が爆発によって死亡。もう1人は南東部ホメリ州の25歳の男性で、拘束された後に体調を崩して亡くなった。

ストライキや花を持ったデモも

13日にNextraに投稿された動画には、抗議参加者らが「出て行け!」と叫びながら通りを歩いている姿が映されている。

https://twitter.com/Alla91748059/status/1293985537020354560


また、ミンスクの刑務所の前には、拘束された家族の情報を求めて多くの人が集まっている。

警察の暴力に反対し、工場や病院などでストライキが行われた。ミンスク近郊ジョジナにある国営トラックメーカー「ベラズ」の工場では、数百人の従業員がストに参加した。

さらにミンスクなど複数の都市では、数千人の女性たちが花を持って「連帯の鎖」を作り、警察の暴力に反対した。

このデモには、野党派のマリア・コレスニコワ氏の姿もあった。今回の大統領選では、野党派の先鋒として3人の女性に注目が集まったが、コレスニコワ氏以外の2人はすでにベラルーシを離れている。

そのうちの1人、ヴェロニカ・ツェプカロ氏は投開票の行われた9日にベラルーシを脱出。また、主要対立候補だったスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)も11日にリトアニアに脱出した。

チハノフスカヤ氏は脱出について、子どもたちのために「非常に難しい決断をした」と語る動画をYouTubeに公開している。

政治経験のないチハノフスカヤ氏は、今年5月に政権に批判的だったブロガーの夫が出馬を禁じられ、収監された後に出馬を決めた。

ルカシェンコ大統領にとってはここ数年で最も強力な対立候補となり、投票前には大規模な集会を開くまでに至った。

しかしルカシェンコ氏は、女性はベラルーシを統治できないと一蹴。チハノフスカヤ氏の支持者を、外国に操られた「ヒツジ」とやゆしていた。

チハノフスカヤ氏は、選挙での得票率が10%ほどとされた。その結果について不服を申し立てるため、10日に選挙管理委員会を訪れたところ、7時間にわたって拘束された。

その後、11日朝にはリトアニアに到着していた。

近親者によると、自陣の選挙運動責任者の解放と引き換えに、当局に付き添われて国外に出たという。

11日には、当局に拘束されていた10日に撮影されたとみられる動画が浮上した。その中でチハノフスカヤ氏は、支持者に「法律に従い」、抗議行動に加わらないよう求めるメッセージを、緊張した面持ちで読み上げた。


<解説>警察の暴力の証言相次ぐ ――オルガ・イヴシナ、BBCロシア語

市内や収容施設で警察暴力が横行していると裏づける証拠が、相次いでいる。拘束されているのは反政府活動家だけでなく、多くのジャーナリストや、通りがかりの一般市民も含まれている。

ロシアのニュースサイト「Znak.com」に所属するニキータ・テリツェンコ氏は、3日間にわたる刑務所での恐怖体験を報道した。すでにロシアに戻ったテリツェンコ氏は、収容センターでは人々が互いに重なり合うように床に横たわり、辺りには血や排泄物がプールのようにたまっていたと話している。拘束された人々は何時間もトイレを使うことを許されず、体の向きを変えることも禁じられていたという。

また、腕や脚が折れたり、ひどい打撲傷を負っている人たちも見かけたものの、この人たちも治療を受けるどころか、守衛からさらに殴る蹴るの暴行を加えられていたと報じた。

テリツェンコ氏の証言内容は、ソーシャルメディア上の数々の写真や動画からも確認が取れる。

私自身、ミンスクに住むボーイフレンドに会いに来たというアメリカ人女性から話を聞くことができた。このボーイフレンドは何の理由もなく拘束されたという。抗議に参加していたわけでもなく、家で寝ていたところ、いきなり警察が玄関の扉を蹴破り、外に連れ出されたというのだ。


(英語記事 'Widespread torture' against Belarus protesters