2020年08月14日 12:36 公開

ドナルド・トランプ米大統領は13日、野党・民主党の副大統領候補になることが決まったカマラ・ハリス上院議員について、その生い立ちを理由に「副大統領になる資格がない」とする少数派の極論を、「尊敬されている法学者の意見」としてホワイトハウス会見で取り上げた。ハリス議員に関するこの少数意見は、多くの法学者から否定されており、人種差別的だという批判も高まっている。

トランプ氏はかつてバラク・オバマ前大統領についても、「アメリカで生まれていないので大統領になる資格がない」と根拠なく主張し続けた。

ハリス議員は1964年10月20日、ジャマイカ出身の経済学者のドナルド・ハリス氏(スタンフォード大学名誉教授)と、インド出身の内分泌学研究者シャマラ・ゴパラン=ハリス博士の間に、カリフォルニア州オークランドで生まれた。

国籍についてアメリカは出生地主義を採用している。合衆国憲法修正第14条の冒頭が、「合衆国内で生まれ、または合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である」という、出生地主義の原則を定めている。

さらに大統領になる資格については、憲法第2章第1条第5項が、「出生により合衆国市民である者、または、この憲法の成立時に合衆国市民である者でなければ、大統領の職に就くことはできない」と定めている。

しかし、カリフォルニア州のチャップマン大学のジョン・イーストマン教授は米誌ニューズウィークへの寄稿で、ハリス議員の資格を疑問視した。さらに、保守系法律家グループがこの記事をツイートしたのを、トランプ陣営顧問がリツイートしていた。

トランプ氏は13日の定例会見で、この内容について質問され、「彼女に資格がないというのを今日聞いたばかりだ。ちなみに、あの記事を書いた弁護士は、とても優れた、とても有能な弁護士だ」と答えた。

「あの説が正しいのか、自分にはまったく分からない。副大統領候補に選ばれる前に民主党がそういうことは確認したはずだと思う。けれども、この国で生まれていないから資格がないというなら、それはとても深刻な話だ」

これに対して記者が、ハリス議員がアメリカ国内で生まれたことに疑いはないものの、両親は当時、合法的な永住資格を持っていなかったかもしれないことから、疑問が生じているのだと説明した。

トランプ氏はかつて、オバマ前大統領が「アメリカ国外で生まれた」という陰謀論の拡散に大きく関わった。オバマ氏は「ケニア出身ではないか」といううわさが消えなかったため、ハワイで生まれたと記載された出生証明書を2011年4月に公表するに至った。しかし、トランプ氏はその後も、オバマ氏の出生証明書は「偽造」だと根拠なく主張し続けた。

「Birtherism(出生主義、バーサー主義)」、「Birther(バーサー)」と呼ばれるこの陰謀論は、人種差別的だと批判されている。

「資格がない」説と憲法学者の反論

ニューズウィーク記事でイーストマン教授は、憲法の国籍条項や大統領資格の規定について触れながら、ハリス議員の出生時に両親がたとえば学生ビザで入国していたとするなら、彼女は生まれながらのアメリカ市民と言えないのではないかと主張している。

イーストマン教授は2010年に、カリフォルニア州司法長官に共和党候補として出馬したものの、予備選でロサンゼルス郡のスティーヴ・クーリー連邦検事に敗れた。本選ではハリス氏がクーリー氏を押さえ、州司法長官になった。

イーストマン氏の記事を掲載したことで、ニューズウィーク誌には激しい非難が寄せられているものの、ナンシー・クーパー編集長は13日、記事の内容は「人種差別的なバーサー主義とは無関係だ」として、掲載判断は正しかったと主張した。

一方、カリフォルニア大学バークリー校ロースクールのアーウィン・チェメリンスキー学長は米BCSニュースに対し、イーストマン教授の主張は「心底ばかげている」と批判した。

「修正第14条第1項は、合衆国で生まれた者は誰でも合衆国の市民だと定めている」と、チェメリンスキー教授はメールで書いた。「最高裁は1890年代から、この解釈を維持している。そしてカマラ・ハリスは合衆国内で生まれた」。

ハーヴァード大学の憲法学教授で、トランプ大統領に対して終始批判的なローレンス・トライブ教授は、イーストマン氏の説について「ナンセンスよりひどい。ごみだ」とツイート。ハリス議員の資格に疑念を生じさせるその意見は、「悪意に満ちて、法的な根拠は何もない。人種差別的なバーサー主義の復活だ。こんなものに紙面や放送時間を割くマスコミは恥を知れ」と非難した。

カリフォルニア州にあるロヨラ・ロースクールのジェシカ・レヴィンソン教授はAP通信に対して、「この正体について、正直に語りましょう。両親がこの国の国民ではなかった両親を持つ有色人種の候補に対して、お約束のように使われる、人種差別的なお約束です」と話した。

オバマ氏に対する「バーサー」陰謀論をしきりに広めたトランプ氏は、大統領選の投票日を控えた2016年9月、バーサー陰謀論について記者団の質問に答えて、「自分が終わらせた。オバマ大統領はアメリカで生まれた。以上だ」と、陰謀論を終わらせたのは自分だと主張した。

さらにこの年の共和党予備選では、最後まで争ったテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)について、アメリカ人の母親とキューバ出身の父親の間にカナダで生まれたから、大統領資格がないと主張していた。

(英語記事 Trump stokes 'birther' theory about Kamala Harris