2020年08月15日 12:18 公開

東欧ベラルーシで9日に投開票された大統領選で、6期目当選を決めた現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)を批判し、隣国リトアニアへの脱出を余儀なくされた対立候補のスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)が、全土で平和的な抗議を行うよう呼びかけている。

チハノフスカヤ氏は「傍観していてはいけない」と述べ、権力移譲を求める広範な協議会を開くよう提案した。

ルカシェンコ大統領は1994年の就任以来、実権を握ってきたが、6期目当選を果たした今回の大統領選をめぐっては、欧州連合(EU)やアメリカから非難が上がった。

ルカシェンコ氏の退陣を求める抗議デモはベラルーシ全土で起きている。

抗議運動は14日に6日目を迎え、国営工場でのストライキは拡大した。

こうした中、欧州各国の外相は緊急ビデオ会議を開き、「暴力と改ざん行為」の責任を負うとしたベラルーシ当局者に対し、新たな制裁措置を準備することで合意した。

大統領選後、約6700人が逮捕された。その多くは拷問を受けたと証言している。

人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルは、証言からは「拷問がまん延している」ことがうかがえると指摘した。

チハノフスカヤ氏の提案

チハノフスカヤ氏は、票が適切に集計された場所では自分は60%~70%の支持を得ていたと主張。15日と16日に「平和的な大規模集会」を開催するよう、各市長に呼びかけている。

11日に隣国リトアニアに到着したチハノフスカヤ氏は、ビデオメッセージの中で、ベラルーシ当局は暴力行為をやめて「対話をする」べきだと述べた。また、自分の支持者たちは投票の再集計を求めるオンライン請願書に署名すべきだとした。

別のメッセージでは、「私たちが多数であり、この国が私たちや国民のものであり、1人の男のものではない」ことを示しているとして、ベラルーシの人々を称賛した。

そして、次の内容を呼びかけた。

  • 権力の移譲を確保するための、「市民社会活動家、高く評価されているベラルーシ人や専門家」で構成された調整協議会を設置する
  • 産業企業や労働組合、その他の市民社会団体の関係者を巻き込む
  • 国際社会と欧州諸国が、ベラルーシ当局との対話を支援する
  • 当局は勾留した人全員を解放し、機動隊や軍隊を路上から排除し、暴力行為を支持した人物を訴追する

政治経験のないチハノフスカヤ氏は、今年5月に政権に批判的だったブロガーの夫が大統領選への出馬を禁じられ、収監された後に立候補を決めた。

リトアニアへ脱出する前に録画しユーチューブに投稿したとみられるビデオでチハノフスカヤ氏は、自分が自分の力を過信していたと語っていた。

「この選挙戦で本当に強くなり、たくましくなり、おかげでどんなことがあっても立ち向かえると思っていたが、実は私は今も前と同じ弱い女なんだと思う」

だが14日に発信したメッセージは、出国直後の発言とはかけ離れた内容だった。

得票率80%と10%

中央選挙管理委員会が発表した大統領選の結果によると、ルカシェンコ氏の得票率は80.1%、対立候補のチハノフスカヤ氏は10.12%だった。

チハノフスカヤ氏はその結果について不服を申し立てるため、10日に選挙管理委員会を訪れたところ、7時間にわたって拘束された。

その後、隣国リトアニアへ脱出した。

「拷問」で身体にあざ

首都ミンスクにあるオクレスティナ収容センターからは、14日も逮捕された抗議者たちの解放が続いた。

解放された人々には、拷問で身体にあざができたり腫れあがったりした様子がうかがえる。

ある男性はBBCに身体のあざを見せ、「当局は容赦なく、猛烈に人々を殴り、誰でも逮捕する。私たちは夜通し庭に立たされた。女性が殴られている音が聞こえてきた。こんな残虐行為は理解できない」と述べた。

ユーリ・カライエフ内相は、抗議活動中に大勢が負傷したのは自分の責任だと述べ、暴力に巻き込まれた人には謝罪したいと語った。

ロシアのニュースサイト「Znak.com」に所属するジャーナリスト、ニキータ・テリツェンコ氏は、3日間にわたる刑務所での恐怖体験を報道した。すでにロシアに戻ったテリツェンコ氏は、収容センターでは人々が互いに重なり合うように床に横たわり、辺りには血や排泄物がプールのようにたまっていたと話している。拘束された人々は何時間もトイレを使うことを許されず、体の向きを変えることも禁じられていたという。

「やめてくれと懇願したが、拷問が続いた」

セルジー氏は9日に拘束され、機動隊に車両へ放り込まれた。そして拷問が始まったという。

当局からは、デモの主催者が誰なのか聞かれ続けたという。そのような人物はいないと答える度にスタンガンで感電させられた。何か言おうとする度に棒で殴られたと話す。

「最も恐ろしかったのは、彼らが限界というものを知らないことだった」

「耐え難い痛みだった。やめてくれと懇願したが、拷問は続いた」

数時間もの拷問の後、セルジー氏は息をするのがやっとだった。その後、当局は救急車を呼び、セルジー氏は病院へ搬送された。そのままにされていたら、悪名高いオクレスティナ収容センターから生き延びることはできなかったかもしれない。

多くの人がさらに悪質にたたかれ、収容センターに残っている人々に対する不当な扱いは続いている。収容センターの外にいるボランティアは14日、BBCスタッフにおとなしくするよう求めてきた。また、周囲の人々に対し、勾留された人々を支持するために拍手したり声を上げたりしないよう促した。そうしなければ、施設内に残っている人々が報復としてたたかれることになると話した。

選挙のやり直し求めて抗議

ベラルーシの人々は14日も複数の都市で抗議を続けた。西部フロドナでは労働者が管理事務所の外に集り、新たな選挙を行うよう要求した。首都ミンスクにある自動車メーカーMAZの工場には自動車工場の労働者が大勢集まった。ほかの多数の工場でもストライキがあったとの報告が上がった。

ミンスクでは、抗議者たちが「臆病者ではない。家畜の群れではない。単なる一般市民ではない。我々はMTZ(ミンスクトラクター工場)の労働者だ」と書かれた横断幕を掲げた。これは、ルカシェンコ大統領が抗議者を「臆病者」だと呼んだことに反発したもの。

EUが対ベラルーシ制裁で合意

欧州各国の外相は14日、制裁の対象となる人物のリストを作成することで合意した。9日の投票を「自由でも公正でもない」と非難するEUは、以前もベラルーシに対して制裁を科したが、ルカシェンコ氏が4年前に政治犯を釈放した際に解除していた。

チェコのアンドレイ・バビシュ首相は「国際的なオブザーバーが参加して、自由で透明性の高い選挙がベラルーシで開催されるまで」制裁が科されるべきだと述べた。ポーランドは市民社会を支援するため、ベラルーシに対するビザの制限を緩めると約束している。

EUの緊急会議に先立ち、ベラルーシのウラジーミル・マケイ外相は、同国は他国との「建設的で客観的な」協議を行う準備ができていると述べていた。

ロシアは14日、ベラルーシで先月から拘束されていたロシア人雇い兵32人の身柄が、ベラルーシから引き渡されたと明かした。ベラルーシ当局は先月末、ロシア人雇い兵が「選挙キャンペーン中に情勢を揺るがす」ために入国した疑いがあるとしていた。ロシア側はベラルーシは移動の経由地にすぎないとして疑惑を否定していた。今回の解放の詳細はわかっていない。

(英語記事 Exiled leader calls weekend of protests in Belarus