仲村覚(日本沖縄政策研究フォーラム理事長)

 米国のシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が7月末に発表した「日本における中国の影響力」と題する報告書が注目されている。

 自民党の二階俊博幹事長と今井尚哉(たかや)首相補佐官が、安倍晋三首相の対中政策に大きな影響を与えている「親中派」のキーマンとして名指しされている。ただ、このことはメディアで大きく報じられたが、「中国の沖縄工作」に触れた部分はあまり知られていない。

 約50ページに及ぶ報告書は、2018年から2年をかけ、約40人の専門家にインタビューするなどしてまとめられた。その中では、「中国の沖縄工作」についても多くの文字数が割かれている。

 日本の安全保障上の重要懸念の一つとして、沖縄の人々が日本政府や米国に対する不満を理由に「独立を宣言」する可能性を指摘している。中国の最重要ターゲットも、米軍基地の多い沖縄であり、外交や偽情報、投資を通じて、沖縄独立を後押ししているという。

 さらに、日本の公安調査庁が2015年と17年の年次報告『内外情勢の回顧と展望』で、「中国の影響力により沖縄の世論を分断する可能性の問題を取り上げた」とし、その内容を紹介している。まずは『内外情勢の回顧と展望』を改めて確認してみよう。

 2017年版では「在日米軍施設が集中する沖縄においては、『琉球からの全基地撤去』を掲げる『琉球独立勢力』に接近したり、『琉球帰属未定論』を提起したりするなど、中国に有利な世論形成を図るような動きも見せた」と記されている。さらに「『琉球帰属未定論』を提起し、沖縄での世論形成を図る中国」というコラムでは、次のように解説している。

 人民日報系紙「環球時報」(8月12日付け)は、「琉球の帰属は未定、琉球を沖縄と呼んではならない」と題する論文を掲載し、「米国は、琉球の施政権を日本に引き渡しただけで、琉球の帰属は未定である。我々は長期間、琉球を沖縄と呼んできたが、この呼称は、我々が琉球の主権が日本にあることを暗に認めているのに等しく、使用すべきでない」などと主張した。
 既に、中国国内では、「琉球帰属未定論」に関心を持つ大学やシンクタンクが中心となって、「琉球独立」を標ぼうする我が国の団体関係者などとの学術交流を進め、関係を深めている。こうした交流の背後には、沖縄で、中国に有利な世論を形成し、日本国内の分断を図る戦略的な狙いが潜んでいるものとみられ、今後の沖縄に対する中国の動向には注意を要する。


米有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が発表した調査報告書「日本における中国の影響」の表紙
米有力シンクタンク
「戦略国際問題研究所(CSIS)」が発表した
調査報告書「日本における中国の影響」の表紙
 CSISの報告書は、慶応大教授の言葉を借りて、「中国は日本に影響を与えるために間接的な方法を使用している。資金調達を通じて沖縄の動きに影響を与え、沖縄の新聞に影響を与えて沖縄の独立を推進し、そこに米軍を排除するなどの隠れたルートがある」と指摘した。その上で、「中国は日本に、文化外交、二国間交流、国営メディア誘導などの温和な影響活動と、強制、情報キャンペーン、汚職、秘密の戦術などのより鋭くより悪質な活動の両方を展開している」と結論付けている。

 筆者もこの報告にあるように、沖縄の琉球独立工作があらゆる面で進められていると認識している。特に、10年9月に起きた尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖での中国漁船衝突事件直後から急加速してきた。