
2020年08月18日 15:54 公開
大統領選の結果をめぐり退陣要求にさらされている東欧ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65)は17日、首都ミンスクの工場を視察した。ルカシェンコ氏の再選をめぐり怒りが高まる中、労働者たちからは「出て行け」などと野次が飛んだ。
ルカシェンコ大統領はこの日、労働者にむけた演説で、批判されている自分の6選を自己弁護した。
「選挙は済んだ。あなた方が私を殺すまで、ほかの選挙はない」
一方で、国民投票を実施し、「憲法に従って私の権限を引き渡す」意思はあると述べた。しかし、「圧力や、街頭での抗議によって権限を引き渡しはしない」と強調した。
労働者からブーイング
ルカシェンコ氏は工場で話す間、労働者からブーイングや野次を浴びせられた。
BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ記者は、ルカシェンコ氏が野次られる動画をリツイートした。
「ルカシェンコが、自分に対する国民の怒りがどれほど強いか信じていなかった(あるいは信じたくなかった)のだとしたら、今は確実に感じ取っているはずだ」
https://twitter.com/BBCSteveR/status/1295291253022752768
9日の大統領選では、1994年から実権を握ってきたルカシェンコ大統領が6期目当選を決めた。中央選挙管理委員会によると、ルカシェンコ氏の得票率は80.1%、対立候補のスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏(37)は10.12%だった。
しかし、この選挙結果は不正だと批判する声が高まっている。
チハノフスカヤ氏は、自分は実際には60~70%の票を得たと主張している。
暫定大統領に就くと示唆
現在はリトアニアに脱出しているチハノフスカヤ氏は、暫定大統領を務める可能性を示唆している。
同氏は17日にビデオメッセージを公開。平穏と正常を取り戻し、政治犯を解放し、新たな選挙に備えるために「国家の指導者」になる準備が出来ていると述べた。
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複数の国営工場でストライキが起きており、多くの従業員が大統領に反対する行進に加わっている。この動きは国営テレビにも広がり、17日にはテレビ局スタッフがストライキを起こした。
26年にわたり政権を握るルカシェンコ氏は、隣国ロシアと緊密な関係を維持してきた。ベラルーシはエネルギー供給においてロシアに大きく依存している。
ルカシェンコ氏に対する圧力
選挙後、警察当局は抗議行動に暴力で対応している。また、拘束された人たちが拷問を受けたとの証言もある。こうした事態が、16日の大規模な抗議集会を巻き起こした。
地元の独立系ニュースサイトTut.byによると、16日の抗議集会は「独立後のベラルーシ史上最大規模」だった。
同日には親政府派の集会も開かれた。公式には約6万5000人が参加したとされているが、非公式には約1万人とされる。一方で、野党集会には約10万人から約22万人が集ったとの非公式データがある。
この1週間で、警察との衝突で数百人が負傷し、2人が死亡した。また、約6700人が逮捕された。
17日には、ミンスクの管弦楽団が歌で抗議した。
https://twitter.com/BBCWillVernon/status/1295314918976163840
ベラルーシのイーゴリ・リェシェニャ駐スロヴァキア大使は、デモ隊との連帯を表明した。
リェシェニャ大使はBBCに対し、「私はベラルーシとベラルーシ国民を代表している。憲法によると、それが唯一の力の源だ」と述べた。
国際社会の反応
欧州連合(EU)は19日に緊急ビデオ会議を開く予定だ。
欧州各国の外相は先週、「暴力、弾圧、選挙結果の改ざん」の責任を負うベラルーシ当局者に対し、新たな制裁措置を準備することで合意した。
イギリスは17日、「不正な」選挙結果は受け入れないとした。ドミニク・ラーブ英外相は「世界はベラルーシ当局による暴力行為を見てぞっとした」と述べた。
アメリカのドナルド・トランプ大統領も同日、ベラルーシでの「恐ろしい状況」の行方を見守っていると述べた。
一方、ルカシェンコ氏はロシアのウラジミール・プーチン大統領に助けを求めた。
ルカシェンコ氏によると、プーチン氏はベラルーシが外部からの軍事的脅威を受けた場合に、包括的な援助をすることで合意したという。
両首脳は16日に2度目の協議を行った。その中で、ロシア政府は「ベラルーシの状況について、同国が外部から圧力を受けていることを考慮して」話し合ったとしている。