2020年08月19日 13:40 公開

アメリカの郵便公社は18日、かねて進めていた新政策を停止すると発表した。この新政策は、11月の大統領選の郵便投票を妨害すると批判が出ていた。

郵便公社はここ数カ月、ルイス・デジョイ長官の支持の下でコスト削減策と称するさまざまな改革に手をつけていたが、長官はこの日、一連の政策による変更点を元通りにすると述べた。

デジョイ長官はこの件に絡んで議会での証言を控えているほか、少なくとも20州が長官を起訴する準備を進めている。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を受け、大統領選では記録的な数の有権者が郵便で投票する見通し。しかし、郵便公社への補助金をめぐっては激しい議論が展開されている。

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何が変わった?

デジョイ長官が行った新政策には、郵便ポストの撤去、配達サービスの縮小、仕分けセンターの閉鎖などが盛り込まれていた。

しかしデジョイ氏は今回、郵便局の営業時間は短縮しない、ポストや仕分け機は撤去しないなど、新政策の一部を中止すると明らかにした。

また、時間通りの配達を確実にするため、残業手当も引き続き保障すると述べた。

「郵便投票に影響があるかもしれないという見た目さえ避けなくてはいかない。そのため、選挙が終わるまで一連のイニシアチブを停止する」と、デジョイ氏は述べた。

長官はドナルド・トランプ大統領の忠実な支持者で、トランプ氏が今年5月に指名した。これまで郵便事業に関わった経験はなく、共和党に巨額献金を重ねていたことで知られている。

新政策、野党や労組から大きな批判

大統領選を前に、アメリカで最も利用者の多い政府機関が政治化され、一番の議題になっていることについて、アメリカ国内では議論が行っている。

バラク・オバマ前大統領は先週末、トランプ大統領が郵便サービスを「積極的に機能不全に」しようとしていると批判した。

一方、デジョイ長官の支持者は、郵便公社の負債を理由に挙げている。同公社は十年にわたる郵便物の減少により、1600億ドル(約16兆9000億円)の負債を抱えている。

しかし、20万人以上が加入するアメリカ郵便労組のマーク・ディモンスティーン委員長はフォックスニュースの取材で、新政策のせいでむしろ「郵便配達に実際に遅れが生じている。未配達の郵便物がたまってしまっている。利用者も(中略)従業員も実感していることだ」と話した。

こうした中、野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は16日、郵便事業を保護する法案を審議するため、休会中の連邦下院を再開し、今週後半にも採決する方針を示した。

デジョイ長官は21日に共和党優勢の上院で、24日に民主党優勢の上院で証言する予定だ。

トランプ大統領は何と?

トランプ氏は先週、郵便公社に対する追加の補助金を認めない考えを示した。大統領選で郵便投票が増えることで詐欺が横行し、野党・民主党に有利になると、根拠のない主張を展開している。

また先には、郵便投票は「不正確で詐欺まがいの」結果を招くとして大統領選の延期を示唆した。ただし、大統領にその権限はない。

ロイター通信によると、アメリカでは郵便投票は珍しいものではない。2016年の前回大統領選では、およそ4人に1人が郵便で投票した。

反対派は、1人の有権者が何度も郵便投票した上で、投票所でも投票で来てしまうと指摘している。しかしさまざまな国家・州レベルでの研究で、そうした詐欺が横行しているという証拠は出ていない。

それでも詐欺はまれに行われているという。ブレナン司法センターが2017年に行った調査によると、アメリカの投票詐欺の割合は0.00004~0.0009%の間だという。


<解説>トランプ氏の郵便政策Uターン、なぜ? ――アンソニー・ザーカー北米記者

トランプ氏は1週間前、郵便公社への追加の補助金には全く興味がない、郵便投票の業務に使われるだけだと話していた。

新型ウイルスの感染リスクを抑えるために郵便投票の規模を拡大することについて、トランプ氏はほとんど根拠を示さないまま反対し続けている。

しかし今週に入って、大統領は「郵便局を救いたい」とツイート。ミネソタ州の集会では郵便サービスを「強化する」と述べた。

そして今、郵政長官はポストの撤去や配達の縮小をやめると発表した。

一体何が変わったのか?

郵便サービスは、公共サービスの中でも特に人気があることが分かったのだ。モーニング・コンサルトの世論調査では、アメリカ国民の80%が郵便サービスを評価している。高齢者は処方薬を郵便で受け取っているし、地方に住む人々にとっては外の世界へとつながるライフラインだ。

デジョイ長官の新政策は、長期的な改革における勘違いだったのか、それとも左派が疑っているような陰謀の一部だったのか。どちらにせよ、ホワイトハウスがこの危機を乗り越える方法はたったひとつ、撤退しかなかった。


(英語記事 US Postal Service halts controversial changes