2020年08月21日 12:15 公開

11月の米大統領選に向けて18日、野党・民主党の大統領候補に正式指名されたジョー・バイデン前副大統領は、主な争点についてどういう姿勢なのか。

バイデン氏が昨年4月に、2020年大統領選に出馬すると発表した際、自分は2つのことのために戦うと宣言した。「この国を造った」労働者のために、そして国の分断を解消できる共通価値観のために。

アメリカは今、新型コロナウイルスから人種差別まで、様々な問題を抱えている。その世相を背景にバイデン氏は、労働者に新しい経済機会を創出し、環境保護を復活させ、国民にあらためて医療を提供し、諸外国との同盟関係を元に戻すと公約している。

ここでは8つの主要争点について、バイデン氏の立場を短くまとめた。

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全国的な検査・追跡

アメリカが直面する最も喫緊の課題について、バイデン氏は国民全員に無料検査を提供し、全国的な接触者追跡を実現するため10万人を雇用するという計画を立てている。

全米の各州にそれぞれ少なくとも10カ所の検査施設を設置し、連邦政府機関に人員や能力の提供を要請し、連邦政府の専門家を通じて従来より確固たるガイダンスを国民に提供する方針だ。

各州の知事は全員、住民にマスクの着用を義務づけるべきとしている。

連邦政府の権限拡大を警戒する有権者は、これを過剰な対応だと受け止めるだろうが、バイデン氏と民主党は総じて、連邦政府の役割とはそうしたものと考えている。


最低賃金を引き上げ、環境に優しいエネルギーに投資

コロナ禍の直接的な打撃に対応するため、バイデン氏は「必要なだけ」の公的資金を拠出して、中小零細企業へのローンを延長し、一般家庭への直接給付を拡大すると約束している。

この提案の中には、社会保障給付の月額200ドル増額、トランプ政権下の減税策の撤回、連邦政府ローンについて学生ローン1万ドルの免除などが含まれる。

「Build Back Better(より良く再建)」と題されたバイデン氏の経済政策は、民主党の伝統的な2つの支持基盤を同時に満足させようとしている。2つの支持基盤とは、若年層とブルーカラー労働者のことだ。

バイデン氏は、連邦最低賃金を時給15ドル(約1600円)に引き上げるべきという動きを支持している。これは若者に人気で、2020年の民主党にとって目玉政策になりつつある。同時に、民主党の左派接近を示している。

バイデン氏はさらに、環境に優しいグリーン・エネルギーに2兆ドルを投資したい方針だ。環境に優しい製造業の促進は、製造過程に関わる組合に加入する労働者の支援につながると主張している。

アメリカ製品の購入促進に連邦予算4000億ドルの拠出も公約するほか、新規交通事業に「バイ・アメリカン(アメリカ製品購入)」法を徹底させると約束している。バイデン氏はかつて、北米自由貿易協定(NAFTA)支持を攻撃されていた。NAFTAについては、雇用の海外流出につながるという批判もある。

バイデン氏の最新の計画では、アメリカ製の素材やサービス、研究や技術に連邦政府による投資3000億ドルを求めている。


刑事司法改革、少数者コミュニティー視点

人種差別に抗議するデモが今年になって全米で相次いだ事態を受けて、バイデン氏はアメリカには人種差別があると思うと断言した。その上で少数者を支援するため、幅広い経済・社会対策が必要だと述べている。

バイデン氏の「より良く再建」計画の大きな柱となっているのが、300億ドル投資基金を通じた少数者の事業支援だ。

刑事司法に関しては、1990年代に掲げて厳しく批判された厳罰主義から大きく距離を置いている。今では、微罪での収監を減らし、司法制度における人種や性別や収入に対する格差を是正し、出所者の社会復帰を支援することを重視している。実刑判決を減らし、少なくとも何年は服役しなくてはならないという州法の規定を撤廃し、大麻所持や使用を合法化し、大麻関連の犯罪歴を帳消しにし、死刑を廃止するよう、各州政府に求めると共に、その動機づけとして総額200億ドルの助成金事業を立ち上げる方針だ。

その一方でバイデン氏は、警察予算の削減には反対し、むしろ水準維持のため予算の使途を限定すべきだと主張している。警察予算の一部は、精神医療などの社会福祉に振り分けるべきだとするほか、地域ぐるみの防犯事業に新たに3億ドルを投資すべきだとしている。


気候変動対策のパリ協定に復帰

バイデン氏は気候変動を、人類存亡の危機と呼んでいる。気候変動対策の国際的枠組み、パリ協定に復帰し、諸外国と共に温室効果ガス削減への取り組みを加速させると話している。

トランプ大統領が脱退したこのパリ協定で、アメリカは温室効果ガスを2025年までに2005年比で最大28%削減すると約束していた。

民主党内の左派は、気候変動対策と雇用促進の包括案「グリーン・ニューディール」の実現を強力に求めているが、バイデン氏はこれには同意していない。その一方で、環境保護技術の研究に連邦予算から10年間で1兆7000億ドルの投資を提案している。「グリーンエネルギー」製品の製造業で雇用を創出するという方針は、包括的な経済対策案の一部でもある。

バイデン氏は、2050年までにアメリカの温室効果ガス排出をゼロにすることを目指すと表明。この、2050年までに炭素排出を実質ゼロにする目標は、昨年60カ国以上が掲げたもの。ただし、2大排出大国の中国とインドはまだ約束していない。


アメリカの国際的評価を復活 もしかすると中国に対抗

バイデン氏は、大統領となった暁にはまずは国内問題に集中すると書いている。とは言うものの、上院外交委員会の委員長を務め、副大統領としても幅広い外交活動を展開したバイデン氏が、諸外国とのかかわりを重視する多極主義の価値観に変化の様子はみられない。これは、トランプ氏の公然たる一極孤立主義とは対照的だ。

北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係をはじめ、アメリカと諸外国との関係修復も約束している。トランプ氏はNATOを繰り返し批判し、アメリカの拠出金を減らすと共に他の同盟国の負担増を要求してきた。

バイデン氏は中国について、不公平な環境対策や商慣行の責任をとらせるべきだと主張している。ただし、一方的な制裁関税を科すのではなく、他の民主国家と連携し、中国が「とても無視する余裕のない」国際的な連立体制を作っていくと提案している。この具体的内容については、まだ明示していない。


オバマケア拡大

バイデン氏は、自分が副大統領を務めたオバマ政権が成立させた医療保険制度改革、通称「オバマケア」による公的医療保険の仕組みを拡大し、国民の約97%に医療保険を保証する方針を示している。

民主党左派が希望する国民皆保険の導入には至らないものの、全国民に公的医療保険に加入する機会を提供する方針。この公的医療保険は、すでに高齢者向けにある公的保険「メディケア」に似た仕組み。バイデン氏はさらに、メディケアそのものも対象年齢の下限を65歳から60歳に引き下げて、加入枠を拡大する方針という。

超党派団体「責任ある連邦予算委員会」は、バイデン氏のこの医療保険計画には10年間で計2兆2500万ドルかかると試算している。


トランプ政権の政策撤廃

バイデン氏は就任から100日以内に、メキシコとの国境で幼い子供を両親と引き離すトランプ政権の方針を撤廃すると公約している。同様に、難民申請の件数制限を撤廃し、イスラム教徒が多数を占める一部の国からの渡航禁止を撤廃する方針。

さらに、乳幼児としてアメリカに連れられ不法入国してそのまま成長した、いわゆる「ドリーマー」たちについて、オバマ政権が定住を認めた姿勢に立ち返り、「ドリーマー」を保護し、連邦予算からの学費援助も認めるとしている。


小学校以前の学習機会を全国民に提供、大学の無料化

教育政策については党内左派に大きく接近し、学生ローンの返済免除、大学の学費無料化拡大に加え、小学校以前の学習機会を全国民に提供するなどの施策を支持している。

こうした教育改革の財源は、トランプ政権の減税措置を撤回することでまかなう方針という。

(英語記事 Joe Biden: Where does the US presidential hopeful stand on key issues?