上西小百合(前衆院議員)

 新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収まらない。政府は「第2波」到来や緊急事態宣言を表明する様子が見られないが、深刻な状況に陥っていることは、国民の誰しも肌で感じていることだろう。

 地方の情報は全国的に報道されづらいため、どうしても伝わりにくい面はあるが、腰の重い政府を見て、日本全国で多くの自治体職員と首長が市民の生命や財産を守るためにコツコツと努力を続けている。

 ただ残念なことに、ここぞとばかりにメディア戦略を重要視しすぎるがゆえに、空回りして市民の怒りを買う自治体の首長もいる。東京都の小池百合子知事や大阪府の吉村洋文知事らがその典型だろう。2人は密を避けるべきこのご時世にもかかわらず、日々多くのメディアを集めて会見を行っている。

 内容的に「役所から事務的に発表させる方が情報として伝わりやすいのでは?」と思うようなことまで喜々として自ら発信し、もはや次の選挙対策につながるPRに余念がないようにしか見えない。

 そんな中、最近やらかしがちなのが吉村氏だ。コロナ以前では全国的にほぼ無名だった彼が、国や東京都との対比でメディアに連日取り上げられるようになり、一躍時の人となった。ここで誠実に、静かにコツコツと府民の命と財産を守るべく尽力していれば、彼の評価は今ほど下がらなかっただろう。

 だが、最近の吉村氏は「ヒーローシンドローム」に陥るがごとく、はしゃぎ出してしまったように感じられる。最近の行動を見るに、まるで「何でもいいからメディア露出すればいいんだよ。テレビに出ていさえすれば、府民は頑張っていると言ってくれる」と述べんばかりだ。

 実際のところ、大阪府民の多くは吉村氏と彼が代表代行を務める大阪維新の会に対し、「何をしてくれたか、具体的に聞かれるとよく分からないが、維新は頑張っている気がする」という感想を抱いている。そのためコロナ以前であれば、大阪限定という条件ならこの手法がまかり通りそうな状況ではあった。

 しかし、最近では、世間一般的に考えてリコールが出されてもおかしくないほどの「やらかし」を連発し、人気絶頂の雰囲気にも陰りが出始めた。その「やらかし」の一つが、吉村氏自らが率先して打ち出した感染状況を判断する府独自の基準「大阪モデル」の度重なる基準変更だ。

 京都大ⅰPS細胞研究所の山中伸弥教授も、5月23日に行われた最初の基準変更に対し「結果を見てから基準を決める。科学でこれをすると信頼性が揺らぎます。大阪府民として非常に心配です。人は権力や上司に忖度するかもしれませんが、ウイルスは遠慮ありません」と自身の新型コロナ情報発信サイトで科学者としての危機感をあらわにした。
新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向け、共同研究と検査体制の充実を図る連携協定を結び、会見を開いた京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長(左)と大阪府の吉村洋文知事=2020年6月12日、大阪府庁(渡辺恭晃撮影)
新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向け、共同研究と検査体制の充実を図る連携協定を結び、会見を開いた京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長(左)と大阪府の吉村洋文知事=2020年6月12日、大阪府庁(渡辺恭晃撮影)
 その後、7~8月に感染者が爆発的に増え、大阪モデルもついに「黄信号」となり、次はいよいよ「赤信号」に移行するかと思われたが、吉村氏は新たな基準変更で「黄信号ステージ2」を設定するという暴挙に出た。

 大阪では、与党である維新の元に「次の選挙で応援させていただきます。ですのでどうか」と多くの経済界・業界団体が陳情に来る。経済的な事情のため、切羽詰まるまでは赤信号なんて出したくない気持ちは分かる。しかし、それならばもう大阪モデルなど捨ててしまった方がよいだろう。役に立たないモデルを掲げられるより、国の基準に合わせた方が府民の混乱も避けられる。