2020年08月24日 12:21 公開

ドナルド・トランプ米大統領は2016年、ひとつのシンプルなフレーズを掲げて勝った。「アメリカをまた偉大にしよう(Make America Great Again)」と。

2期目を目指すトランプ氏は、新型コロナウイルスによる国民の健康と経済への被害に直面している。そして、有権者は現職大統領のこれまでの4年間の記録を、はかりにかけることになる。

今回の選挙でトランプ氏は、経済再生と雇用創出、通商利益の保護、そしてこれまでの強硬な移民政策の維持を掲げている。

ここでは8つの主要争点について、トランプ氏の立場を短くまとめた。

<関連記事>


コロナ禍で苦しむ経済を再生する

トランプ大統領は「アメリカ第一」主義を掲げ、雇用や製造業をアメリカ国内に取り戻すと主張し続けてきた。

最初の大統領選では、勤労世帯への大規模減税、法人税の引き下げ、通商協定の見直し、アメリカの製造業の復活などを約束した。

公約の一部については、実現している。

この4年間で、企業に対する様々な連邦法の規制を撤廃し、法人税や所得税を引き下げ、国内で作られる製品を優遇する大統領令に署名してきた。

トランプ氏が大統領に就任した2017年1月以降、アメリカの製造業は48万人以上の雇用を増やした。ただし、アナリストの間には、製造業の成長は失速しつつあり、関税などトランプ氏による関連政策は、それにかかわる構造的な問題に対応できていないという意見もある。

トランプ氏はさらに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が終われば経済はすぐに元の勢いを取り戻すと予想してきた。これに対して、トランプ氏の新型ウイルス対応はむしろ経済に長期的な悪影響を与えたという批判もある。

中国「依存」を終わらせアメリカの製造業を守る

トランプ氏はまず最初に、アメリカは自国の経済利益に集中すべきだと主張して選挙戦を展開した。ただし、「アメリカ第一」は「アメリカ単独」を意味するわけではないと釈明している。

貿易については、中国に対して強硬路線をとってきた。外国からの競争に対しては、アメリカ国内の製造業を守る方針をとっている。この2つが今も、トランプ氏の貿易政策の柱だ。

大統領として最初の4年間でトランプ大統領は、複数の貿易協定についてアメリカの関わり方を変更してきた。たとえば米・カナダ・メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)など、アメリカに不公平だと考える協定を再交渉するか、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定のようにきっぱり離脱するなどしてきたし、それを成果として協調してきた。

2016年の大統領選では、アメリカの貿易赤字を直すと公約。確かに貿易赤字は2019年に、6年ぶりに減少した。ただし、これがアメリカ経済にとって改善なのかどうかは、エコノミストの間で意見が分かれている。

中国と続けている貿易戦争では、年間計5000億ドル相当に近い規模の輸入品に追加関税を課すことになった。両国の今年の「第1段階」交渉では、ほとんどの関税がそのまま残った。

8月には、「中国への依存を終わらせる」として、中国国内から生産拠点を移動させるようアメリカ企業に呼びかけ、引き換えに税控除など優遇措置を適用すると提案した。

トランプ氏はさらに、欧州連合(EU)からの輸入品(鉄鋼からフランス産ワインまで)に関税を課し、ブラジルとアルゼンチンからの鉄鋼・アルミ製品に追加関税をかけた。最近では、カナダの一部アルミ製品についても関税を復活させた。

「アメリカ第一」、アメリカの国家主権をあらためて確立する

貿易政策と同様、トランプ氏はアメリカの外交政策でも「アメリカ第一」を推進すると公約した。

ホワイトハウスいわく、それはつまり国の安全保障と繁栄の実現を焦点に、「アメリカの国家主権をあらためて確立するほか、すべての国が自国の未来について自己決定権を再確立する」という意味になる。

それは実践では、具体的にどういう行動につながったのか。

この結果、アメリカは気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱したり、パンデミックの最中に世界保健機関(WHO)から脱退したりした。

トランプ氏はこのほか、様々な同盟関係に異を唱えている。たとえば、北大西洋条約機構(NATO)については、他の加盟国に防衛予算を拡大するよう圧力をかけ続けている。

加えて最近では、在外駐留米軍を削減するという公約を繰り返している。現在は就任時点とほぼ同レベルになっているが、さらにドイツやアフガニスタンなどから、駐留米軍を撤退させる方針という。

こうした動きについて、伝統的にアメリカと親しい同盟諸国との関係を悪化させる一方で、北朝鮮やロシアのような敵国には融和的だという批判が相次いでいる。

外交分野では成功もしている。最近では、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化で橋渡し役を務めた。

さらに、武装勢力イスラム国(IS)の指導者アブ・バクル・アルバグダディ容疑者や、イランの要人カセム・ソレイマニ司令官の殺害を、自分の成果として強調している。

壁を建てて移民を減らす

アメリカに入ってくる移民の数を減らす。これこそが、この大統領の政治活動における根本テーマだ。

再選を目指す今、アメリカとメキシコの間の壁建設を続けると公約している。前回選挙で公約の目玉だった壁は、約1200キロのうち716キロ分について予算を確保してある。

永住権が得られるグリーンカードを申請者に抽選で提供する「移民多様化ビザプログラム」については、撤廃を公約している。先に移住している家族の縁をたどり大勢がアメリカに移民する、いわゆる「連鎖移民」も廃止するとしている。代わりに、今後は「能力主義」の移民制度に切り替える方針という。

トランプ政権は、乳幼児として大人に連れられてアメリカに不法入国し、そのまま定住した若者約65万人(いわゆる「ドリーマー」)について、市民権獲得の道を開いたオバマ前政権の「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」を撤廃しようとした。しかし、今年夏には連邦最高裁が、DACA撤廃は違法と判断を下している。

薬価引き下げ、オバマケアを全廃する

トランプ氏は前回選挙で、オバマ政権が成立させた医療保険制度改革の「医療費負担適正化法」、通称「オバマケア」の撤廃を公約した。

完全撤廃には至っていないものの、トランプ政権はこれまでにオバマケアを部分的に解体してきた。医療保険に加入しない個人には課税するという、個人の保険加入義務も廃止された。

トランプ氏はさらに、アメリカ国内の薬価を引き下げると約束。今年7月には、値引きや海外の安価な薬の輸入を認める施策を導入した。ただし、業界消息筋の間では、これにはあまり効果は期待できないという意見もある。

このほか、2017年にはオピオイド(鎮痛剤)依存症の危機を国家的な公衆衛生の緊急事態と宣言。予防と治療、回復のための各州の取り組みに連邦政府予算18億ドルを提供した。オピオイド処方の制限にも取り組んでいる。

しかし、反対勢力はこれについて、医療保険を数百万人に提供したオバマケアを解体するトランプ氏の施策の方が、むしろオピオイド危機対策に悪影響だと批判している。

アメリカのエネルギー産業を強化する

トランプ氏は就任以来、2016年選挙の公約通り、数百もの環境保護対策を廃止してきた。撤廃したものには、発電所や車両からの二酸化炭素排出量に対する制限、連邦政府が管理する河川への保護などが含まれる。

気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱については、「諸外国のみに有利」でアメリカには不利な内容だとして、離脱した。協定からの離脱が正式に完了するのは、今年11月の大統領選の後になる。

最近では、数十年にわたり資源掘削が禁止されていたアラスカの北極野生生物国家保護区で、原油・天然ガスの掘削を認めた。

警察の問題行為をデータベース化する

トランプ氏は、超党派の支持を得て2018年12年に成立した「第一歩法」を挙げて、自分は重要な刑事司法改革を実現してきたと強調している。

連邦レベルで刑事司法を改革し、量刑の決定において裁判官の権限を拡大し、受刑者の社会復帰事業を強化したこの新法は、重要な成果とされている。

トランプ氏は、出所者の雇用障壁を取り除くための「第二歩法」も約束したものの、まだ法案は提出されていない。

2016年大統領選から現在に至るまで、トランプ氏は法の厳格な執行を支持し、自分は法と秩序を強力に推進する大統領だと主張してきた。特に最近では、人種差別や警察暴力に抗議するデモが全米各地に広がったのを受け、警察を擁護してきた。

6月には様々な警察改革を大統領令で導入。警察官による暴行など問題行動を追跡するためのデータベース作成や、警察内の慣習改善に連邦補助金を提供することなどが含まれた。

警官が容疑者を制圧するため背後から羽交い絞めにして腕や警棒で首を締め付ける、「チョークホールド」と呼ばれる逮捕術について、その是非について異論のある中、トランプ氏は「一般論として」禁止するべきだと述べている。全面的な禁止には乗り出していない。

憲法修正第2条を守る

2019年8月上旬にテキサス州とオハイオ州で銃乱射事件が相次いだ後、トランプ氏はいくつかの銃規制強化策を支持すると述べた。この中には、銃器を買う人の身元確認の強化や、その人が銃器を所持すれば社会にとって危険すぎると予測される人の銃器入手を禁止する法律などが含まれた。

ただしその後は、こうした規制強化策の実現に向けた動きはほとんど何もない。トランプ氏は引き続き、アメリカ人が武器を所持する権利を保障する合衆国憲法修正第2条を声高に支持し、強力な圧力団体「全米ライフル協会(NRA)」を擁護し続けている。

(英語記事 Donald Trump: Where does the Republican president stand on key issues?