2020年08月26日 11:14 公開

米ウィスコンシン州ケノーシャで警官が黒人男性を背後から複数回銃撃した事件で、男性の家族の弁護人は25日、「奇跡」が起きない限り男性が再び歩けるようにはならないと述べた。

ジェイコブ・ブレイク氏(29)は23日、ケノーシャの路上で車に乗り込もうとした際に、警官から複数回撃たれた。

ブレイク氏の家族の弁護人を務めるベン・クランプ氏によると、少なくとも銃弾1発がブレイク氏の脊髄を貫通していた。

事件後すぐに抗議デモが起こり、暴力的になる場面もあった。24日には、ウィスコンシン州のトニー・エヴァース知事(民主党)が、地元警察の支援のため州兵を招集した。

脊髄が一部あるいは完全に切断された結果、ブレイク氏は麻痺を負ったとみられる。医師たちは脚が動くようになるかわからないとしている。

「ブレイク氏の家族は奇跡が起きるのを信じているが、現時点では麻痺があると診断されている。銃弾が脊髄を切断し、椎骨の一部を粉々にしたからだ。奇跡が起きない限り、ジェイコブ・ブレイク・ジュニア氏は再び歩けるようにはならない」と、クランプ弁護士は25日の記者会見で述べた。

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事件当時、車内にはブレイク氏の息子たちが乗っていた。

ブレイク氏は腹部も撃たれた。腕を負傷し、腎臓と肝臓に損傷も負った。結腸と小腸のほとんどを切除しなければならなかったと、クランプ氏は記者団に明かした。

ブレイク氏の母ジュリア・ジャクソン氏は記者会見で、息子は「生きようと闘っている」としつつ、「暴力や破壊行為が続く限り、息子はまったく喜ばないだろう」と述べた。

ミシガン湖の南西側に位置する、人口約10万人のケノーシャの様子を捉えた複数の写真では、建物や車両が破壊されているのが確認できる。ケノーシャでは事件に対する抗議デモが23日から続いている。

エヴァース州知事は25日、州の建物を保護し、救急隊や消防隊を支援するため、州兵をさらに派遣すると述べた。また同州に非常事態を宣言した。

アメリカでは今年5月にミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に首を押さえつけられて死亡したことを受け、法執行機関によるアフリカ系アメリカ人の扱いや、社会における人種差別に対する疑念が拡大している。その最中に今回の事件が起きた。

ブレイク氏の母ジャクソン氏は人種差別に言及し、「癒やし」を呼びかけた。

「私たちが倒れたらどうなるかわかりますか? お互いに対立している家(国家)は建ち続けられません」

銃撃事件で何があったのか

ソーシャルメディアでシェアされた動画では、3人の警官が駐車中のスポーツ多目的車(SUV)の周りを歩くブレイク氏に、武器を向けているのがわかる。ブレイク氏が車のドアを開けて乗り込もうとすると、警官の1人がブレイク氏のシャツをつかんで発砲した。動画では、目撃者たちが叫び声を上げる中、7回の銃声が確認できる。

警察は、「家庭内トラブル」に対応するため警官たちが現場へ駆けつけたと説明したものの、何が銃撃につながったのか詳細は明かさなかった。これまでのところ、通報した人物や、事件に関与した警官の人数、動画が撮影される前に起きていた事は明らかになっていない。

ブレイク氏の婚約者ラキーシャ・ブッカー氏は、車の後部座席に座っていた子どもたちが、父親が撃たれるのを見て悲鳴を上げていたと明かした。

ブレイク氏の弁護団は、同氏は当時「家庭内トラブルを鎮めようとしていた」と説明。複数の目撃者も地元メディアに同様の証言をしている。

裁判資料によると、ブレイク氏には性的暴行と家庭内暴力の容疑で逮捕状が出ていたが、警察は現場に駆けつけた警官がこのことを認識していたかどうかは明らかにしていない。

ウィスコンシン州司法省は現在、この事件を調査している。関与した警官たちは休職扱いとなった。警官の訴追を求める請願書には、数万人もの署名が集っている。

ブレイク氏の父親は、「背後から7回撃たれた若い黒人男性について調査している、現時点で回答もコメントも出さない白人のことは歓迎しない」とし、調査を信用していないと記者団に述べた。

抗議デモの最新状況は

銃撃事件から数時間後の23日夜、数百人が警察本部にむかって行進し、事件に抗議した。また、複数の車両が燃やされた。

警察は武装した人物による強盗や発砲があったとの通報が「多数」寄せられたことから、24時間営業の店舗に閉鎖を検討するよう求めた。

エヴァース州知事は24日、地元警察の支援のため州兵を動員。夜間外出禁止令も出された。

しかし一部のデモ参加者は夜間外出禁止令を無視し、警察は催涙ガスを使って追い払おうとした。デモ参加者は水が入ったボトルを投げつけるなどして対抗した。

デモ参加者によると、警察はゴム弾や発煙弾も使っていたという。

ロイター通信は、一部のデモ隊が複数の車両や建物を野球のバットで破壊したり、車両に火をつけたりしていたと報じた。

抗議デモはオレゴン州ポートランドやミネソタ州ミネアポリスなど各地に拡大している。

(英語記事 Shot US black man 'needs miracle to walk again'