
2020年08月30日 13:52 公開
大統領選挙の結果をめぐって抗議デモが続く東欧ベラルーシで、当局が29日、多くの外国メディア記者の取材許可を無効にした。
取材許可を失ったのは、同国内とロシアの記者10人以上。BBCのロシア語サービスの記者2人のほか、ラジオ・リバティ(チェコ)、AFP(フランス)、ドイチェ・ウェレ(ドイツ)の記者らに影響が及んでいる。
BBCは声明で、「独立したジャーナリズムの抑圧を最大限」非難するとした。
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ベラルーシでは29日、新たなデモが行われた。これまでの一連のデモは、1994年から権力を握るアレクサンドル・ルカシェンコ大統領に有利になるように、大統領選で不正があったと広くみられたことをきっかけに始まった。
29日は女性数千人が首都ミンスクに結集。手にした旗や花を振りながら「連帯の行進」をし、ルカシェンコ政権の退陣を求めた。中にはベラルーシの伝統的な服を着て参加する女性もいた。
デモには機動隊が出動し、数人を逮捕した。この日は国内の他の場所でも、小規模な集会が開かれた。30日もデモが開催され、騒然となることが予想されている。
英外相も非難
BBCはベラルーシ当局に、記者の活動を認めるよう要求。
「ベラルーシ国民にとって、国内の現象について公平で独立した情報を得るのは重要だと、私たちは考える。BBCロシア語は週500万人以上に情報を届け、今回の大統領選後の政情不安において、ベラルーシとロシアの人々の主要なニュース源になっている」と述べた。
ベラルーシ政府の広報官は今回の措置について、テロリズム対策部門の勧めに従ったものだとAFP通信に説明した。
イギリスのドミニク・ラーブ外相は、「ベラルーシ当局はBBCニュースや国内外のメディアを標的にし続けており、同国での取材許可を取り消した。ベラルーシ外務省によるものだ。報道の自由に対する明確な攻撃を非難する」とツイート。
https://twitter.com/DominicRaab/status/1299738335867437063
オーストリア外務省も、客観的な報道をあからさまに抑圧するものと批判した。
取材許可の取り消しは、抗議デモを前にBBCを含む複数の報道機関の記者がミンスクで拘束されてから数日後に発表された。
内務省は、記者らは身元照会のため警察署に連行されたと述べた。一方、連行されたBBCのスティーヴ・ローゼンバーグ記者は、「抗議イベントの報道を妨害しようとしたのは明らかだ」と話した。
ベラルーシの状況
今月9日の大統領選で対立候補となったスヴェトラーナ・チハノフスカヤ氏は、選挙後にリトアニアに出国し、抗議行動を呼びかけている。
ベラルーシでは前例のない反政府デモが続いており、主要国営企業の労働者もストライキを実施している。当局は数千人を逮捕しており、警官隊による残忍な暴力行為も数多く報じられている。
これまでに少なくとも4人が死亡、数百人が負傷している。
欧州連合(EU)とアメリカなどは、大統領選は自由・公正なものではなかったとして結果を受け入れていない。EUは、選挙不正や反政府運動の弾圧に関わったとみなした当局者に対し、制裁を準備している。