2020年09月01日 12:39 公開

11月の米大統領選をドナルド・トランプ大統領と争う、野党・民主党のジョー・バイデン大統領候補は8月31日、「無力」で「有害」な指導者であるトランプ氏が国内の暴力行為を「あおっている」と非難した。アメリカ各地では人種差別や警察暴力に抗議するデモが続いている。

バイデン氏はこの日、米大統領選の激戦州、東部ペンシルヴェニア州のピッツバーグで演説し、アメリカは複数の危機に直面しているとし、「ドナルド・トランプの下では、こうした危機は増え続ける」と述べた。

バイデン氏とトランプ氏はここ数日、オレゴン州ポートランドでの人種差別や警察暴力に対する抗議デモで死者が出たことをめぐり、互いを非難しあっている

トランプ氏は「法と秩序」を自身の選挙キャンペーンの大きなテーマに掲げている。

バイデン氏の主張

バイデン氏は演説で、トランプ氏は「とっくの昔にこの国の道徳的なリーダーシップを放棄した」と述べた。

「彼(トランプ氏)には暴力行為は止められない。そういうことを長年あおってきたからだ」

また、「我々はアメリカで正義を必要としている。アメリカには安全が必要だ。我々は複数の危機に直面しており、ドナルド・トランプの下では、こうした危機は増え続ける」と付け加えた。

「ドナルド・トランプが再選したら、アメリカ国内の暴力行為が減ると信じている人なんているだろうか」と、バイデン氏は人々に問いかけた。

トランプ氏の主張

一方、トランプ氏は11月の大統領選にむけて、自身を法と秩序の候補者として打ち出そうと努めている。そして、反人種差別デモで時折勃発する犯罪行為や暴力行為に対し、民主党とバイデン氏が手ぬるいと主張している。

バイデン氏の演説を受け、トランプ氏はアメリカで起きている抗議デモや暴力行為を「警察のせいにしている」としてバイデン氏を非難した。

「ちょうどバイデンの発言を見たところだ」と、トランプ氏はツイート。「私には、彼(バイデン氏)が暴徒や無政府主義者、扇動者および略奪者よりもはるかに警察の方を非難しているように思える。そういう人物を非難できずにいたのは、急進左派のバーニー・サンダースの支持を失うことになるからだ!」と書いた。

また、「この狂った暴力抗議が起きている州や市の急進左派の市長&知事たちは、自分たちの『ムーブメント』を制御できなくなっている」と投稿した。

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バイデン氏はトランプ氏が自分を暴力行為に結びつけたことをあざけり、演説の中で、「私が暴徒に弱い、急進的な社会主義者のように見えるか?」と問いかけた。

また、人種的正義を求める抗議でみられる暴力行為を非難。ジョージ・フロイド氏とジェイコブ・ブレイク氏の家族と個人的に話したと述べ、「こういった暴力行為は彼らに敬意を表するものでも、彼らを称賛するものでもない」と述べた。

バイデン氏はトランプ氏を「秩序を与えるよりも、むしろ混乱の種をまき、我々の国に有害なものをもたらし(中略)我々の民主主義に毒を盛る現職大統領」と呼んだ。

バイデン氏の選挙キャンペーンはこれまで、トランプ陣営に対する主な攻撃として、ホワイトハウスの新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への対処や、国内で18万人以上がCOVID-19(新型ウイルスの感染症)で死亡している事に焦点を当ててきた。

しかし今回の演説では、公共の安全について疑問を呈すことで、トランプ氏の「法と秩序」のメッセージに真っ向から立ち向かおうとしているとみられている。

3月に新型ウイルスが拡大し始めて以降、バイデン氏はほとんど自宅の近くから選挙活動を行ってきた。しかし今回は珍しく、激戦州のペンシルヴェニア州を訪れた。

複数の世論調査では、バイデン氏はトランプ氏から安定したリードを保っている。

抗議デモの背景

警察は8月31日、ポートランドで同29日に騒乱の最中に撃たれて死亡した男性について、アーロン・ダニエルソン氏と確認した。極右団体「愛国者の祈り」の創設者ジョーイー・ギブソン氏は、ダニエルソン氏について「良い友達で支持者だ」と話したとAP通信は報じた。

この発砲事件が、トランプ支持者の集会と黒人差別に抗議する「Black Lives Matter」運動との衝突に関連したものなのかは、警察は明らかにしていない。

しかし複数メディアは、ダニエルソン氏の死をめぐり、反ファシズム主義者を自称する男が捜査されていると伝えている。

ミネソタ州で5月26日にアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警官に首を圧迫されて死亡した事件をきっかけに、国内外で警察の残虐行為や人種差別に対する怒りが広がっている。ポートランドはそうした抗議デモが勃発する場所となっている。

米ウィスコンシン州ケノーシャでは8月23日、警官が黒人男性を背後から複数回銃撃する事件があり、抗議デモが続いている。トランプ氏は1日にも同市を訪問する予定。

ケノーシャの抗議デモでは抗議参加者に発砲し、3人を死傷させたとして、カイル・リッテンハウス被告(17)が殺人罪などで訴追されている。被告の弁護人は、正当防衛を理由に争う姿勢をみせている。

騒乱で「政治的利益を得ている」

トランプ氏の広報戦略にかかわり、政権発足当初は政権の「顔」のひとつとしてマスコミに対して発言を続けたケリーアン・コンウェイ元上級顧問は最近、トランプ氏が国内の騒乱から政治的利益を得ていると発言した。ホワイトハウスは8月31日、事実ではないと否定した。

「より多くの混沌(こんとん)や無政府状態、破壊行為に支配されればされるほど、公共の安全と、法と秩序において誰が最も優れているか、その選択が非常に明確になる」と、コンウェイ氏は先週、米フォックス・ニュースで述べた。

ホワイトハウスのケイリー・マケナニー報道官は、トランプ氏は「これ以上の暴力行為を少しも支持してはいない」とした。

(英語記事 Biden accuses 'weak' Trump of sowing chaos