荻原博子(経済ジャーナリスト)

 この10月1日に、いよいよ消費税が10%に引き上げられました。「本当に増税されるのかな?」と半信半疑のまま、気が付いたら「消費税10%時代」を迎えたという方も少なくないでしょう。

 私自身、安倍政権は消費税を上げられないと考えていました。根拠は選挙です。有権者に明確な負担増を強いる消費増税が、選挙戦を戦ううえで大きなディスアドバンテージになることは言うまでもないでしょう。

 たとえば、2018年5月に行なわれたマレーシアの国政選挙では、マハティール首相が「消費税ゼロ」を公約に掲げて勝利しました。最近のマレーシアは経済成長率が低下しており、消費の減少が原因だと考えられていました。

 とりわけ、2015年にナジブ前政権が導入した物品・サービス税(日本の消費税に相当)に対して国民が向けた目は厳しく、だからこそマハティール首相は事実上の消費税廃止を訴えて選挙に勝ち、同年6月に実行に移したのです(その後、代わりに売上・サービス税を復活)。

 安倍首相は、昨年11月にマハティール首相と会っています。私はその動きもふまえたうえで、「消費税は上げられない」とみたわけです。

 安倍政権には選挙しか頭のなかになく、危ない橋を渡らないだろう、と。同様に考えていた識者は多かったはずです。
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
 そんな大方の予測とは裏腹に消費税が引き上げられたのは、ひとえに7月の参院選があまりにも「無風」であったからにほかなりません。参院選が本格化する前から、今回の選挙は与党が盤石だと報じられていました。

 また、消費増税に関する世論調査は、賛成派と反対派がおおよそ5分5分に分かれていたとはいえ、もはや国民のあいだでは大きな関心事ではなかったかもしれません。