2020年09月02日 10:20 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領は1日、黒人男性が警官に背後から銃撃されたことに端を発した抗議デモが続くウィスコンシン州ケノーシャを訪問した。トランプ氏は抗議デモでの「破壊行為」は「国内テロ」だと非難した。

抗議デモのきっかけとなった事件は先月23日に起きた。

ジェイコブ・ブレイク氏(29)がケノーシャの路上で自分の車に乗り込もうとした際に、警官に至近距離で背後から7回撃たれた。車内には同氏の幼い子供3人が乗っていた。下半身がまひする重傷を負い、再び歩けるようになるかは不明だ。

抗議デモは「国内テロ」

トランプ氏はこの日、抗議デモの最中に破壊された地域を訪れた。大騒乱で家具店などが焼け落ちた。

「これらの行為は平和的な抗議行動ではなく、本当の国内テロだ」と、トランプ氏は市内の高校の体育館で行われた地元のビジネスリーダーたちとの会議で述べた。

また、警察のとった行動を擁護した上で、メディアは警官が関与した「悪い」出来事にのみ注目していると非難した。

トランプ氏は警察との衝突で負傷した人々に共感を示し、「そんな体験をした人たちのことを心苦しく思う」とした。一方で、法執行機関に制度的人種差別が存在するとは思わないと述べた。

さらに、州兵がいなければケノーシャは抗議者に「焼き尽くされて」いただろうと、証拠を示さずに主張した。

トランプ氏は自分がケノーシャに州兵を派遣したとしているが、実際にはウィスコンシン州知事が配備した。トランプ氏の指示で、連邦法執行官200人が州兵を支援している。

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トランプ氏はこの暴動で損害を受けたケノーシャの企業支援に400万ドル(約4億2400万円)近くを充てるほか、同市の法執行機関に100万ドル(約1億590万円)を拠出するとした。

デモ参加者は自分たちの抗議デモが暴力的に乗っ取られたとして、外部の扇動者を非難している。ケノーシャの警察は週末に逮捕した容疑者175人のうち105人について、市外からやって来ていたと明かした。

トランプ氏が「人種的分断を煽っている」

複数の世論調査によると、トランプ氏は、11月の米大統領選に向けて同氏をリードする与党・民主党のジョー・バイデン大統領候補との差を縮めている。

トランプ氏は「法と秩序」という力強いメッセージを推し進めている。これに対し、バイデン氏はトランプ氏が人種的分断をあおっていると非難している。

「炎が燃え上がっている。この国には、炎と戦うのではなく、火に油を注ぐ大統領がいる」と、バイデン氏は1日に述べた。

BBCのバーバラ・プレット・アッシャー米国務省担当特派員は、ウィスコンシン州は米大統領選の重要な激戦州であることから、トランプ氏がケノーシャ訪問を政治的チャンスとみなしているのはほぼ間違いないと指摘。ケノーシャが人種差別と暴力行為をめぐる論争の新たな中心地になっており、各大統領候補がこの一触即発の問題をどう扱うかが注目されているとした。

なぜトランプ氏はブレイク氏の家族と面会しなかったのか

トランプ氏は、警官に背後から銃撃されたブレイク氏の家族と面会しなかった。その理由について、家族が弁護士の同席を望んでいたからだと述べた。

代わりに、ブレイク氏の母親のアフリカ系アメリカ人牧師が会議に参加したことを光栄に思うとした。

シャロン・ウォード牧師は「この問題を解決するために、この会議に黒人が出席するのが重要だと思う」と述べた。

ブレイク氏の父親ジェイコブ・ブレイク・シニア氏は先に、米CNNとのインタビューで、トランプ氏との面会よりも息子の命の方が大事だと述べた。

「私は政治に関わらない。私の息子が全てだ。写真撮影とは全く無関係なことだ」

また、ブレイク氏は依然として腰から下がまひしたままだと明かし、「必死に生きようとしている」と述べた。

ケノーシャ訪問で「憎しみを拡大」

トランプ氏は、ケノーシャのジョン・アンタラミアン市長とウィスコンシン州のトニー・エヴァース知事(いずれも民主党)の反対を押し切って、ケノーシャを訪問した。

アンタラミアン市長は先週末、トランプ氏の訪問について、今は良いタイミングではないとしていた。

「現実的に、我々の目から見れば、現時点での訪問は望ましくない」と、米公共ラジオNPRで述べた。

エヴァース州知事も、「我々の心が癒えるのを妨害」することになるとして、トランプ氏にケノーシャを訪問しないよう警告した。

ケノーシャで育った、マーク・ポーカン下院議員(民主党、ウィスコンシン州)はツイッターで、トランプ氏は「憎しみを拡大するために」ケノーシャを訪問したと述べた。

(英語記事 Trump visits Kenosha to back police after shooting