最初の理由について詳細な説明は不要であろう。近年は異常気象が通常の気象と言ってもよい状況で、「観測史上1位の○○」と発表されても特段驚かなくなってしまった。鉄道に限らず、インフラというものは過去の気象データをもとに余裕を持たせて築かれているものだが、近年の自然災害は想定を上回る規模となってしまったのだ。

 二つ目の理由は社会における鉄道の地位の変貌(へんぼう)を如実に物語る。かつては鉄道は陸上第一の交通機関であったが、旅客輸送、貨物輸送ともその地位を自動車に譲って久しい。同時に日本国有鉄道(国鉄)という全国的な鉄道事業者が消滅した結果、被災した地域を中心に一丸となって復旧する姿勢も失われたのだ。

 橋梁が流失した場合、橋桁の完成を待つために長期にわたって不通になると先に述べた。だが、同様の事態が発生した際には国鉄時代には重要度の高い路線ではできる限り復旧を急ぐ方策がとられている。

 その一例として、1978年5月18日に発生した地滑りで不通となった信越線の妙高高原-関山間(現えちごときめき鉄道妙高はねうまライン)で橋梁を架けて復旧した様子を挙げておこう。国鉄は大船渡線に架設寸前であった橋桁を信越線に転用して工期の短縮を図り、結果的に同年9月6日に列車の運転が再開された。

 しかしながら、一つ目、二つ目を上回る理由こそが三つ目である。国鉄の分割民営化が断行された1987年から今年で33年が経過した。その間に線路や施設の老朽化は否応なく進んでいるのだ。

 2020年7月の豪雨で今も不通となっている区間の開業時期を見てもよく分かる。最も新しい飯田線でも1936年12月30日で84年前、最も古い肥薩線ともなると1908年6月8日で112年前となる。

 誤解がないように申し上げたいのだが、開業が古いからといって即危険というわけではない。各社とも国の基準に従って線路や施設のメンテナンスを行っているし、台風などの接近が予想される際には警戒態勢を敷いて巡回の頻度を高めている。

 しかし、懸命なメンテナンスも巡回も、処置できるのは大多数が目に見える部分で、線路や施設も地面に隠れている基礎部分は多くは老朽化に任せるほかない。
国鉄の分割民営化で発足したJRグループの出発セレモニー=1987年4月
国鉄の分割民営化で発足したJRグループの出発セレモニー=1987年4月
 老朽化の進行が鉄道会社各社の負担を増やしていると思われる事例を紹介しよう。線路1キロ当たりの保守費用を2002年度と17年度とで比べてみると、JR、私鉄とも大幅に増加している。

 具体的には、JRが4億2423万円から1・1倍の4億6998万円、私鉄は1億5112億円から1・2倍の1億8776億円にそれぞれ増えた。特に私鉄のうち、中小私鉄は1659万円から3647万円と2・2倍の増加となった。