
2020年09月02日 12:26 公開
レオ・ケリオン、テクノロジーデスク編集長
米IT大手アップルはこのほど、iPhoneユーザーがアプリをダウンロードすることなく、 新型コロナウイルスの接触追跡ができるサービスを開始した。
ユーザーは設定で「Exposure Notifications Express」(ENE)と呼ばれる通知システムを許可すれば、公式のCOVID-19(新型ウイルスの感染症)追跡アプリをダウンロードする必要がなくなる。
このシステムは、ブルートゥース(Bluetooth)を介して検出した他者の携帯電話の14日間のログ情報を保存する。いずれかのユーザーが新型ウイルスに感染していると診断されると、アラートを出す仕組みだ。
地元の公衆衛生当局が通知内容を決定するという。
さらなるガイダンスの提供を受けるには、ユーザーは十分な機能を備えたアプリのダウンロードを求められる可能性もある。
今回のサービスにより、当局は独自のアプリを開発しないで済ませることが可能になった。その場合には、ユーザーは検査センターへ行くよう指示を受けたり、ホットラインに電話してさらなる情報を得るよう指示を受ける可能性がある。
警告メッセージを受けていなかったiPhoneユーザーが感染した場合には、他のユーザーに警告を送ることもできる。しかし、ユーザーはこのプロセスを開始できるアプリを持っていないため、陽性診断を受けた後に公衆衛生当局からスマートフォンに送られてくるテキストメッセージをタップする必要がある。
1日にリリースされたiOS13.7にアップデートすることで、接触追跡サービスが利用できるようになる。
<関連記事>
コストを抑える
ユーザーは設定メニューでExposure Notifications(接触通知)オプションを選び、ENEを許可できる。
一方でこのシステムは、2人の人物がどれくらいの時間、どれくらい近い距離にいれば接触になるのかなど、アラートを生成する基準を保健当局者に依存することになるため、彼らの関与なしでは機能しない。
当局がこのイニシアチブを支援するかどうか決定するまでは、ユーザーは地元の追跡アプリがある場合には代替案としてダウンロードするよう促されたり、「あなたの地域の公衆衛生当局では接触通知システムは開始されていない」などと伝えられたりしている。
これまでに、アイルランドやイギリス・北アイルランド、ドイツ、スイス、日本、サウジアラビア、英領ジブラルタルなど20以上の国や地域、州で、アップルやグーグルの接触追跡の枠組みを基にしたアプリがリリースされている。
英イングランドの国民保健サービス(NHS)による「Test and Trace」(検査・追跡)サービスは現在、テクノロジー大手のアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を基にしたアプリを試している。スコットランドでは、アイルランドのものを基にした独自のサービスを今月下旬にもリリースする予定だ。
アメリカでは、このテクノロジーを採用しているのはわずか6州にとどまっている。開発にかかる時間や維持費を節約できることから、ENEが開始されれば、より多くの場所で導入が促進されるかもしれない。
アップルとグーグルによる「分散型」モデルがどのように展開されたとしても、当局側はどのユーザーが、あるいはどれだけのユーザーがアラートを受けたかを知ることはできない。
同様に、ユーザー側はアラートの要因となったのが誰なのかを知ることはできない。
ユーザーは設定メニューでいつでもENEの利用をやめることもできる。
アンドロイド向け接触追跡サービス
グーグルはアップルに追随して、今月下旬にもアンドロイド向けの独自サービスを開始する方針だ。
サービスの名称はアップルのものと同じ予定だ。しかし、アプリが不要なやり方ではなく、自社の基準に基づいて、当局のための基本的な新型ウイルス追跡アプリを作成することを決めた。
このサービスを利用する当局は、希望すれば後の段階で、より精巧な独自のCOVID-19アプリを開発できる。
「ENEはユーザーのプライバシーとセキュリティという、このプロジェクトの中核的信条を損なうことなく、既存の接触追跡事業をテクノロジーで補完するための、別の選択肢を保健当局者に提供するものだ」と、アップルとグーグルは共同声明で述べた。