上村由紀子(フリーライター)

 気づけば8月も終わり、9月を迎えるも季節は依然として夏を感じさせる。「夏といえば恋愛ドラマ」だったのはいつの頃までだっただろうか。

 反町隆史と竹野内豊の『ビーチボーイズ』や、明石家さんま主演の『男女7人夏物語』、常盤貴子と豊川悦司の『愛していると言ってくれ』など、強い日差しと波の音、セミの声とともにそれらはいつも私たちのテンションを上げてくれた。

 「恋っていいなあ、人を好きになるのってステキだよね」と、ブラウン管を眺めていた甘酸っぱい夏の思い出の日々。

 そうやって遠い目になりながら、令和2年8月のラテ欄を改めて眺めてみる。地上波のプライムタイムでオンエアされているのは医療ドラマに刑事もの、そしてビジネスの世界を描いた作品ばかりで、恋愛に特化したドラマは見当たらない。

 海岸を走りつつ恋する2人が「あはは~」「うふふ~」と笑う世界も、雨に打たれ、「お前が好きだ」と絶叫するシチュエーションも令和の夏には存在しないのだ。

 では今、ドラマの世界でキーワードとなっている存在は何か。そう、それは「おじさん」である。今年の夏のヒットドラマは「おじさん」に支えられていると言っても過言ではない。さて、詳しく見ていこう。
 
 今季、おじさんが登場するヒットドラマは「戦闘型」と「癒やし型」の大きく二つに分類される。前者の「戦闘型おじさん」の代表格はTBS系の『半沢直樹』で間違いないだろう。7年ぶりの製作となった『半沢』だが、初回から毎回20%超えの視聴率を誇る大人気ドラマだ。放送中には出演者だけでなく、そのキャッチーなセリフがSNSでトレンド入りするなど、話題性はぶっちぎりだ。

 前作で東京中央銀行から子会社・東京セントラル証券への出向を命じられた半沢直樹(堺雅人)。新たな職場ではIT企業の買収案件で銀行側の伊佐山(市川猿之助)や副頭取の三笠(古田新太)から妨害され、宿敵である大和田(香川照之)と一部手を組み、事態をまとめるべく奮闘する。
俳優の堺雅人(前川純一郎撮影)
俳優の堺雅人(前川純一郎撮影)
 その功績により、古巣である東京中央銀行へと返り咲いた半沢だが、そこには新たな魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちが控えていた。負債を抱える帝国航空、そしてその負債を銀行に放棄させようとする政府の関係者。

 前半では香川照之、市川猿之助、片岡愛之助、尾上松也といった歌舞伎俳優たちによる「顔芸合戦」が話題となったが、後半にも柄本明、筒井道隆、木場勝己、石黒賢などクセのあるおじさんたちが山盛りである。正直、暑苦しい。だが逆にあの濃さがクセになって画面から目が離せない。