4月中旬に新規感染者のピークが確認されると、4月22日に政府は新型コロナの「危機出口戦略計画」を公表し、5月1日までの予定だった緊急事態宣言を5月17日まで延長した。以降は出口戦略に従って段階的に制限緩和され、8月下旬にはほぼ全ての制限がなくなり、日常生活が戻りつつある。

 エストニアの人口あたりの感染者数と死者数は、ドイツやイタリア、フランス、英国などと比較すれば少ないが、バルト三国の中では一番多い。日本では7月以降に感染者数の増加が見られるが、人口あたりの感染者数をエストニアに比べると、はるかに少ない。

 したがって、エストニアのコロナ対策が日本と比べて特に優れていたとは言いにくい。実際、サーレマ島でのスポーツイベント開催を許可した社会問題省の健康委員会は責任を追及されて、後に委員長と開催地の市長が辞任している。

 しかし、出口戦略発表後の制限緩和による経済回復への兆しは日本より良いかもしれない。4月に売り上げが大きく落ち込んだ宿泊、外食産業も、6月までに少しずつ回復し、夏の休暇シーズンでは国内旅行者の増加が期待されている。新規感染者が都市部を中心に確認されているが、大きな増加はない。

 日本では、新型コロナに関する各種対策を実行する過程で、電子政府やデジタル化の不備が明らかになった。特に、紙とファクスの届け出によるデータ入力の負担と感染者データ共有・活用の遅れ、特別定額給付金で発生したオンライン申請処理の混乱、あまり進まなかった子供たちへの遠隔授業で顕著だった。

 エストニアでは、平時からデジタル化された医療や行政、教育などのサービスを多くの国民が利用し、慣れ親しんでいたことで、コロナ禍でも円滑に新しい生活スタイルへ移行することができた。
特別定額給付金の申請書を封筒に入れる京都府舞鶴市の職員ら=2020年5月
特別定額給付金の申請書を封筒に入れる京都府舞鶴市の職員ら=2020年5月
 医師が作成する医療カルテや診断画像は、電子データとして国が管理する健康情報システムへ送信される。そのうち、感染症に関するデータは、さらに「感染症登録データベース」へ転送される。

 全国から集まった最新の感染症データは、感染症の診断と治療だけでなく、罹患(りかん)率や有病率、死亡率の分析、疫学調査、政策などで活用される。新型コロナのデータについては、匿名化された後、誰もが使えるオープンデータとして公開される。これらの仕組みは10年以上前に作られたものだ。

 給付金といった支払いを伴う行政手続きも、オンライン申請により簡単に済ませられる。遅くとも1週間以内、早ければ2~3日で指定した口座に入金される。