2020年09月10日 11:32 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領が、世界で猛威を振るう新型コロナウイルスによる感染症COVID-19について、米国内で流行する以前からインフルエンザよりも致命的だと知りつつ、その危険性を意図的に軽く見せようとしていたことが、米ジャーナリストの新著で明らかになった。

ウォーターゲート事件報道で有名なボブ・ウッドワード記者は、昨年12月から今年7月までの間にトランプ氏を18回インタビューした。

今月15日発売のウッドワード氏の新著「Rage」(怒り)には、アメリカで最初の新型ウイルスの死者が確認されるよりも前に、トランプ氏が新型ウイルスについて「致命的なもの」だと同氏に語っていたと記されている。

新著の内容は一部の米メディアが9日に報じた。それによると、トランプ氏はウッドワード氏とのインタビューで、人種や他の問題だけでなく新型ウイルスのアウトブレイク(大流行)についても言及したという。

この本の内容について、トランプ大統領は新型ウイルスのアウトブレイクで大衆のパニックを引き起こすのを避けたかったと述べた。

新型ウイルスのパンデミック(世界的流行)が始まって以来、アメリカでは約19万人の死亡が報告されている。

ウッドワード記者の新著「Rage」に記載されているトランプ氏の主な発言をいくつか紹介しよう。

新型ウイルスについてトランプ氏は何と?

トランプ氏はこれまで公に発言してきた内容以上に、COVID-19の重大性を認識していたことをうかがわせた。

通話音声によると、トランプ氏は今年2月にウッドワード氏に対し、新型ウイルスはインフルエンザよりも致命的だと話したという。

「このウイルスは空気を介して感染する」と、トランプ氏は2月7日にウッドワード氏に述べた。

「接触感染よりも厄介だ。感染するのに物を触る必要がないんだから。だろ? でも空気感染だと、空気を吸い込むだけだ。それで感染する」

「かなり油断ならないウイルスだ。細心の注意がすごく必要だ。それに、強力なインフルエンザさえ上回るほど致命的だ」

同月下旬、トランプ氏は新型ウイルスは「かなり制御されている」とし、感染者数はすぐにゼロに近づくだろうと述べていた。また、インフルエンザの方がCOVID-19よりも危険だと公にほのめかしていた。

トランプ氏は3月10日、議会議事堂で「落ち着いて。新型ウイルスはそのうちなくなるから」と発言した。

それから9日後(ホワイトハウスが国家非常事態を宣言してから数日後)にトランプ氏はウッドワード氏に対し、「新型ウイルスについて過小評価したかった。今でも過小評価したいと思っている。パニックを起こしたくないからね」と述べたという。

ホワイトハウスの反応は

トランプ氏は9日、ホワイトハウスで記者団に対し、「あなた方が言うように、国民におびえてほしくないし、パニックを引き起こしたくはない。もちろん、この国や世界を狂乱状態に追い込むつもりもない」と述べた。

「我々は自信と強さを示したい」

11月の米大統領選で再選を狙うトランプ氏は、ウッドワード氏の著書について「政治的な攻撃」だと述べた。

ウッドワード氏の著書に関する質問に対応したホワイトハウスのケイリー・マケナニー報道官は、「大統領が新型ウイルスについて過小に述べたことは1度もないと、改めて申し上げておく。大統領は冷静さを示した。大統領は状況を真剣に受け止めていた」とした。

大統領選でトランプ氏と争う野党・民主党候補のジョー・バイデン前副大統領は、「致命的な病気が我々の国で猛威を振るう中、(大統領は)自分の仕事をしなかった。意図的にだ。アメリカ国民に対する、生死に関わる裏切り行為だった」とツイートした。

その他に明らかになったことは

ウッドワード氏は6月19日のトランプ大統領との会話の中で、Black Lives Matter抗議運動の話題を振り、自分たちのような「白人で特権階級に属する」人間が黒人のアメリカ人の気持ちを理解するよう努めるべきだと述べたという。

これに対しトランプ氏は、「きみは本当にうのみにしているんだね」、「しっかりしろよ」と答えたという。

アメリカでは、5月にミネソタ州ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイド氏が警官に首を圧迫されて死亡した事件をきっかけに、警察の残虐行為や人種差別に対する全国的な抗議デモが勃発した。

トランプ氏はまた、奴隷制を廃止したエイブラハム・リンカーン第16代大統領を除き、自分はほかのどの歴代大統領よりもアフリカ系アメリカ人のために多くのことをしてきたと繰り返した。

7月8日にも再び「黒人コミュニティのために膨大な仕事をしてきた」が、誰からも「愛情が感じられない」と繰り返した。

米紙ワシントン・ポストは、ウッドワード氏がトランプ氏に、アメリカには制度的人種差別があるかどうか尋ねたインタビューについても掲載した。

トランプ氏はこういった問題はどこにでも存在するが、「ほとんどの場所あるいは多くの場所よりも、おそらくここ(アメリカ)の方が少ないと思う」と答えたという。

トランプ氏はまた、人種差別がアメリカの人々の生活に影響を及ぼしていることを認め、「それは不幸なことだ」と述べた。

金正恩氏との手紙も

ウッドワード氏の本には、トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との間で交わされた数十通の手紙も引用されている。

大げさな表現で埋め尽くされた手紙の中で、金氏はトランプ氏を「閣下」と呼び、2人の「深く特別な友情が魔法の力として働くだろう」と述べたと報じられている。

米メディアによると、トランプ氏は自分と金氏のつながりについてウッドワード氏に語ったという。「女性と会ったときに、1秒で何か起きるかどうかが分かる。10分もかからないし、6週間もかからない。うわあ、という感じ。分かるか? 1秒もかからないんだ」。

また、バラク・オバマ前大統領が「非常に過大評価されている」と感じるとも述べたと報じられている。

トランプ氏は「オバマが賢いとは思わない」、「演説に長けているとも思わない」と述べたという。

米CNNによると、トランプ氏はジョージ・W・ブッシュ第43代大統領について、「愚かな間抜けに見えるし、実際そうだった」とも発言したという。

(英語記事 Book says Trump deliberately downplayed virus