2020年09月13日 11:13 公開

ジョナサン・ジュレイコ、BBCスポーツ

テニスの全米オープン女子シングルス決勝が12日(日本時間13日)あり、大坂なおみ(22)がヴィクトリア・アザレンカ(ベラルーシ、31)に逆転勝ちで優勝した。大坂は成熟したプレーを見せ、3つ目となる4大大会(グランドスラム)タイトルを獲得した。

第4シードの大坂は1-6、6-3、6-3で2年ぶり2度目の全米オープン覇者となった。グランドスラムはこれまで、2018年全米オープンと2019年全豪オープンで優勝している。

元世界ランキング1位で、同9位でこの大会に臨んだ大坂は、この優勝で同3位に上昇する。

第1セットはアザレンカに圧倒された。第2セットも0-3とリードされかけたが、このゲームをブレークして1-2に。そこから調子を上げ、その後の11ゲームのうち9ゲームを取った。

第3セット4-3となり、主要大会の決勝は2013年以来だったアザレンカがサービスゲームを落とし、大坂が5-3とリードした。


第9ゲーム、大坂は2つ目のマッチポイントで優勝を決めると、歓喜の声を上げコートにあおむけになった。達成感に浸るかのように、ニューヨークの空を見つめた。

「子どもの頃、あなたを見ていた」

第1セットは一方的な展開だったが、アザレンカは当初の見事な勢いを保てなかった。その一方で、大坂はギアを一気に上げた。

グランドスラムの決勝で負けたことのない大坂は、この日も逆転勝利を収めた。

大坂は試合後のインタビューで、「もうあなたと決勝では戦いたくない。あまり楽しめなかった。本当に大変だったから」とアザレンカに冗談交じりに言った。

「子どもの頃、あなたがここでプレーするのをよく見ていたので、今日の試合にはとても感激した。たくさん学んだ。ありがとう」

前回優勝とは様変わり

大坂がセリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)を相手にストレートで全米オープンに初優勝した2年前の決勝では、ウィリアムズが主審カルロス・ラモスに猛烈に抗議。その影響で、会場はとげとげしい雰囲気に包まれていた。

しかし2度目の優勝は、まったく違うものとなった。

会場のアーサー・アッシュ・スタジアムは、新型コロナウイルス対策でほぼ空席だった。その環境で、大坂は第1セットを落とし、活気づくアザレンカを相手に挽回しなくてはならなかった。

「1時間以内で負けたりしたら恥ずかしすぎると、そればかり思っていた」と大坂は試合後、振り返った。

精神的に成長

大坂は試合序盤、やや集中力に欠けた様子だった。アンフォースト・エラー(自分のミス)を13回重ね、アザレンカの積極的でコントロールの効いた攻撃にてこずった。

コートチェンジの時にはタオルで頭を覆い、不安な心境をのぞかせた。集中して冷静さを取り戻そうとしたが、うまくいかなかった。

フォアハンドを大きく外し、いら立った大坂がラケットを地面に投げつける場面もあった。


しかし、大坂自身がここ数カ月で身につけたという精神的なたくましさが表れ出した。

それが試合の流れを大きく変えたのが、第2セットで大坂が0-3と引き離されそうになった場面だ。強烈なフォアハンドでピンチを脱し、アザレンカに傾いていた大局を引き戻した。

そのままの勢いで第3セットに入った大坂は、4-1とリード。第6ゲームもブレークポイントを3つ握り、一気に5-1とするチャンスだったが、このゲームは逃した。

すると大坂は第7ゲームをブレークされ4-3に。直前のゲームをブレークできなかったことが大きな痛手となるかと思えたが、大坂はすぐにブレークバックし、次のゲームも連取して優勝を決めた。

7枚のマスクすべて使用

大坂は先月来、ウエスタン・アンド・サザン・オープンと全米オープンでのプレーで注目を浴びただけでなく、人種差別と警察暴力への抗議でも多くの称賛を得ている。

全米オープンの開幕数日前には、ウエスタン・アンド・サザン・オープンの準決勝に勝ち進んでいた大坂は、ウィスコンシン州で黒人男性ジェイコブ・ブレイクさんが警官に銃撃されたことに抗議し、準決勝の棄権を表明していた。

全米オープンの初戦では、3月に警官に射殺された黒人女性ブリオナ・テイラーさんの名前が書かれたマスクを着けた。

日本人の母親とハイチ人の父親の間に生まれ、アメリカで育った大坂は、7つの試合用に7つの異なるマスクを用意していた。準決勝では、4年前にミネソタ州で警官に射殺されたフィランド・カスティールさんの名前のマスクを着けていた。


大坂は12日の決勝まで勝ち進み、すべてのマスクに書かれた名前を示すことを目標にしていた。それが彼女のやる気をさらに高めたと、コーチのウィム・フィセッテは話した。

大坂は試合後、「みんなが話をするようになることが大事だと思った」と話した。

「自分は(テニスに集中するという)バブルの中にいたので、外の世界の動きがよく分かっていない。リツイートが増えるほど、この問題について話す人が増える」

<分析>ラッセル・フラー、BBCテニス担当編集委員

大坂が2年前に全米のタイトルを取ったとき、アーサー・アッシュ・スタジアムにはブーイングが響いていた。セリーナ・ウィリアムズがペナルティで1ゲームを失ったことなどを受けたものだった。

しかし今大会は、ほぼ完全な静寂が大坂の優勝をたたえた。ただ、苦労して優勝を手に入れた点では同じだった。

アザレンカは第1セット、ほぼ完璧なプレーを見せた。大坂は敗戦まであと4ゲームという状況まで追い込まれ、ようやく調子をつかみ、強力なショットを繰り出した。

22歳の大坂はここ1年半、世界で最も注目されるスポーツ選手の1人になったことに苦慮し、精神的なダメージも受けていた。

昨年のウィンブルドン(全英オープン)の1回戦敗退は、おそらく相当のショックだっただろう。だが彼女は今、大きく変わっている。

大坂は再び自信たっぷりにプレーしているだけでなく、確信に満ちながらも淡々と、自らの影響力を社会正義の推進に生かしている。

(英語記事 Osaka fights back to win US Open