テレビなどもワイドショーを中心にこの発言を拡大解釈して報じ、選挙の「争点」化しようと躍起だった。問題は、このような見え透いた報道でもワイドショー民を中心に大きく影響を受けることだ。軽薄な人たちだとは思うが、それが現実なのだからしょうがない。

 菅氏はこのマスコミの悪しき印象報道に気が付いて、即時に安倍政権の経済政策を継承する意味でも「今後10年は、消費増税はない」と明言した。ただし、マスコミは、この発言も逆手にとって、「菅氏は増税発言での世論の反発で意見修正した」とネガティブキャンペーンの題材にした。

 そしてまたもやワイドショー民はそのような印象報道に釣られて、菅氏のイメージを形成してしまうのである。実際には、菅氏の経済政策観は、リフレ政策(インフレ目標付きの金融緩和中心の経済浮揚策)が中核だ。

 つまり経済を成長させ、それでさまざまな問題(社会保障、行政改革、規制緩和、財政再建など)をスムーズに取り組んでいける環境にしていく、そのような政策観でもある。「今後10年はない」は、常識的には消費増税は政治的に全否定したと同じなのだが、ワイドショー民はこれを「10年後には消費増税だ」とみなす人もいて、反知性極まれりだな、と率直に思う。

 実際に、雇用や事業を確保するなど、十分な経済成長こそが財政再建を可能にすると、菅氏は積極的に打ち出した。また、新型コロナ危機には政府は国債を発行し雇用を守り、政府には国債発行で制限はない、とも強調した。

 このような菅氏のアベノミクスの路線を継承し、さらに発展させていこうとする姿勢は、海外のメディアは中心的なメッセージとして伝えたが、国内ではそのような報道姿勢は少数である。むしろ消費税というニセの対立軸に加えて、今度は「官邸主導の官僚コントロールの弊害」を打ち出した。
自民党新総裁に選出された菅義偉氏が映し出された街頭の大型画面を見つめる人たち=2020年9月14日、埼玉県川口市(内田優作撮影)
自民党新総裁に選出された菅義偉氏が映し出された街頭の大型画面を見つめる人たち=2020年9月14日、埼玉県川口市(内田優作撮影)
 これも単に常識的な知識が欠如でもしないかぎり騙されることはないのだが、それでもあたかも官僚は政権の決定とは違うことができる自由意志を持ち、それが望ましいとする「雰囲気」を前提にしたテレビなどの報道が盛んになった。政策がまだ決定されていない過程では、官僚の異論は議論を活発化させるためにも必要だろう。だが、政策が決定してからの官僚の異論(≒「自由な発言」)は単に政策の実行を妨害するノイズでしかない。