2020年09月15日 11:35 公開

英下院は14日、政府が欧州連合(EU)と昨年合意した離脱協定の一部を変更するジョンソン政権の法案について、審議開始を可決した。EUとすでに締結しているブレグジット(イギリスのEU離脱)協定の一部を一方的に変更する法案は、国際法に違反する可能性があると閣僚も認めており、EUは強く反発している。

与党・保守党が80議席差の安定多数を占める下院は、ジョンソン政権が提出した国内市場法案の審議開始について賛成340、反対263で可決した。今後、法案の詳細を審議していくことになる。この日の議決では保守党議員の造反も一部あったため、今後の審議が紛糾する可能性もある。

イギリスは今年1月末にEUを離脱し、現在は移行期間中にある。EUとの通商協定の交渉期限が年末に迫る中、ジョンソン政権は通商交渉が破綻(はたん)した場合に北アイルランドを含めイギリスの国内市場を守るためとして、国内市場法案を提出した。この内容が離脱協定を部分的に変更する可能性がある。

ただし、離脱協定は1月末にイギリスがEUを離脱した時点で、国際法となっている。このため、英閣僚はすでに下院で、「特定的で限定的な」国際法違反の可能性を認めている。一方のEUは一貫して、昨年10月に英政府と合意した離脱協定の「全面的な実施」が必要だと主張。EUとイギリスの「将来の提携関係を交渉する大前提」だと強調している。

こうした事態に、前財務相のサジド・ジャヴィド議員など、保守党の有力議員たちが、法案に賛成するには修正が不可欠だとして反発している。14日の議決では一部が反対、あるいは棄権したものとみられる。

保守党のサー・ロジャー・ゲイル議員はBBCに対して、国際法は順守するべきという「原理原則」のため、法案の審議に反対票を入れたと話した。

「イギリスは今、複数の通商交渉に入ろうとしている。正直で誠実な交渉をすると相手から信頼される必要があるときに、この法案は我々の国際的な評価を損なっていると思う」とゲイル議員は述べた。他の保守党議員たちは今は様子を見て、必要となれば審議終盤に強く抵抗する方針だという。

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離脱協定を一方的に変更する権限

国内市場法案は、イギリスが来年1月1日にEUの単一市場と経済通貨同盟を離脱した後、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの間でモノとサービスの自由な流通を確保するためのもの。

物議を醸しているのは、すでに国際法となっている離脱協定の内容を、イギリス政府が一方的に変更できるとしている部分。ジョンソン政権の閣僚たちはこれについて、いわゆる北アイルランド議定書など協定の内容をEU側が「極端で不合理」な形で施行しないようにする、予防措置だと説明している。北アイルランド議定書とは、イギリスの一部の北アイルランドと、EU加盟国アイルランド共和国との間の陸続きの国境に、厳密な通関検査を復活させないため協定に含まれている取り決め。

5時間に及んだ14日の審議で、ジョンソン首相はEUの現在の姿勢が続けば、北アイルランドからイギリス国内に入るモノに対して、過剰な通関検査や関税がかかるようになるおそれがあると主張した。

首相はEUが通商交渉を有利に進めるため、食品輸出を阻止すると脅すなど、不当な要求をしていると批判。新法案はイギリスの「政治経済的一体性」を保障するものだと述べた。

法案は今後、上院(貴族院)でも激しい抵抗が予想されている。しかし、政府報道官は法案を年内に可決することは、「ブレグジット移行期間の後も、イギリスの領土的一体性と北アイルランドの和平を守り、イギリス全土の貿易や職を守るために」不可欠だと強調した。

(英語記事 Brexit: Internal Market Bill clears first hurdle in Commons / Brexit vote: What just happened and what comes next?