前嶋和弘(上智大総合グローバル学部教授)

 米大統領選が本格化する中、民主党の副大統領候補であるカマラ・ハリス上院議員に注目が集まっている。高齢のジョー・バイデン前副大統領の副大統領候補であるという立場を改めて振り返った上で、ハリス氏の政治観や政策、外交観などを探ってみたい。

 合衆国憲法には、大統領が死亡や辞任などによって不在となった場合、副大統領が大統領に昇格することが定められている。もし、11月3日の大統領選で政権交代が実現すれば、バイデン氏は来年1月の就任時に史上最高齢の78歳61日となる。

 就任時の最高齢記録は70歳220日の現職のドナルド・トランプ大統領であり、バイデン氏はさらに7歳5カ月ほど年齢を重ねての就任となる。

 そうなると、どうしてもバイデン氏には健康不安が付きまとう。大統領が亡くなったり、執務不能な状況になったりするなど、何かあればその地位を即座に引き継ぐのが副大統領の役割の中で最も重要だ。

 「最高齢の大統領」が誕生するとすれば、大統領職を引き継ぐ可能性がある副大統領候補は「史上最も重要」といっても過言ではないだろう。ハリス氏は米国の主要政党では史上初の有色人種の女性副大統領にとどまらず、政権を引き継ぐ可能性を秘めた「もう一人の大統領候補」に他ならない。

 もし、ハリス氏が政権を引き継ぐようなことになる場合、任期途中であるため、基本的にはバイデン政権の閣僚などの人材や各種政策、政策の背後にある理念なども引き継ぐことになる。

 外交であれば、国務長官や国防長官、安全保障担当補佐官らとのチームワークでもある。バイデン政権の外交をハリス氏が継承していくことだろう。
笑顔を見せるハリス米上院議員(左)とバイデン前副大統領=2020年8月、東部デラウェア州(ゲッティ=共同)
笑顔を見せるハリス米上院議員(左)とバイデン前副大統領=2020年8月、東部デラウェア州(ゲッティ=共同)
 ただ、任期途中で副大統領から大統領に昇格した過去の例を見ると、大統領の方針を引き継ぐだけではなく、自分なりの政治外交を展開することも少なくない。マッキンリー大統領の暗殺によって、1901年9月に副大統領から昇格し、42歳で史上最年少で就任したセオドア・ルーズベルト大統領もその一人だ。