杉山崇(神奈川大人間科学部教授)
麻生マリ子(家族心理ジャーナリスト)

司会・対談構成:梅田勝司(フリーライター、編集者、「PressRoom.jp」記者)

 第2波の真っ只中にあるのではないか、という言葉が専門家の口から語られる中、日本の国内総生産(GDP)が新型コロナ禍の影響もあって戦後最悪の落ち込みを記録した。果たしてこれが底なのか、まだ下がるのかは誰にも分からない。

 新型コロナ禍によってさまざまな市民生活が制限されたが、その影響が数字として明確になってきたといえる。しかし、教育についてはもう少し長い目でどんな影響を生徒たちにもたらしたかを見守る必要がありそうだ。

 そして、心配になるのは日本の国力への影響だ。世界でどの先進国も新型コロナの影響であえいでいるが、まずは自国の現状を確認したい。

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 梅田 杉山先生は新型コロナ禍で日本の国力が低下することを懸念しておられるそうですが、具体的にどのようなことを心配されているのでしょうか?

 杉山 一斉休校とその余波による、生徒の学力低下が心配ですね。特に公立校は、緊急事態宣言の前後から授業をしなかった。私立校の先生方は結構頑張ってオンライン授業をしていたようですが、公立でできたところは少なかったようですね。

 文部科学省は学習の遅れを正式に認めていて、政府も危機感を持っているのは間違いないですね。

 梅田 夏休みは期間短縮され、お盆明けに1学期の続きがあったり、2学期が始まりました。これで遅れた分を取り返せるのでしょうか?

 杉山 問題は学校だけの話ではないんです。家庭でする学習の習慣が崩れてしまったことが大きいですね。教育熱心な親は、家庭での学習習慣を崩さないよう頑張っていたと思うんですけど、それでも学習習慣が崩れる子はいます。そうなると、崩れた子供と崩れなかった子供との格差が広がることが考えられます。
新学期が始まり登校する小学生たち=2020年8月17日、岐阜県大垣市
新学期が始まり登校する小学生たち=2020年8月17日、岐阜県大垣市
 麻生 私は教育格差の連鎖がさらに深刻化するのではと懸念しています。もともと世帯年収や親自身の受けた教育水準が、子供の教育格差に連動する傾向があります。経済的に豊かな家庭で高い水準の教育を受けて育った子供が、社会に出て高収入を得られるようになる。そして親になったとき、わが子にも高水準の教育を受けさせることができますからね。

 全国一斉休校の要請があったのが年度末でしたから、その時点で授業をどこまで終えられていたかで差が生じます。また休校中や夏休みの課題にも地域や学校、学級で致し方ない差がある中、オンライン授業の有無や、親が子供の勉強を見たり教えたりする素養があるかどうかも、子供の家庭学習を左右しています。

 そもそも家庭学習に向く子と向かない子がいますし、発達特性のある子供たちを含め、どういう形であれば学習しやすいかに個人差があるのも事実です。

 基礎学力でいうと、公立校の小中生は大変ですね。ましてや小学校では2017年3月に改訂された学習指導要領が、ちょうど20年度から全面実施となるタイミングでしたから。移行措置として、直前2年間で先行実施する必要性がありますが、休校となった時点で、それを終えていた学校と終えられていなかった学校とがありました。