清義明(フリーライター)


 「GoToトラベル」キャンペーンが始まっておよそ2カ月が過ぎた。観光地の経済をなんとか回していこうという政府の施策だが、新型コロナ禍によって、インバウンド(観光目的の訪日外国人)がほぼゼロといった惨状で、壊滅的な影響を受けている。

 このように、苦境に喘(あえ)いでいる中で、他と比べて意外な善戦をしているように見える観光地がある。熱海(静岡県)である。

 熱海にどのようなイメージがあるだろうか。筆者が熱海を訪れたのは、これまでに少なくとも十数度ではないかと思う。ただし、そのほとんど全てが社員旅行や団体旅行の類。そのために、ホテルで完結してしまうことが大半で、街歩きの経験がほとんどない。

 その熱海に今夏、改めて訪れてみて驚いたのは熱海の駅前から繁華街を抜けて海岸まで、驚くほど若者が多く、カップルだけではなく女性同士の客も多いということだ。

 「雑誌とかで取り上げられていたので、いつか来たいとは思っていました。今日は日帰りです」と、熱海駅前のみやげ物屋が立ち並ぶ平和通り商店街で話を聞いたカップルは、大学生だった。

 男性と女性混在の10人のグループにも、旅行に熱海をなぜ選んだのかと聞くと「誰が言い出したんだっけ?」と仲間同士で聞き合いながら答えてくれた。

 「近いのが良かったし、海もあるから泳げるし。近くのホテルに泊まります」 皆、カートの荷物をごろごろと転がして、みやげ物屋をのぞき込みながら歩いている。こちらは専門学校生と大学生の神奈川の地元の仲間だそうだ。

 女性同士の客に熱海に来た理由を聞くと「美味しいものがあるから」とのこと。会社勤めだが、休みが今になってとれたので同僚2人で来たそうだ。25歳といったところか。千葉県から来たが、勤め先は都内だという。

 平和通り商店街は、旧来の熱海のイメージとは変わらない。干物屋があり、蒲鉾が売られ、温泉まんじゅうのせいろが湯気を立てている。だが、そこに若者がひっきりなしに通りすぎる。これはどういうことなのだろうか。
若者の旅行者が目立つ熱海駅前の平和通り商店街(筆者提供)
若者の旅行者が目立つ熱海駅前の平和通り商店街(筆者提供)
 熱海には昭和風な喫茶店も多数ある。観光地だからだろうが、都市部ではチェーンのコーヒー店に客を奪われて徐々に姿を見かけなくなりつつある個人経営の喫茶店が、熱海には驚くほど残っている。街歩きに疲れた観光客が立ち寄るニーズがまだあるのだろう。

 そのうちの一軒の喫茶店に入ってみる。