2020年09月18日 12:51 公開

ジョナサン・エイモス、BBC科学担当編集委員

ヘリウムガスで声を面白おかしく変えてみんなを笑わせようとする人が、たまにパーティーに出現するが、それがワニだったら?

大して面白くなさそうだが、ワニの前で笑うべきか、笑わざるべきか。

ワニに声色を変えるヘリウムガスを吸わせ、コミュニケーション方法を調べた研究チームが17日、ノーベル賞のパロディ版として知られる「イグ・ノーベル賞」の音響学賞を受賞した。

スウェーデン・ルンド大学のステファン・レバー博士や京都大学霊長類研究所の西村剛准教授などの研究チームが手掛けたこの調査は、ワニ同士の意思疎通について調べた至って真面目なものだ。しかし、ヘリウムで声を変えたワニ……と、想像するとなかなか面白いため、受賞が決まった。

今年が30周年に当たるイグ・ノーベル賞は「ありえない研究」を表彰することをうたっており、今年も10部門が選ばれた。

今年はこのほか、眉毛を分析することでナルシシストを特定する機械を発明した研究グループや、ミミズを高周波で震動させた時に何が起きるのかという研究が受賞した。

こうやって並べると馬鹿げているように聞こえるが、少し深く掘り下げれば、イグ・ノーベル賞を得た研究はどれも現実の問題を解決しようとしていること、そして正規の考査を経て学術誌に掲載されていることに気付く。

ワニの研究を発表したレバー博士はBBCの取材に対し、イグ・ノーベル賞の受賞を名誉に思うと話した。

この研究では、ワニなどのは虫類が、ほ乳類や鳥類と同じように、自分の声音を通じて自分の体の大きさを周囲に伝えていることを、証明しようとした。

「(ほ乳類などは)体が大きいほど声道で空気を振動させる空間が広くなり、低い共鳴音が響く。は虫類にそもそもこうした共鳴の仕組みがあるのか、知られていなかった。たとえばカエルなどの両生類にはない。なのでまず、ワニが共鳴の仕組みを使っているのかを証明する必要があった」とレバー博士は説明した。

研究チームはワニを密閉したタンクに入れ、通常の空気と共に酸素とヘリウムを注入した。空気の構成要素が変われば、声帯の震動が変わらなくても、ワニの出す音に変化が出るからだ。

その結果、ワニの体の大きさと発する共鳴音が連動していることが明らかになった。

下の音声では、初めに聞こえる音が通常の空気中でのワニの声、次に聞こえる音が、ヘリウムを吸ったワニの声だ。

イグ・ノーベル賞は通常、米ハーヴァード大学のサンダース劇場で授賞式が行われる。たくさんの紙飛行機が飛び交い、スピーチが長引くと、小さな女の子が「つまんない!」と叫ぶことで有名だ。

しかし今年は新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの発表となった。


各分野での受賞内容は以下の通り。

音響学賞ヨウスコウワニが声を出すメカニズムをヘリウムガスで解明した研究

心理学賞: 眉毛の分析でナルシシストを特定する方法の研究

平和賞:インドとパキスタンの両政府に対し、外交官が真夜中にひそかにいわゆる「ピンポンダッシュ」の応酬を行った功績

物理学賞: 高周波でミミズを震動させると形状がどう変化するのかについての研究

経済学賞:国ごとの給与格差と平均的なキスの回数の相関性に関する研究

マネジメント賞: 中国の暗殺者5人が、殺人依頼を次々に下請けに出した結果、最終的に誰も犯罪を犯さなかった功績

昆虫学賞: 多くの昆虫学者が、昆虫ではないクモを怖がっているという証拠を示した研究

医学教育賞:新型コロナウイルスのパンデミックを利用し、政治家が医師や科学者以上に人々の生死に影響を与えることを示した功績。受賞者は、ジャイル・ボルソナロ大統領(ブラジル)、ボリス・ジョンソン英首相、ナレンドラ・モディ首相(インド)、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(メキシコ)、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(ベラルーシ)、ドナルド・トランプ米大統領、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領(トルコ)、ウラジミール・プーチン大統領(ロシア)、グルバングル・ベルディムハメドフ大統領(トルクメニスタン)。

マテリアル・サイエンス賞:凍らせたヒトの糞便から作った刃物が役に立たないことを証明した研究

(英語記事 Alligator on gas snaps up Ig Nobel prize