田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 菅義偉(すが・よしひで)政権の経済政策を「スガノミクス」と呼称することが、国際的に広まりつつあるが、国内ではいまだ馴染みがないのかもしれない。その理由はどのような政権であれ、現在の日本が直面している最大の課題が新型コロナ危機であり、危機対応にはそう大差がないからだ。

 つまり、菅政権の個性が出にくい状況になっているのである。コロナ危機において、求められている政策を単純化して説明すれば、感染を抑制しながら、経済を危機前の水準まで回復させることだ。

 そのためには、さまざまな分野での自粛要請や規制の緩和、そしておカネが不足している個人や企業への支援が必要である。

 この新型コロナ危機前の経済水準に回復しなければ、菅政権だけではなく、いかなる政権も「失政」と判断されるだろう。そのためできるだけ早期に危機前の状況に戻ることが求められている。

 国際通貨基金(IMF)など国際機関の推計で、2022年には日本経済が危機前の水準に戻るとされている。その時期を早められるかどうかで、菅政権のコロナ対策に対する評価が決まってくる。

 だが、無個性というわけではもちろんない。例えば、前例主義や悪しき慣習、そして既得権益によって継続しているような「縦割り行政」の弊害をなくすことが、やはり菅政権の個性になるだろう。

 河野太郎行政改革担当相は日ごろから行政改革に強い意欲を示していたので、適材適所だろう。政権が掲げるデジタル庁の設置は最も分かりやすい縦割り行政の打破に繋がる可能性がある。
記者会見に臨む河野太郎行政改革・規制改革担当相=2020年9月17日、首相官邸(佐藤徳昭撮影)
記者会見に臨む河野太郎行政改革・規制改革担当相=2020年9月17日、首相官邸(佐藤徳昭撮影)
 平井卓也デジタル改革相は2021年中の新設の意向を表明しているが、時限的なデジタル庁の設置も、その期間内に成果を出すことが目標化しやすい。そして、デジタル庁の縦割り行政の打破の一例は、やはりマイナンバーカードを利用した一元的な税や社会保険料、NHKの受信料などの歳入管理だろう。新型コロナ危機で国民一人当たりの定額給付金を支給することが遅れた背景の一つに、このマイナンバーカードを効率的に政府が運用できていなかったことが指摘されている。

 ただ、米国のように政府発行小切手の形での支給方法もあったとする批判もある。いずれにせよ、今後も同様の経済危機が発生しないとは限らない。