2020年09月26日 12:41 公開

ドナルド・トランプ米大統領は25日、連邦最高裁判事の人事で、人工中絶に反対するなど社会的保守派が歓迎する48歳女性判事を、がんで亡くなったリベラル派判事の後任として指名する方針を固めたという。複数の米メディアが伝えた。上院に承認されれば、最高裁判事の構成は6対3で圧倒的に保守に傾くことになる。

複数の米報道によるとホワイトハウスは26日にも、第7巡回区控訴裁判所のエイミー・コーニー・バレット判事の指名を発表する方針。リベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が18日にがんのため87歳で亡くなって以降、トランプ氏は後任の人選を進めていた。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースは複数の消息筋の話として、トランプ氏がバレット判事の指名を決めたと伝えた。ただし25日夜の時点で記者団に質問されたトランプ氏は、「明日になったら分かるよ。(候補の判事たちは)みんな素晴らしいから、誰がなってもおかしくない」とはぐらかした。

上院がバレット判事を承認すれば、連邦最高裁(定数9人)は当面、保守派6人、リベラル派3人の構成になる。

最高裁判事は終身制。人工中絶や医療保険制度、銃規制や同性結婚など国民生活に大きく影響する判断をするほか、大統領選の開票結果で両党が紛糾(ふんきゅう)した場合はその決着に影響する判断を示す可能性もある。それだけに、11月3日の大統領選を目前にした後任人事に、野党・民主党は猛反発している。

2016年に当時野党だった共和党が大統領選の年に終身の最高裁判事を決めるべきではないとして、バラク・オバマ大統領(当時)が指名した候補について審議を拒否した経緯もある。

バレット判事は承認されるのか

大統領が指名する判事候補は、上院の司法委員会(委員22人)が審査し、本会議が過半数で承認する必要がある。司法委員会は通常3~5日の公聴会で指名候補に質疑を重ねた後、本会議の採決にかけるか決議する。

上院(定数100)は現在、与党・共和党が53議席で多数を占める。数人の共和党議員が大統領選の前に最高裁判事を決めるべきでないと発言しているものの、共和党はすでに承認に必要な51人の票を確保しているとされる。

CBSは複数の消息筋の話として、ホワイトハウスが共和党の上院議員たちに連絡をとり、来週にもバレット判事と面談するよう調整を始めていると伝えた。上院議員たちとの顔合わせは30日から始まる見通し。

共和党幹部のミッチ・マコネル上院院内総務は11月3日の大統領選より前に、上院本会議で承認決議を行うと強調している。

予想外の展開を除き、民主党にはバレット判事の承認を阻止する方策がないものとみられている。

トランプ氏は就任後、すでに2人の保守派判事最高裁に送り込んでいる。1人の大統領が4年間で3人も最高裁判事を決めるのは異例。終身任期の最高裁判事は、自分を指名した大統領がホワイトハウスを去った後も、最高裁に留まり、重要判決を下し続ける。

ギンズバーグ判事の死後に実施されたロイター・イプソス世論調査によると、成人アメリカ人の62%が、後任判事は大統領選の勝者が決めるべきだと回答。23%はこれに反対し、その他は「分からない」と答えている。


エイミー・コーニー・バレット判事とは

ニューオーリンズ出身の敬けんなキリスト教カトリック信者で、2013年には雑誌記事で、「命は受胎の時に始まる」と発言。これは人工中絶に反対する立場の表明として受け止められる。アメリカでは1973年の「ロー対ウェード」判決で、全国的に人工中絶が女性の権利として認められた。しかし、近年では州法レベルで中絶を規制する動きが活発化し、これに最高裁が違憲判決を下すなど、法廷闘争は続いている。

こうした状況で、最高裁が「ロー対ウェイド」判例を覆すことを期待する中絶反対派は、バレット判事の就任に大きな期待を寄せている。

バレット判事はこのほか、トランプ大統領による強硬な移民規制策や、銃規制の緩和も支持してきた。

2017年5月にトランプ大統領によって第7巡回区控訴裁判所判事に指名された後、上院司法委員会の公聴会で野党・民主党から厳しい質問を受けたものの、同年10月に本会議で賛成55、反対43で承認された。

この時の公聴会でバレット判事は、自分の信仰心が自分の司法判断に影響するかどうか、民主党議員から質問された。

ダイアン・ファインスタイン上院議員(カリフォルニア州選出)に、「あなたの中にはドグマ(教義、偏見)が大きく響いている」と言われると、バレット判事は自分は司法判断と信仰心は切り分けていると強調していた。

2018年6月に当時81歳だった中道派のアンソニー・ケネディー最高裁判事が引退した時点で、トランプ氏は後任にすでにバレット判事を検討していたとされる。

インディアナ州のノートルダム大学ロースクールを卒業後、保守派のアントニン・スカリア最高裁判事の調査官を務めた(スカリア判事は2016年に死去)。また母校を含めて複数の大学で法学を教えた。

夫はインディアナ州の元連邦検事で、7人の子供がいる。そのうち2人はハイチ出身の養子。夫妻の間に生まれた一番下の子供は、ダウン症候群を患う。


(英語記事 Amy Coney Barrett 'to be picked by Trump for Supreme Court'