小倉正男(経済ジャーナリスト)

 菅義偉(すが・よしひで)首相は、「いま取り組むべき最優先の課題は新型コロナウイルス対策」と表明している。新型コロナと経済では、安倍晋三前首相の路線が継承され、「両立を目指す」としている。「さもなくば国民生活が成り立たなくなる」(首相就任会見)。

 秋の4連休は、多くの観光地が久々に盛況となり賑わった。プロ野球などスポーツの観客人数規制も緩和された。「新型コロナと経済の両立」が促進されている。いわば「withコロナ」の新しい日常ということになる。連休明けの週末、東京都心部の盛り場も賑わいが戻っている。
 
 経済は、実体から見れば新型コロナ禍で悲惨な事態になっている。だが、株価は「茹でガエル」ではないが、日銀の異次元金融緩和、上場投資信託(ETF)買いで何もなかったように高水準を維持している。菅首相は、中小企業への無利子無担保融資、雇用調整助成金、持続化給付金など支援策で経済を全力で支えると表明している。

 株価を含む金融は経済の「血液」であり、危機は表面的には抑えられている。だが、産業界各社の経営者個々に当ると危機感は強烈である。産業界といっても、広範囲であり、スタンスは各社さまざまだが、これまで経験のないコロナ不況からの「生き残り」「勝ち残り」を意識して戦略を根本的に組み直す企業もないではない。各社がそれぞれ「危機管理」(クライシスマネジメント)を必死に実行している。

 生き残りが至上命題であり「最悪の想定」を採っている。声高にクライシスマネジメントと表明しているわけではない。むしろ、密かにそれを行っているのだが、甘い見通しは捨てている。「2020年度は赤字が不可避。21年度も景気・業績はほとんど回復しないと見込んでいる」。企業経営者からそうした厳しい見方が出てくる。

 一般には、20年度はともかく21年度にはコロナ禍が緩和され、景気回復が期待されている。だが、そうした「最善の想定」は片隅にもない。危機管理に踏み込んでいる企業は、多少とも回復があれば「儲けもの」というスタンスだ。コロナ不況は長期化すると睨(にら)んでいる。コロナと経済の両立、「withコロナ」という現状もコロナ不況が長引かざるを得ないという見方の根底にある。
新型コロナウイルス感染拡大で暴落する直前の水準に回復した、日経平均株価の終値を示すボード=2020年9月3日、東京都中央区
新型コロナウイルス感染拡大で暴落する直前の水準に回復した、日経平均株価の終値を示すボード=2020年9月3日、東京都中央区
 両立を進めればコロナ感染がぶり返すというのはこれまでの知見にほかならない。コロナワクチンが早期に開発されれば、経済環境・状況は変わる可能性がある。だが、それも不確定要素であり、極論すれば「儲けもの」に近い受け止め方である。