2020年09月29日 11:47 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領が過去15年間のうちの10年で所得税をまったく納めていなかったと報じられたことについて、米野党・民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は28日、トランプ氏の租税回避は「国家安全保障上」の問題だと述べた。

米紙ニューヨーク・タイムズが27日に報じた過去20年以上にわたるトランプ氏や関連企業の納税記録によると、トランプ氏が大統領に当選した2016年に納税した連邦所得税は、わずか750ドル(約8万円)だった。

ペロシ下院議長は、トランプ氏が外国の利害関係者から資金提供を受けていた可能性について言及した。

<関連記事>

ニューヨーク・タイムズの報道によると、トランプ氏が2016年と2017年に納めた連邦所得税は、それぞれ750ドルだった。また、大統領は個人として3億ドル以上の債務を抱えており、今後4年間にいずれも返済期限が来るという。

トランプ氏は報道について「フェイクニュース」だと反論した。

「国家安全保障上の問題」

ペロシ氏は米NBCに対し、今回の報道は「大統領が4億ドル(約421億6000万円)以上もの債務を抱えている」ことを示していると述べた。

「誰に対して? 複数の国に? 債権者は(トランプ氏に)どういう影響力を持つのか?」とペロシ氏は述べた。「私にとって、これは国家安全保障上の問題だ」。

「現職の大統領が、自らが保証した債務を数億ドルも抱えているのに、誰が債権者なのか私たちには分からない」とペロシ氏は指摘。その上で、トランプ氏がロシアのウラジーミル・プーチン大統領から借金をしているかもしれないと述べた。

「プーチン氏は政治的に、個人的に、金銭的に、大統領の何を押さえているのか」

記事にはトランプ氏がロシアから資金提供を受けていたとは書かれていない。しかし、トランプ氏の複数の企業が、大統領の知己を得たい、あるいは便宜を得たい「ロビイストや海外政府関係者」から資金提供を受けてきたとある。

トランプ氏が過去15年間のうちの10年で、所得税をまったく納めていないのは、「主に」トランプ一族の所有企業が損失を計上しているからで、「慢性的な損失と長年にわたる租税回避」が繰り返されていたと、記事は伝えている。

「違法に情報入手」

トランプ氏は27日のツイートで、自身の納税問題と、「違法に入手した情報と悪意のみがもとのナンセンス」を取り上げたメディアを非難した。

また、「何百万ドルもの税金を払っている」としつつ、税控除も受けていると述べた。損失に関する報道については、自分の資産価値に比べれば「ごくわずかな債務」だと付け加えた。

ニューヨーク・タイムズは、1990年代までさかのぼるトランプ氏とトランプ・オーガナイゼーション所有の複数企業の納税記録のほか、トランプ氏自身の2016年と2017年の納税記録を点検したとしている。

入手したすべての情報は、合法的にその情報を見る権利のある情報源から提供されたものと説明している。

11月3日の大統領選にむけて、トランプ氏と民主党候補のジョー・バイデン前副大統領は29日夜に初の討論会を控えている。こうした中でトランプ氏の納税実態が報じられた。

米大統領は1970年代以降、選挙段階で納税記録など財務状況を公表するのが慣例となっていたが、トランプ氏はこれまで納税記録を明らかにしていない。

7月には米連邦最高裁がトランプ氏の財務記録について、ニューヨーク連邦地検の閲覧を認める判断を示した

「租税回避のため損失申告」

ニューヨーク・タイムズはさらに、各地のゴルフ場やホテルなどトランプ氏が所有する事業の「ほとんど」は、「数千万ドルか数万ドルの損失を毎年申告している」と指摘した。

「この方程式が、トランプ氏の財務の錬金術の鍵となる要素だ。有名人として得た収入で、ハイリスクな事業を購入して支え、そしてその事業が出す損失を使って納税を回避する」のだと、記事は書いている。

同紙は入手した納税記録から、トランプ氏が外国に持つ企業での収益も計算したという。それによると、大統領就任から2年間に海外で7300万ドルの収入を得たという。

収入の一部は、アイルランドや英スコットランドに所有するゴルフ場から得たものだが、それに加えてトランプ・オーガナイゼーションは「独裁的指導者のいる国や、地政学的に緊張状態にある国で、数々のライセンス契約」を交わすことで収入を得ていたという。

同紙によると、こうしたライセンス契約の中には、フィリピンでの300万ドル、インドでの230万ドル、トルコでの100万ドルなどが含まれる。

また、トランプ氏は娘で大統領上級顧問のイヴァンカ・トランプ氏にコンサルティング料として74万7622ドル(約7880万円)を支払い、2017年の課税所得を減らしていた証拠があるという。

トランプ氏は、かつて司会していたリアリティ番組「アプレンティス」に出演していたころ、ヘアスタイリング代として7万ドル(約740万円)以上を事業費として計上していたとも報じられている。

大統領になる前、トランプ氏は大富豪の不動産王として知られ、一代で億万長者となり大成功を収めたというイメージを築いてきた。しかし、今回発覚した内容を受け、そのイメージが壊れる可能性があるとの声が上がっている。

米労働統計局によると、2018年にアメリカの平均的な世帯が納めた連邦所得税は9302ドル(約98万円)で、平均収入は(約830万円)だった。

2018年の所得申告でトランプ氏は、少なくとも4億3490万ドルの収入があったとしている。これに対してニューヨーク・タイムズは、納税記録から実は同年のトランプ氏は4740万ドルの損失を計上していたと書いている。

報道をめぐる反応

トランプ氏とトランプ・オーガナイゼーションは報道内容を否定したが、同氏の租税回避疑惑について批判の声が上がっている。

ペロシ下院議長は、国家安全保障上の問題だけでなく、アメリカの労働者世帯への侮辱だと指摘した。

バイデン氏はいまのところコメントしていないが、バイデン陣営は、教師も消防士も看護師も、750ドルより多くの連邦所得税を納めているとツイートした。

(英語記事 Trump taxes are 'national security issue' - Pelosi