2020年09月30日 12:10 公開

旧ソビエト連邦のアルメニアとアゼルバイジャンの間で、係争地ナゴルノ・カラバフをめぐって起きている戦闘で、29日までに100人近くが死亡したとみられる。アルメニアは同日、同国軍の戦闘機1機がトルコ軍の戦闘機に撃墜されたと述べた。

両国による大規模な戦闘は27日から続いており、29日までの3日間で民間人を含む多数の死者が出ている。

双方ともナゴルノ・カラバフ以外の場所で攻撃を受けたと非難し合っており、戦闘地域が広がりつつある。

山岳地帯のナゴルノ・カラバフは、国際的にはアゼルバイジャンの一部と認められている。だが、1988~1994年に同国とアルメニアが戦争を繰り広げて以降、アルメニア系住民が支配している。


アルメニアに軍事基地をもつロシアは、即時停戦を求めている。ロシアはアゼルバイジャンとも友好関係を保持している。

しかし、アルメニアのニコル・パシニャン首相はロシアのメディアに、戦闘が続いている間に対話は適当ではないと述べるなど、現時点で停戦の可能性は小さい。

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領もロシアのメディアに、アルメニアの現在の姿勢を考えると、交渉はありえないと述べた。

双方に多数の死傷者か

アルメニアの通信社によると、ナゴルノ・カラバフの自治当局は、戦闘発生以降に部隊の兵士87人が死亡し、120人が負傷したと述べた。

同当局はまた、アゼルバイジャン側の死者は400人近くに上っているとし、同国軍の航空機1機、ヘリコプター4機、多数の戦車が破壊されたと述べたという。

アゼルバイジャンは軍の被害を明らかにしていない。しかし、アルメニアの砲撃で民間人12人が死亡したと発表している。


メディア報道によると、アゼルバイジャン防衛省はアルメニア軍について、フュズリ、ジェブライル、アーダム、テルテルの各地区にあった拠点を繰り返し奪回しようとし、失敗したと述べた。

また、アルメニア軍は車列が攻撃を受け、多大な損害を被ったと話した。

双方の死傷者に関する説明はともに証明されていない。

トルコ軍機が撃墜?

アルメニア当局によると、旧ソ連製のアルメニア軍のSU-25戦闘機が29日朝、同国領空でトルコ軍のF-16戦闘機の攻撃を受け、パイロットが死亡した。

トルコ軍のF-16戦闘機は、アルメニアの領空内60キロメートルまで侵入していたという。

アゼルバイジャンを支援しているトルコは、この主張を「まったくの虚偽」として否定している。

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領の側近は、「アルメニアは安っぽいプロパガンダ工作を展開するのではなく、占領している地域から撤退すべきだ」と述べた。

アルメニアの主張を裏付ける物的証拠は示されていない。アゼルバイジャンは、証拠を提示するよう求めている。同国軍はF-16戦闘機を所有していないと述べている。

紛争の背景

ソ連が崩壊に近づいた1988年、アゼルバイジャン軍とアルメニアの分離独立派が激しい戦闘を開始。1994年に停戦が合意され、ナゴルノ・カラバフはアルメニア系の住民が統治することになった。

この戦争では何万人もの死者が出たほか、多くのアゼルバイジャン系住民が住む家を追われた。

現在、ナゴルノ・カラバフは実質的に自治区となっており、アルメニアからの支援に大きく頼っている。ただ、アルメニアを含む国連加盟国は、ナゴルノ・カラバフを国と認めていない。

ナゴルノ・カラバフ周辺のアゼルバイジャンの領土の一部も、アルメニアが支配している。


恒久的な和平の合意に向けた協議は成功しておらず、ナゴルノ・カラバフはソ連崩壊後のヨーロッパにおける「凍結した紛争」となっている。

アルメニアとアゼルバイジャンは長年にわたり、停戦合意に違反して散発的な戦闘を繰り返しており、兵士に死者も出ている。アルメニアは、トルコとアゼルバイジャンとの国境封鎖により、深刻な経済問題に直面している。

ロシア、フランス、アメリカが共同議長を務める欧州安全保障協力機構(OSCE)のミンスク・グループは、紛争の終結を目指して仲介を試みている。

(英語記事 Armenia says its fighter jet 'shot down by Turkey'