上西小百合(前衆議院議員)

 菅義偉(すが・よしひで)内閣が発足しておよそ半月が経過したが、改めてこの間の政局を振り返ってみたい。去る8月28日、安倍晋三前総理は持病の悪化が国政に影響を及ぼす事態を避けたいとして、辞意を表明した。第2次政権以降の連続在職日数は憲政史上最長の2822日に上った。

 残念なことに、政権長期化に伴う弊害とも言える負の遺産として、内閣人事局の新設後に報じられた官僚による忖度疑惑や、財務省による公文書改ざんに発展した、いわゆる「モリカケ問題」などが残った。国民からは怒りの声も上がったが、外交面では短期間でコロコロと変わるこれまでの総理とは異なり、国際的な信用を得て地に足のついた動きも取れていたと思う。ひとまずは敬意を表し、お疲れさまでしたと申し上げたい。

 世論の中には「モリカケ問題追及から逃げたいがための辞職ではないか」と訝(いぶか)る声もあるが、安倍前総理は最後に、新型コロナウイルス対策の指針をまとめ上げてから辞任した。総理として国政に尽力したかったという気持ちはひしひしと伝わってくる。国が難病に指定する潰瘍性大腸炎を持つことを口惜しく思ったのではないか。元も子もないことを言ってしまえば、国のトップであるポジションを手放したい人などいないのだから。

 その後、自民党総裁選へと突入していったが、石破茂元幹事長と岸田文雄前政調会長がのんきにメディア露出を増やす中、官房長官だった菅氏は出馬の意向をなかなか明らかにしなかった。

 総裁選は国民によって選出された自民党所属議員らによって決定されるものであり、国民による直接投票で決められるものではない。今回は党員・党友も投票することができずに無視される形になった。緊急性があるとの理由付けがなされたが、それでは一体何のために副総理を任命しているのか甚だ疑問だ。
東京五輪大会組織委の森喜朗会長と談笑する安倍晋三前首相(左)=2020年9月28日、東京都港区(三尾郁恵撮影)
東京五輪大会組織委の森喜朗会長と談笑する安倍晋三前総理(左)=2020年9月28日、東京都港区(三尾郁恵撮影)
 ゆえに、いくらメディアに出て政策を主張したとて当落にはほとんど影響はない。メディア露出が次回につながるという見方もあるが、自民党総裁選はそんなに甘いものではない。

 メディアで浮き足立つ2人を尻目に菅氏は着実に支持票獲得を進めていた。見事な動き方であったし、党内支持派閥からの信頼度も上がったことだろう。