2020年10月01日 12:12 公開

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は9月30日、アルメニアとの間で4日間続いている戦闘について、係争地ナゴルノ・カラバフからアルメニア軍が撤退するまで続けると表明した。

ナゴルノ・カラバフ地域で9月27日に発生した戦闘は、これまで100人以上の死者が出たと伝えられている。アゼルバイジャンとアルメニアの双方が相手国について、実効支配線を越えて砲撃してきたと非難している。

アリエフ大統領は、「条件は1つだけだ。アルメニア軍が私たちの土地から即刻、無条件で完全に撤退しなくてはならない」と述べた。

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同地域は公式にはアゼルバイジャンの一部だが、アルメニア系住民が統治し、自治を宣言している。アルメニアは自治を支持しているが、独立国としては認めていない。

ともに旧ソビエト連邦を構成していたアゼルバイジャンとアルメニアは、1988~1994年に同地域の帰属をめぐって戦った経緯がある。

他国を巻き込む恐れ

1994年の停戦合意以降で最大規模となっている両国の戦闘は、他の国々を巻き込む恐れが高まっている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は30日、アゼルバイジャンを強く支持しているトルコの「戦時のようなメッセージを非常に憂慮している」と述べた。

トルコは、アゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフ地域を取り戻すのを支援する「完全な準備」ができているとしている。


マクロン氏はまた、「アルメニアとアルメニア国民に言う。フランスは役割を果たす」と述べ、アルメニアへの支持を明確にした。フランスにはアルメニア系住民が多数いる。

さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と今回の戦闘について協議すると話した。

ロシアはアルメニアと軍事同盟を結んでおり、同国に軍基地も置いている。しかし、アゼルバイジャンの指導者らと親しい関係にあり、戦闘の即時停止を求めている。

アルメニアのニコル・パシニャン首相は30日、軍事同盟に基づくロシアの戦闘への介入については、まだ協議していないと述べた。

英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)の南コーカサス専門家、ローレンス・ブロアース氏は、トルコからこれまでより大きな支援を受けているアゼルバイジャンがアルメニアとの新たな交渉を拒んでいるなど、戦闘の長期化が見込まれると説明。

衝突が長引くことで、他国が介入し、より広範囲な戦闘に発展する恐れがあると指摘している。

シリアから雇い兵か

アゼルバイジャンは30日、「敵の」戦車2両を破壊した場面とする映像を公開。アルメニア部隊がトナシェン周辺から退却したと述べた。


アゼルバイジャンの検察トップは、これまでに同国の民間人14人が死亡、同46人が負傷したと発表した。

一方のアルメニアは、アゼルバイジャンの空爆により、ナゴルノ・カラバフのマルタケルトで民間人3人が死亡したとした。アルメニアの国営通信社は、戦闘が始まってから民間人7人と兵士80人が死亡したと伝えた。

アルメニア防衛省は、トルコ軍のF-16戦闘機に撃墜されたとするアルメニア軍のSU-25戦闘機の写真を公表した。トルコはこれを「安っぽいプロパガンダ」と退け、アゼルバイジャンもアルメニアがうそをついているとしている。


兵士の1人はBBCアラビア語に、シリア北部で先週雇われ、他のシリア人らと共にトルコを経由して戦闘地域に入ったと述べた。2000ドル(約21万円)で、アゼルバイジャン国境の「軍事拠点を守るよう」言われたという。軍事訓練は受けず、アゼルバイジャンの軍服を着てナゴルノ・カラバフに送られたと話した。

「車が止まり、前線に来ていることに驚いた」、「爆撃が始まり、みんな恐怖で泣いていた。家に帰りたかった」。

トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領の側近はこの証言について、「まったく根拠がない」、「一種の偽情報キャンペーンだ」とし、兵士を雇ってはいないと述べた。

シリアの人権団体によると、同国の約320人の雇い兵が、トルコの治安関連企業によってアゼルバイジャンに送られているという。また、アルメニア出身のシリア住民も、戦闘のためにアルメニアに送り込まれているという。

紛争の背景

ソ連が崩壊に近づいた1988年、アゼルバイジャン軍とアルメニアの分離独立派が激しい戦闘を開始。1994年に停戦が合意され、ナゴルノ・カラバフはアルメニア系の住民が統治することになった。

この戦争では何万人もの死者が出たほか、多くのアゼルバイジャン系住民が住む家を追われた。

現在、ナゴルノ・カラバフは実質的に自治区となっており、アルメニアからの支援に大きく頼っている。ただ、アルメニアを含む国連加盟国は、ナゴルノ・カラバフを国と認めていない。

ナゴルノ・カラバフ周辺のアゼルバイジャンの領土の一部も、アルメニアが支配している。


恒久的な和平の合意に向けた協議は成功しておらず、ナゴルノ・カラバフはソ連崩壊後のヨーロッパにおける「凍結した紛争」となっている。

アルメニアとアゼルバイジャンは長年にわたり、停戦合意に違反して散発的な戦闘を繰り返しており、兵士に死者も出ている。アルメニアは、トルコとアゼルバイジャンとの国境封鎖により、深刻な経済問題に直面している。

ロシア、フランス、アメリカが共同議長を務める欧州安全保障協力機構(OSCE)のミンスク・グループは、紛争の終結を目指して仲介を試みている。

(英語記事 Azerbaijan to fight until Armenia 'exits our land'