2020年10月01日 12:37 公開

アメリカのドナルド・トランプ大統領(74)は9月30日、白人至上主義団体について、「彼らは身を引かねば(stand down)ならない。法執行機関に仕事をさせないと」と述べた。トランプ氏は前日に行われた、11月の米大統領選にむけた与野党の大統領候補者による第1回テレビ討論会で、白人至上主義団体に「引き下がって、待機(stand by)するように」と指示するような発言をし、批判を受けていた。

トランプ氏は29日夜、オハイオ州クリーブランドであった野党・民主党の大統領候補ジョー・バイデン前副大統領(77)との初の直接対決の場で、司会者から白人至上主義団体を非難するよう求められても明確に非難しなかった。

司会のクリス・ウォラス氏(フォックス・ニュース司会者)が白人至上主義団体「プラウド・ボーイズ」について尋ねると、トランプ氏は「引き下がって、待機するように。ただし言っておくが、誰かがアンティファと左派をなんとかしないと」と述べた。

一夜明けた30日、トランプ氏は「プラウド・ボーイズが誰なのか知らない」と釈明した。

プラウド・ボーイズのメンバーは、トランプ氏の討論会での発言は「歴史的」で、自分たちの活動に対するお墨付きを得たとしている。

バイデン氏はトランプ氏が「白人至上主義を否定することを拒否した」と述べた。

激しい応酬が繰り広げられたトランプ氏とバイデン氏の初の討論会を、米メディアは混迷して見苦しく、ひどいものだったと報じた。

討論会を調整する大統領候補討論会委員会(CPD)は、「秩序維持」のため、今後予定されている2度の討論会で新たな措置を導入すると発表した。一方トランプ氏は、新しい司会者ともっと賢い民主党候補を用意すべきだとした。

討論会では政策についてあまり得られるものはなかった。ある世論調査ではバイデン氏がわずかに優勢だが、別の世論調査ではアメリカ人有権者の9割がすでに投票する候補者を決めていることが示されている。そのため、今回の討論会でさほど変化は生まれないかもしれない。

バイデン氏は全国世論調査で、一貫してトランプ氏をリードしている。しかし、いわゆる激戦州での調査では両候補の支持率が拮抗(きっこう)していることがうかがえる。

両候補によるテレビ討論会は計3回。次回は10月15日にフロリダ州で、最後は22日にテネシー州で行われる。


「誰なのか知らない」

トランプ氏は9月30日にホワイトハウスで、ミネソタ州での選挙キャンペーンに出発する前に記者団の取材に応じた。

記者の1人がプラウド・ボーイズについて尋ねると、「彼らが誰なのか知らない。私に言えるのは、彼らは身を引かねばならないということだけだ。法執行機関に仕事をさせないと」と答えた。

トランプ氏はアンティファの活動を非難するよう、バイデン氏に繰り返し求めた。

討論会での「待機(stand by)」発言については説明しなかった。白人至上主義者からの支持を歓迎するかと問われると、「法と秩序が我々の選挙キャンペーンの非常に重要な部分」であってほしいと述べるにとどめた。

発言について再び聞かれると、「私は常に様々なかたちで、あらゆるかたちでそれ(白人至上主義)を糾弾してきた」と述べた。

2017年に南部バージニア州シャーロッツヴィルで、白人極右集会に抗議する人たちの間にネオナチの人物が自動車で突入して1人が死亡し、多数が負傷した事件の後、ホワイトハウスは声明で、「KKK(米国の白人至上主義団体クー・クラックス・クラン)やネオナチ、白人至上主義者、その他のヘイト(憎悪)団体」を非難した。一方でトランプ氏は、「双方に非常にすばらしい人たち」がいるとも述べた。

トランプ氏は白人至上主義団体の脅威を軽視しがちだが、国土安全保障省は、白人至上主義団体は来年も「永続的かつ致命的な脅威」であり続けるだろうとしている。

BBCのアンソニー・ザーカー北米担当記者は、トランプ氏は難しい問題や厄介な問題に直面すると、しばしば矛盾した回答をする傾向にあり、自分の支持者に対して(そして自分を中傷する人に対しても)何を信じるのかを選択させていると指摘する。白人至上主義者や極右団体について対処するときには、その傾向がより顕著に現れるという。

トランプ氏は白人至上主義について何と?

アメリカでは現在、人種差別や警察の暴力をめぐる抗議デモが続いている。

29日のテレビ討論会では、人種問題についてウォラス司会者がトランプ氏に単刀直入に、「白人至上主義を非難する用意はありますか」と尋ねると、トランプ氏は「もちろん、そうする用意はある」と返答。「ではそうしてください」と念を押されると、一拍の間を置いた後、「なんて呼びたいんだ? 名前をくれないか。誰を非難させたいんだ」と聞き返した。さらに、「でも悪いのはほとんどが左派だ。アンティファは本当に悪い」と話し続けた。

バイデン氏が2度、白人至上主義団体「プラウド・ボーイズ」の名前を出すと、トランプ氏は「プラウド・ボーイズ、引き下がって、待機するように。ただし言っておくが、誰かがアンティファと左派をなんとかしないと。これは右派の問題ではない」と述べた。

白人至上主義者に「承諾与えた」

バイデン氏は討論会の翌日、「ほかに言いようがない。アメリカ合衆国大統領が昨夜の討論会の場で、白人至上主義を否定することを拒否した」と、討論会の動画付きでツイートした。

動画の最後には、プラウド・ボーイズのオンライン・フォーラムから引用した「すごくうれしい。私たちは準備万端だ! 大統領、待機しています」とのコメントが表示されている。

米ユダヤ人団体「名誉毀損(きそん)防止同盟(ADL)」のジョナサン・グリーンブラット代表は、トランプ氏の発言は「驚くべきもの」だと述べた。

過激派の動向を監視するSITEのリタ・カッツ代表は、トランプ氏が「白人至上主義者に再び承諾を与えた」とした。

プラウド・ボーイズのメンバーは、トランプ氏に支持されていると確信したという。

同団体をとりまとめるジョー・ビッグス氏は、「トランプ大統領がプラウド・ボーイズに待機するよう命じた。誰かがアンティファに対処する必要があるからと。(中略)かしこまりました! 私たちは準備万端です!!」と投稿した。

あるメンバーは、新規の入団希望者がすでに急増していると述べた。

(英語記事 Under-fire Trump seeks to qualify far-right remarks