吉川圭一(グローバル・イッシューズ総合研究所代表)


 菅義偉(すが・よしひで)政権が発足したが、米国のメディアを見ていると、その評価は分かれているようだ。ただ、菅首相と後ろ盾になった自民党の二階俊博幹事長を親中派ないしハト派と考える傾向は、どのメディアでも変わらない。

 面白いことに安倍晋三前首相は巧みな外交で米国と中国の両方と良好な関係を築けたが、外交経験のない菅首相には難しく、ますます親米・反中にならざるを得ないのではないか、という意見もある。

 だが、概ねは、菅政権は親中・ハト派政権であり、トランプ政権とはうまくいかないとの見方だ。ゆえに、むしろ11月の米大統領で民主党候補のバイデン前副大統領(親中派)が勝利した場合、協力しやすくなるという論調が大半を占める。

 こうした評価になっている理由は、ワシントンでは安倍政権崩壊の一つの要因として、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア計画」問題を挙げている点にある。計画が頓挫した後、高機能の巡航ミサイルを購入する計画をまとめられず、トランプ氏と安倍氏との関係が悪化したという説があるのだ。

 また、菅氏と公明党との太いパイプは米国でも知られており、公明党の反対で高機能の巡航ミサイルが購入できなかったのであれば、新たな連立政権ができない限り、敵基地攻撃問題が解決しないとの懸念もワシントンで広がっている。

 これらを踏まえれば、トランプ氏が再選した場合、菅内閣どころか日本の立場が、かなり苦しいものになりかねない。

 一方で、米国の保守系メディアの一部が評価しているのは、岸信夫防衛相である。安倍氏の実弟として兄の志を継ぎ、巡航ミサイル導入や敵基地攻撃の法整備に力を入れるとの期待があるからだ。彼のよい意味でのタカ派的な思想は、ワシントンでもそれなりに知られている。
栄誉礼を受けた後、巡閲する岸信夫防衛相(左から2人目)=2020年9月17日、東京・市谷本村町の防衛省(酒巻俊介撮影)
栄誉礼を受けた後、巡閲する岸信夫防衛相(左から2人目)=2020年9月17日、東京・市谷本村町の防衛省(酒巻俊介撮影)
 それだけではない。ワシントンの保守派が岸氏に望むのは、台湾に近い人物であるということだ。8月には李登輝元総統の葬儀にも参列しており、その際も含めて蔡英文総統とも親交がある。