2020年10月06日 12:00 公開

ジェイムズ・ギャラガー、保健・科学担当編集委員

C型肝炎の原因となるウイルスを発見した英米の科学者3人が、今年のノーベル医学生理学賞を受賞した。

受賞したのは、イギリスのマイケル・ホートン教授、アメリカのハーヴェイ・オルター教授、同チャールズ・ライス教授の3人。

選考に当たったスウェーデンのカロリンスカ研究所は、この発見は「数百万人の命を救った」と称賛した。

C型肝炎ウイルスは肝臓がんの原因となるほか、肝臓移植が必要になる主な原因でもある。

1960年代、輸血を受けた人が原因不明の慢性肝炎になることが大きな問題となっていた。カロリンスカ研究所は、当時の輸血は「ロシアン・ルーレット」のようなものだったと説明している。

肝炎の原因が明らかになったことで高度な血液検査が可能になり、世界各国で症例が減少。また、効果的な治療薬の開発が進んだ。

「今では歴史上で初めて、この病気が治療可能となった。C型肝炎を撲滅できる希望も高まっている」とカロリンスカ研究所は述べている。

しかし現在、このウイルスにかかっている人は世界に7000万人いるとされ、毎年40万人が亡くなっている。

謎の殺し屋

A型肝炎とB型肝炎の原因となるウイルスは1960年代半ばには発見されていた。

しかし、1972年にアメリカ国立衛生研究所で輸血患者の研究をしていたオルター博士は、これとは別の謎の感染症があることを突き止めた

輸血を受けた患者が肝炎を発症するのを見たオルター教授は、この患者の血液をさらにチンパンジーに輸血したところ、チンパンジーが同じ病気になることを発見。

こうして「非a非b型肝炎」の解明が始まった。

米製薬会社カイロンで働いていたホートン教授は1989年、謎のウイルスの遺伝情報を分離することに成功した。これにより、このウイルスがフラビウイルスと呼ばれる種類であることが判明し、C型肝炎と名付けられた。

そして米ワシントン大学のライス教授が1997年、ウイルス発見の最後の一手を打った。ライス教授は遺伝子操作されたC型肝炎ウイルスをチンパンジーの肝臓に注射し、肝炎が発症することを確認した。

現在カナダのアルバータ大学に在籍しているホートン教授はBBCの取材に対し、「当時は限られたツールしなかったので、干草の山から針を探すようなものだった」と話した。

「肝臓や血液中のウイルス濃度は極めて低かった一方で、我々の技術の精度は十分ではなかった。なので常に逆風に立ち向かっていた」

「さまざまな手法を、恐らく30か40種類のアプローチを7年にわたって行ない、最終的にその1つが当たった」

イギリスの王立医学協会のクレア・ベイントゥン副会長は、この発見は「素晴らしい業績だ」と称賛した。

「(C型肝炎に)効果的な治療法と輸血スクリーニング検査への扉を開き、世界各地で人々の健康を守り、数百万人の命を救った」


過去のノーベル医学生理学賞の受賞者

  • 2019年:ウィリアム・ケリン、ピーター・ラトクリフ教授、グレッグ・セメンザ氏。細胞による酸素量の感知とその適応機序の解明
  • 2018年:ジェイムズ・P・アリソン教授、本庶佑特別教授。がんに対する免疫チェックポイント阻害療法の発見
  • 2017年:ジェフリー・ホール氏、マイケル・ロスバッシュ氏、マイケル・ヤング氏。体内時計(概日リズム)を制御する仕組みの発見
  • 2016年:大隅良典氏。細胞が自身のタンパク質を分解する仕組みの解明
  • 2015年: ウィリアム・C・キャンベル氏、大村智氏、屠呦呦(ト・ユウユウ)氏。寄生虫による感染症に対する治療薬の発見
  • 2014年: ジョン・オキーフ氏、マイブリット・モーセル氏、エドバルド・モーセル氏。脳内の空間認知システムの発見

(英語記事 Hepatitis C discovery wins the Nobel Prize