これに対して、米ベイラー医科大のワクチンの専門家、ピーター・ホテズ氏は「製薬企業は75%程度の有効性を目指すべき」と主張したが、FDA長官代行を務めたステファン・オストロフ氏は「50%予防の要求は高すぎで、ハイリスクの人にはそれ以下でも有益だ」とコメントしている。

 ワクチンさえ打っておけば、まず罹ることがない麻疹(ましん)や風疹(ふうしん)、あるいは天然痘とは全く状況が異なる。ワクチンが開発されても、それだけで新型コロナの流行が収まるとは考えない方がいい。

 このことは、新型コロナが基本的には風邪ウイルスであることを考慮すれば納得していただけるだろう。風邪は、ひと冬の間に何回もひく。どうやら新型コロナにも同じことが言えそうなのだ。

 最近になって再感染の例が、複数、報告されている。特に8月末、米ネバダ大の医師たちが報告した25歳男性の症例は要注意だ。この症例では、4月に初めて感染し、その48日後に2回連続でPCR検査が陰性となった後、6月に再び陽性となった。再感染したウイルスのゲノム配列が解析されると、4月に初感染したウイルスとは明らかに違うことが判明した。つまり、別の新型コロナに再感染したことになる。

 注目すべきは再感染時の症状だ。初回の感染より、再感染の方が症状が重かった。これらの事実は、実際に感染しても十分な免疫がつかないことを意味している。

 では、新型コロナの免疫はどれくらい持続するのだろう。9月14日、オランダの研究チームが、国際的学術誌『ネイチャーメディシン』に発表した研究が興味深い。彼らは、すでに発見されており、臨床経験や保存検体が多い季節性コロナウイルスを対象に研究を進めた。

 この研究によると、季節性コロナに罹患(りかん)しても半年程度で感染防御免疫はなくなり、4種類のうち1種類の季節性コロナにかかっても、他の季節性コロナの感染は防御できなかったという。
2020年9月30日、マドリードの飲食店で、食卓を消毒する従業員(AP=共同)
2020年9月30日、マドリードの飲食店で、食卓を消毒する従業員(AP=共同)
 新型コロナも、おそらく状況は変わらない。ワクチンを打っても効果の持続期間は短く、過去に季節性コロナに罹患していても防御免疫は期待できない。